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80年代南アのトランスクリプションから アイリーン・マウェラ

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昨年ンバクァンガのヴェテラン女性歌手、アイリーン・マウェラの新作を出した
新興レーベル、ウムサカゾ・レコーズから、
今度はなんと、80年代録音22曲を復刻した編集作が出ました!
音源はSABC(南アフリカ放送協会)のトランスクリプションで、
82年から85年にかけて制作されたレコード(未発売)から編集されています。

SABCのトランスクリプションというと、古手のアフリカ音楽ファンなら、
00年にイギリスのイーグルから『アフリカン・ルネッサンス』の2枚組シリーズで、
10タイトルが出ていたのを覚えていますよね。
思い出してCD棚をチェックしてみましたが、
そちらにはアイリーナ・マウェラは収録されていませんでした。

アイリーン・マウェラの経歴については、以前の記事に書いたので、
そちらを参照してもらうとして、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-02-20
歌手活動ばかりでなく、250曲以上もの曲を提供してきた作曲家として、
南ア大衆音楽の芸能史60年を、まさしく表・裏から見てきた重要人物であることを、
強調しておきたいと思います。

今作のライナーノーツを読んで、初めて知りましたけれど、
あの名門コーラス・グループ、レディスミス・ブラック・マンバーゾがデビューできたのも、
アイリーンがプロデューサーの夫、ルパート・ボパーペへ口添えしたおかげだそう。
ラジオ・ズールーでレディスミスを聴いたアイリーンが、
ルパートにぜひ契約するようにと薦めたのがデビューの発端となり、
いまでもレディスミスのメンバーたちは、アイリーンに恩義を抱いているのだそうです

南アの60年代は、アパルトヘイトの人種隔離政策という醜悪な手段によって、
皮肉にも南ア音楽の民族別アーカイヴが築かれた時代でもありました。
SABCの黒人専用ラジオ・ステーション、ラジオ・バンツーの傘のもとに、
民族別のラジオ・ステーションでのプログラムが盛んになり、
それまで伝統音楽しか録音されてこなかった各民族の大衆音楽が、
商業録音のビジネス・シーンにも進出するようになったのです。

ズールー、コサ、ソトといった勢力の大きな民族だけでなく、
アイリーンの出自であるヴェンダの音楽も多くの録音を残すことになりました。
アイリーンに初めてヴェンダ語の歌を録音するチャンスを与えたのも、
65年に編成されたラジオ・ヴェンダでした。
ズールーやソトの曲をヴェンダ語に置き換えた曲が、
SABCを通して南ア中に流れたことは、ヴェンダ以外のツォンガなどの少数民族にも、
大きな希望となったのです。

しかし、70年代半ばになると、アイリーンのSABCでのセッションは、
次第にボパーペの制限を受けるようになり、
ボパーペがプロデュースするマヴテラの売れっ子アーティストへの曲の提供や、
ンバクァンガ・シーンに力を注ぐよう、仕向けられます。
80年代に入ると、家族の問題を抱えるようになったアイリーンは、
故郷のリンポポへ戻ることが増え、次第に音楽ビジネスの場から離れていきます。
その代わりにSABCへの復帰を決意し、ヴェンダやツォンガの新曲を30曲以上用意しました。

こうして、マヴテラ時代のなじみのプロデューサーやミュージシャンたちが、
SABCでの録音にも大勢参加し、82、85、87、88年に残した録音から編集されています。
22曲中、17曲がヴェンダ語で、5曲がツォンガ語で歌われます。
82年のセッションの2曲のみ、ギター2台を伴奏に歌ったトラディショナル曲で、
ほかはすべてアイリーン作曲のンバクァンガです。
グルーヴィなベース・ラインに硬質のギターの響きもゴキゲンなら、
タイトに引き締まったリズム・セクションにのるアイリーンのヴォーカルが、
めっちゃスウィートです。

Irene Mawela "THE BEST OF THE SABC YEARS" Umsakazo UM103
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