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ブラジルの豊かなリズム遺産を応用したジャズ ベト・コレーア

Beto Corrêa  DIAS MELHORES.jpg

またしてもエルメート・パスコアール門下生で、スゴイ逸材と出くわしました。
ミナス出身で、現在はサン・パウロで活動するというピアニスト、
ベト・コレーアのデビュー作です。
昨年、イチベレ・ズヴァルギのアルバムに衝撃を受け、
あらためてエルメート一派のアルバムをいろいろとチェックしているうちに、
昨年出た本作を知ることができました。

それにしても、あれほど敵視していた
エルメート・パスコアールに目を向ける日が来るとは、思いもよらなかったなあ。
あのハッタリさえなければ、エルメート・ミュージックはブラジルのジャズとして、
これほどまでに輝くのかという感慨を、新たにしています。
毛嫌いしていた期間があまり長すぎて、結構聴き逃している作品も多い気もしますけど。

ベト・コレーアは、アンドレ・マルケスの代役として、
エルメートのグループに加わることもあるといい、サン・パウロの名門の音楽学校、
タトゥイー音楽院の講師を務めている人だそう。
本作は、サン・パウロの精鋭たちを集めたクインテット編成で、
軽やかに弾むスピード感溢れるドラミングを聞かせるのは、クレベール・アルメイダ。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-06-11
あのクレベールのデビュー作でピアノを弾いていたのが、ベト・コレーアだったんですねえ。

本作もクレベール・アルメイダのデビュー作同様、
ブラジルのさまざまなリズムを応用しながら、魅力あるメロディアスなコンポーズを
聞かせる趣向で、ゆいいつアブストラクトなピアノ・リフを持つ‘Pega O Saci’ で、
エルメート派の片鱗をみせます。

ユニークなのは、ギタリストがカイピーラ・ギターも弾いていることで、
ベト自身もアコーディオンを弾く曲もあり、楽器の選択もブラジルのジャズならではです。
サンバ、バイオーン、フレーヴォを取り入れているほか、すごく新鮮に響くのが、
マラニョン州の伝統的なブンバ・メウ・ボイのリズムを取り入れた‘Nobilho Brasileiro’。
さらに、アルゼンチンのチャカレーラの3拍子+2拍子を応用した‘Cinco Entrevado’ の
リズム・アプローチも斬新で、めちゃめちゃカッコいい。

ブラジルの豊かなリズムをふんだんに応用するほか、
ベトの出自であるミナスを強烈に感じさせる、
特徴的なメロディもそこかしこから飛び出し、
まさにブラジルでしか生み出せないジャズを味あわせてくれます。

Beto Corrêa "DIAS MELHORES" no label RB055 (2018)
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呑んべえのサンバ ネルソン・サルジェント

Nelson Sargento  91 Anos De Samba.jpg

現役最古参のマンゲイラのサンビスタ、ネルソン・サルジェント。
16年にクラウンド・ファンディングで制作された91歳をお祝いするCDが、
ようやく日本に入っていました。
さすがに90を越すと、総入れ歯らしきフガフガ声になるのも仕方ありませんが、
どこか憎めない愛らしさを感じさせるのは、お人柄でしょうね。

ちょうど昨年9月に他界したウィルソン・モレイラの遺作も届いたところだったんですが、
あまりに衰えたウィルソンの歌いぶりは、
黒光りしたウィルソンのサンバの絶頂期を知る者には辛すぎて、
手を伸ばすことができませんでした。

ウィルソン・モレイラの享年より高齢となるネルソンだって、
衰えは隠せないわけですけれど、そこは持ち味の違いなんでしょう。
‘De Boteco Em Boteco’(飲み屋から飲み屋に)なんてサンバも作る、
ダメおやじの茶目っ気が、老いを味わいに変えてしまうのでした。
あ、でも、こんな感想は、ネルソンの初レコードとなった79年のエルドラード盤から
ずっと聴き続けてきたファンの勝手な思い入れかもしれません。
ネルソンを初めて聴くという人に、いきなり本作をオススメはしにくいですね。

もしネルソンを聴いたことがなければ、まだ元気いっぱいだった時代の代表作
“ENCANTO DA PAISAGEM”(邦題『裏山の風景』)を
まず聴いてもらった方がいいに決まってますもんねえ。
田中勝則さんが制作した86年のネルソンの代表作を知っていればこそ、
この老いたネルソンの本作も、微笑ましく聞こえるというものです。

Nelson Sargento  ENCANTO DA PAISAGEM.jpg

本作には、その“ENCANTO DA PAISAGEM” にも入っていた
代表曲がずらりと並んでいます。
伴奏には、エルトン・メデイロスとの共同名義作や
ネルソン・カヴァキーニョに捧げた作品で共演した
ショーロ・グループのガロ・プレートが務めるほか、
サポート・ヴォーカルに、昨年来日したペドロ・ミランダが駆けつけています。
ガロ・プレートを聴くのもずいぶんとひさしぶりだなあ。
90年代の2作や30周年記念アルバムを愛聴しましたけれど、
その後もずっと活動を続けていたんですね。
アルバムの音楽監督とアレンジは、メンバーのバンドリン奏者
アフォンソ・マシャードが仕切っています。

Elton Medeiros, Nelson Sargento & Galo Preto  SÓ CARTOLA.jpg   Galo Preto, Nelson Sargento and Soraya Ravenle  O DONO DAS CALÇADAS.jpg
Galo Preto  BEM-TE-VI.jpg   Galo Preto  SÓ PAULINHO DA VIOLA.jpg
Galo Preto  30 ANOS.jpg   Pedro Miranda  PIMENTEIRA.jpg

マンゲイラの深い抒情味をたたえた作風は、カルトーラの直弟子の名にふさわしく、
サンバ/ショーロの演奏にのると、一層味わい深さが増します。
ひょうひょうとした風来坊的な面もみせるネルソンのサンバは、
カルトーラのサンバほど芸術性の高さや孤高のベールをまとっておらず、
呑んべえのサンバともいえるくだけた性格は、どこかホッとできるものです。

このメンツがネルソンを盛り立てる様子がなんとも微笑ましくて、
すごく温かいムードがアルバム全体を包んでいるんですね。
ペドロ・ミランダやガロ・プレートのメンバーに歌わせる曲も多いので、
ネルソンの老いた声があまり目立たないのも、うまい構成です。

ネルソン最大の当たり曲‘Agoniza Mas Não Morre’(邦題「サンバは死なず」)は、
ガロ・プレートの演奏のみの歌なし。
それなのに、コンサート会場で観客全員が大合唱しているような
空耳をおぼえるのは、ファンの欲目でしょうか。
この曲でアルバムが終わると、多幸感に包まれますよ。

ジャケット・カヴァーの絵も、ネルソン・サルジェント画伯の作品。
ファンには『裏山の風景』でもおなじみのモチーフで、
ネルソン・サルジェント・ファンをどこまでも喜ばせる仕掛けがイッパイの作品です。

Nelson Sargento "91 ANOS DE SAMBA" no label no number (2016)
Nelson Sargento "ENCANTO DA PAISAGEM" Rob Digital RD075 (1986)
Elton Medeiros, Nelson Sargento & Galo Preto "SÓ CARTOLA" Rob Digital RD016 (1998)
Galo Preto, Nelson Sargento and Soraya Ravenle "O DONO DAS CALÇADAS" PMCD Produções 351.721 (2001)
Galo Preto "BEM-TE-VI" Leblon LB012 (1992)
Galo Preto "SÓ PAULINHO DA VIOLA" Leblon LB036 (1994)
Galo Preto "30 ANOS" Rob Digital RD089 (2005)
Pedro Miranda "PIMENTEIRA" no label PM001 (2009)
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洗練の歌唱力 トッサポン・ヒンマパーン

Tossapol Hinmaporn  4SCD5162.jpg

長い間その名を忘れていた、トッサポン・ヒンマパーン。
タイの仏教歌謡レーに入れ込んでいた15年ほど前、よく聴いた歌手なんですが、
18年の新作に出くわして、ずいぶん聴いていなかったことに気付きました。

仏教説話を大衆歌謡化したレーは、
ポーン・ピロムからワイポット・ペットスパンに受け継がれ、
その後進としてトッサポン・ヒンマパーンが活躍するようになったわけですけれど、
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-12-12
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14
クセのないなめらかなこぶし回しを聞かせるトッサポンは、
先達の二人とは違う、洗練された技巧の持ち主です。

レーを歌いこなすには高い歌唱力が必要で、
モーラム以上の技巧が要求されるというのは、なるほどとうなずける話ですけれど、
トッサポンのサラリと歌ってのける技量の高さはスゴイですよ。
技巧を聴く者に意識させないスムーズな歌唱が、
トッサポンの歌唱力の高さを表わしています。

「ふんがふんが唱法」とぼくが勝手に命名しているレー独特のヨーデル似のハミングも、
歌い手によってはすごくアクが強くなるんですが、
トッサポンの軽やかさは、他の歌手には真似のできないところじゃないでしょうか。

新作でもトッサポンの歌唱力の安定度は、折り紙付きといえます。
ただサウンドの方が、ひと昔前のルークトゥンみたいで、
キーボードの音色やドラムスのフィルがいなたすぎで、ちょっと残念でしたねえ。
むしろゼロ年代のアルバムの方が、ソー(胡弓)、ラナート(木琴)、ピー(縦笛)を
全面的にフィーチャーしていて、西洋楽器を使ったポップなサウンドとのバランスも
良かったように思います。

Tossapol Hinmaporn  FSCD9103.jpg   Tossapol Hinmaporn  FSCD9304.jpg
Tossapol Hinmaporn  FSCD9334.jpg   Tossapol Hinmaporn  FSCD6090.jpg

00年の“LAE TUM KWAN NARK” や、ベースを加えてボトムを厚くした
04年の“TOSSAPOL LAI THAI” は名作だったし、西洋楽器を排して、
全編ピーパート編成によるオーセンティックな伝統サウンドで迫った
05年の“TEE KWAI KAO AONG” は、本格的なレーを聴ける名盤でした。

驚いたのは、03年の“LAE LUANG POR TOH” ですね。
ジャケットを見て、本格的なレーが聴けるのかなと思いきや、
プロダクションはキーボードにエレクトリック・ギターやベースが加わる
ルークトゥン・レー・スタイル。
ところが、歌の方は、ほとんどメロディを感じさせない語り物の世界で、
29分弱の長尺の曲2曲のみという内容。
あまりにも単調で、正直退屈は隠せませんが、
これまたレーの深淵を見るかのようで、手放せないものとなりました。

Wiphoj Pechsoopun &Tossapol Hinmaporn.jpg

さらにレーの世界を知るのに役立ったのが、
06年のワイポット・ペットスパンと共演したVCDです。
ゴザを敷いた舞台の中央に花飾りと果物がお供えされていて、
そこにワイポットとトッサポンが座って交互に歌うんですが、
その様子はまるでカッワーリーのよう。

伴奏を務めるバンド編成の楽団は少し離れた脇で立って演奏していて、
観客はワイポットとトッサポンの周りを囲むように、静かに座って聴いていますが、
離れたところでは、立ち上がって踊る男女たちもいます。
村々で日常的に行われている仏教行事を垣間見れるようで、
大ステージで大勢の踊り子が舞うルークトゥンのコンサートとはまったく違った、
もっと庶民的な音楽の場であることが、これを見てようやくわかりました。

Tossapol Hinmaporn "LAE TOSSAPOL NAI KLIANG TIANG PRA" Four’s 4SCD5162 (2018)
Tossapol Hinmaporn "LAE TUM KWAN NARK" Four’s FSCD9103 (2000)
Tossapol Hinmaporn "TOSSAPOL LAI THAI" Four’s FSCD9304 (2004)
Tossapol Hinmaporn "TEE KWAI KAO AONG" Four’s FSCD9334 (2005)
Tossapol Hinmaporn "LAE LUANG POR TOH" Four’s FSCD6090 (2003)
[VCD] Wiphoj Pechsoopun &Tossapol Hinmaporn "BOON KOO BUAD" MGA FSVCD6192 (2006)
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ミクラ・アシアのアブない快楽 ディミトリ・ニトラリ

Dimitra Ntourali  TA ORAIA TIS SMYRNIS.jpg

ギリシャの女性歌手でサントゥーリを演奏する人といえば、
アレッティ・ケティメが一時期話題になりましたけれど、
ディミトリ・ニトラリというこの女性、アレッティ嬢よりはだいぶお年を召しています。
垢抜けないジャケ・デザインが妙に引っかかって買ってみたら、これが大当たりでした。

レンベーティカ色濃い古いスタイルのライカを歌う人で、
戦前スミルナ派の妖しくもいかがわしいムードをぷんぷんと撒き散らしているんですよ。
13年作という近作で、この濃厚な味わいは、ちょっとスゴいですよねえ。
イッパツで魅了されてしまいました。
プロフィールを調べてみたのですが、インターネットには情報がありません。
ご本人のフェイスブックはありましたけれど、バイオグラフィは載っていませんでした。

本作のほかにもう1枚CDが出ているほかは、
ディモーティカのコンピレーションにサントゥーリ奏者として名前を連ねているくらいで、
歌手としてのアルバムはほかになさそうです。
普段はサントゥーリ奏者として活動している人なんでしょうか。

サントゥーリのきらびやかな弦音が引き立つ、
ヴァイオリン、バグラマ、ブズーキなどの弦楽アンサンブルが、
ミクラ・アシアのムードを濃厚に醸し出します。
ダルブッカのパーカッシヴな打音やクラリネットの妖しい響きは、
かつてのイズミールの裏街へといざなわれるようで、
悪の華を垣間見る、アブない快楽に引きずり込まれる思いがします。

Dimitra Ntourali "TA ORAIA TIS SMYRNIS" Athinaiki Diskografii 116 (2013)
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ボレーロ天使、登場 クイン・チャン

Quỳnh Trang  BOLERO - HOA TÍM NGƯỜI XƯA.jpg

ヴェトナム伝統歌謡に、注目の新人が登場しましたよ。
南中部トゥイホア出身、97年生まれの22歳というクイン・チャンは、
「ボレーロ天使」のニックネームが付いた逸材。
ヴェトナム本国では、まだフィジカルは出ていないようなんですが、
配信リリースのアルバムから編集されたCDが、アメリカで発売されました。

これが極上なんです!
ザンカー(民歌)を基礎とする確かな歌唱力と、
スウィートな歌声は、なるほど「天使」の名に値します。
じっさい4歳の時から、ザンカーを歌っていたといい、
本名のトゥイ・チャンは同姓同名の有名な歌手がいるため、
母親がクイン・チャンという名を付けたそうです。

クイン・チャンのアイドルは、ニュ・クインとフィ・ニュンということで、
しっとりとした歌の味わいは、若い頃のニュ・クイン以上じゃないかな。
そしてクイン・チャンは、その憧れのフィ・ニュンの後ろ盾を得て、
ステージに立つようになったといいます。
ミュージック・ヴィデオのヒットによって、クイン・チャンは瞬く間に人気を獲得し、
彼女のフェイスブックは、すでに3万人を超すフォロワーがいるんですよ。

繊細なこぶし回しに、得も言われぬ情感をこめるスキルが、すごい。
泣き節もしつこくなく、伏し目がちの控えめな女性の愁いを、
さっぱりと歌ってみせる軽やかさもあって、
歌を重苦しくしないバランス感覚が見事です。
音楽学校出の歌手にありがちな、歌いすぎるところもまったくなく、
歌いぶりには、終始抑制が効いています。

ダン・バウ(1弦琴)、ダン・チャン(筝)、ギター・フィムロンといった
ヴェトナム民俗の弦の響きをたっぷりと取り入れたプロダクションも申し分なし。
顔立ちが誰かに似てるなあと思ったんですけれど、
水谷豊の娘、趣里によく似ていて、いっそう親しみがわきます。

Quỳnh Trang "BOLERO: HOA TÍM NGƯỜI XƯA" V TVCD171 (2018)
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シネマティックなジャズ・コンポジション アリソン・ミラーズ・ブーム・ティック・ブーム

Allison Miller’s Boom Tic Boom.jpg

シンディ・ブラックマン、テリ・リン・キャリントンといった大御所から、
キム・トンプソンやニッキー・グラスピーまで、
いまや女性ドラマーは珍しくなくなりましたね。
アリソン・ミラーは、ブルックリンをベースに活動する女性ジャズ・ドラマーで、
ブーム・ティック・ブームというグループを率いて10年来活動しています。
5作目となる新作は、アリソンのコンポーザーとしての才能が開花した、
素晴らしい作品となりました。

ピアノ、ベース、クラリネット、コルネット、ヴァイオリン、ベース、ドラムスという、
なんだかアーリー・ジャズ時代みたいなバンド編成ですけれど、
クラリネット、コルネット、ヴァイオリンが、
親しみやすくユーモアに富んだアリソンのコンポーズに、
絶妙なカラーリングを施しているんです。

たとえば‘The Ride’ では、フリーなドラム・ソロのイントロに続いて、
スカ/レゲエを参照したリズムへチェンジし、混沌としたアヴァンな演奏がしばし続くと、
一転チェンバー・ミュージックへと移っていきます。
かと思えば、いつの間にかゴーゴーのビートへと接続していくなど、
曲の中で場面をどんどん動かしていくところが、すごく面白くいんです。

なんの前触れもなく、クレズマーの旋律が唐突に飛び出すと、
その途端、エキゾティックな香りがふわーっと立ち上る場面など、クラクラしますよ。
ヴァイオリンがノン・ヴィブラートで、解放弦を鳴らすフィドルのような奏法をするせいか、
シド・ペイジのプレイを連想させ、
ダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックスの韜晦味にも通じるものをおぼえます。
いやあ、一筋縄でいきませんね、この人の作曲能力。

流れるようなアリソンの長いドラム・ソロや、ピアノがフリーに暴れる場面も、
すべてアリソンが組織立てたアレンジの中に収まっていて、
自由に演奏させるけれど、放任はしないといった構成に共感を覚えます。
そんなアリソンのセンスがシネマティックな物語性をコンポーズに与えていて、
もうワクワクが止まりません。

Allison Miller’s Boom Tic Boom "GLITTER WOLF" Royal Potato Family no number (2019)
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狂おしくもステッパー アンディ・ストークス

Andy Stokes  NOW.jpg

16年の前作を買い逃していたら、1年後に運良く再プレスされ、
感涙にむせび泣いたノースウェストのソウル王、アンディ・ストークス。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-07-08
インディ・アルバムが再プレスされることはめったにないから、
はじめに買い逃すと、二度と手に入らなくなっちゃいますからねえ。
新作は売り切れになる前に、ソッコー買いましたよ。
といっても、去年の4月に出ていたのを、いまごろ気付いたマヌケぶりなんですが。

次作はフル・アルバムを!と期待してたんですが、
またしてもEPで、たったの6曲。少なっ!
無駄に長ったらしいアルバムも困るけど、
2作連続ミニ・アルバムというのも、じらしが過ぎます。

前作はラルフ “ファントム” ステイシーがプロデュースしていましたが、
今作のアタマの2曲は、クリス・ブラウンのプロデュースで知られるPK。
これが極上の仕上がりで、ヴェテランならではのディープなノドを、
アーバンで華やかなステッパーにのせています。
これほどコンテンポラリーなR&Bにマッチする才能を持ちながら、
なんでメジャーで活躍できないんでしょうかねえ。
インディの世界にいることじたい、もったいなく思いますよ。

ラストはなんとスヌープ・ドッグをゲストに迎え、
DJバトルキャットのプロデュースによる、アゲアゲのヒップホップ・トラック。
いや~、もうじっとなんかしてらんない。腰がうずきます。
サイコーでっす!

Andy Stokes "NOW" New5 N5CD002 (2018)
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21世紀のサザン・ソウル レブラド

Lebrado  LET’S PARTY.jpg

イェ~イ、ごっきげぇ~ん!
これぞ21世紀のサザン・ソウルと太鼓判を押せる傑作が、ついにフィジカル化。
いやあ、待ち遠しかった、というのとはちょっと違って、
どうせフィジカルにはならんだろうと諦めていただけに、オドロキ、やがて感涙なのです。

ノース・カロライナ、ウィンゲート出身のシンガー、レブラド。
ケイ=シー&ジョジョの末弟といった方が、話は早いですかね。
00年作“X” 所収の‘Suicide’ でセカンド・ヴァースを歌っていたのが、
レブラドなのでありますよ。

その熱い歌いっぷりは、まさしくリアル・ソウル。
ホレボレとしてしまうサザン・ソウル・マナーなヴォーカルに、ご飯3杯はいけます。
90年代R&Bサウンドをベースに、チタリン・サーキットのいなたさが
いい塩梅のプロダクションとなっていて、
南部ローカルらしいヴォーカルのニュアンスを滲み出しているんですよっ。
う~、たまらんっ!

アトランタのプロデューサー、ブルース・ビラップスが全曲作曲。
メリハリの利いた起承転結のあるソングライティングは、歌ものの王道ですね。
ここ最近のR&Bの曲って、この前のH.E.R. が典型ですけれど、
ループだけでできてたり、起承転結がないのが多くなりましたよね。
それはおそらくヒップホップの影響なんでしょうけれど、
ここでは、ヒップホップ登場前の伝統ソウルらしい歌ものをしっかりと聞かせてくれます。
この狂おしい高揚感は、ゴスペルを基礎にしてなけりゃ、生まれっこないですって。

Lebrado "LET’S PARTY" Makecents no number (2018)
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バス・トロンボニスト・フロム・ヴァージニア レジナルド・チャップマン

Reginald Chapman  PROTOTYPE.jpg

こりゃあ、いい!
トロンボーン5管が分厚いソリを聞かせるソウル・ジャズ。

主役は、リッチモンドを拠点に活動するブラス・ファンク・バンド、
ノー・BS!・ブラス・バンドで活躍するバス・トロンボニストのレジナルド・チャップマン。
本作がデビュー・ソロ作という、ライアン・ポーターやトロンボーン・ショーティに続く、
注目のトロンボニストです。

短いバス・トロンボーンのソロに続いて始まる
‘You Go To My Head’ には意表を突かれました。
ビリー・ホリデイが歌った、あの「忘れられぬ君」ですよ。
ずいぶんとまた、古い曲を選んだもんだなあ。
サム・リードという女性シンガーが歌っているんですが、
ソウル・テイストのフレイヴァーですっかりリフレッシュメントされた仕上がりが、
新鮮に響きます。

ほかにも公民権運動のアンセム‘We Shall Overcome’ を
取り上げているのには、イマドキ?と思ったものですけれど、
トランプのアメリカだからこそ、<いまどき>なのかもしれませんね。
アルバム中、もっともモーダルな演奏を繰り広げているところに、
レジナルドの気概が伝わってくるようじゃないですか。

バックは、ブッチャー・ブラウンの中心メンバーを起用していて、
コーリー・フォンヴィルのドラムス、アンドリュー・ランダッツォ、
デヴォン・ハリソン(DJハリソン)のキーボードが大活躍。
なかでもDJハリソンは、レコーディングとミックスのクレジットがあり、
本作のキー・パーソンといえそう。

タイトルに『プロトタイプ』とあるとおり、37分弱の本作はミニ・アルバムの扱いらしく、
本人はフル・アルバムの制作を考えているもよう。はやくも次作が待ち遠しいです。

Reginald Chapman "PROTOTYPE" Flesh Selects FSX027 (2018)
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伝承歌の世界観 クレア・ヘイスティングス

Claire Hastings  THOSE WHO ROAM.jpg

スコットランド、きてるなあ。
ハンナ・ラリティにファラと、注目のアルバムが続出じゃないですか。
去年大注目したアイオナ・ファイフのミニ・アルバムが出るというので、
心待ちにしていたところ、それとはまた別の嬉しいアルバムが届きましたよ。

それが、ウクレレを弾き歌う女性歌手クレア・ヘイスティングスのソロ第2作。
女性4人組のトップ・フロア・テイヴァーズのメンバーとしても活動している人ですね。
今回はウクレレはお休みで、歌に徹し、エレクトリック楽器の使用もなし。
ギター、フィドル、ピアノ、アコーディオンの4人が伴奏を務めています。

今作のテーマは「旅」で、伝承曲を中心に自作の2曲と、
アメリカのルーツ・ロック・バンド、ブラスターズのメンバー、
デイヴ・アルヴィンの‘King Of Callifornia’ を取り上げています。
デビュー作と変わらぬ凛とした粒立ちの良い発声に、ホレボレとしますねえ。
スコットランドの女性歌手って、声の透明感に共通性があって、
イングランドとはまったく異なる土地柄を感じます。

そして、きりりとしたシンギングをもりたてる伴奏がまた見事です。
たった4人の伴奏とはいえ、フィドルを多重録音するなど、
丁寧なアレンジが施されていて、クレジットはありませんが、
通奏低音のように流れるシンセやエフェクトも、ごく控えめながら使われています。

アルバムの最後を締めくくるのは、
18世紀起源とされるイングランドの伝承曲‘Ten Thousand Miles’。
ニック・ジョーンズの名唱でも知られるこの唄は、
アメリカでは‘Fare Thee Well’ のタイトルで知られ、
ボブ・ディランやジョーン・バエズほか、
多くのフォーク・シンガーが取り上げてきた旅の唄ですね。

クレアはこの曲を無伴奏の多重唱で歌っていて、
旅立つ恋人との別れを、映画のワン・シーンのように描写します。
伝承歌の世界では、歌い手が余計な感情を加えず、
詩と旋律が生み出す情感だけで、雄弁な物語となりうることを、
このトラックは証明しています。

Claire Hastings "THOSE WHO ROAM" Luckenbooth LUCKEN002CD (2019)
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サンバ・カンソーンの傑作盤 エルザ・ラランジェイラ

Elza Laranjeira  A NOITE DO MEU BEM.jpg

今回のジスコベルタスのリイシューで一番驚いたのが、
エルザ・ラランジェイラのデビュー作。
プレ=ボサ・ノーヴァ期に活躍した歌手で、
のちにボサ・ノーヴァを大衆歌謡化した人気歌手
アゴスチーニョ・ドス・サントスの奥さんになった人ですね。

エルザの63年の代表作“A MÚSICA DE JOBIM E VINICIUS” は、
ヴィニシウスとジョビンのコンビで制作した2作のうちの1枚で、
もう1枚は、ボサ・ノーヴァ第0号アルバムとして
有名なエリゼッチ・カルドーゾの『想いあふれて』だったのだから、
どれだけ貴重なアルバムだったかわかろうというものでしょう。
ブラジルで2度もCD化されたので、
マニアならずとも耳にしている人は多いと思いますが、
デビュー作がこれまた極上の逸品で、びっくり。

いやあ、すごい。
この人、ボサ・ノーヴァ歌手なんかじゃなく、
超一級のサンバ・カンソーン歌手だったんですねえ。
デビュー作のタイトル曲が、サンバ・カンソーン名曲中の名曲、
ドローレス・ドゥランの‘A Noite Do Meu Bem’ というのにも、泣かされます。

驚くのは、曲によりさまざまに声を変えて歌えるという、表現力の高さ。
抜きんでた歌唱力の証明でもあるわけですけれど、
清楚なチャーミングさを溢れさせるかと思えば、妖艶な表情もみせ、
はたまた、ざっくばらんな下町娘ふうにもなるなど、さまざまなキャラを演じてみせます。

なかでも絶品なのが、繊細な歌い回しとダイナミックに歌い上げる両極を、
鮮やかに披露したヴィニシウス=ジョビン作の‘Eu Sei Que Vou Te Amar’。
この素晴らしい歌唱があったからこそ、
のちにあのヴィニシウス=ジョビン曲集の制作へとつながったんじゃないでしょうか。

マリア・クレウザが好きな人なら、シビれることうけあいの
サンバ・カンソーンの傑作盤です。

Elza Laranjeira "A NOITE DO MEU BEM" RGE/Discobertas DBSL102 (1960)
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知られざるサンバ・カンソーンの名歌手 エレーナ・ジ・リマ

Helena De Lima  A VOZ E O SORRIO DE HELENA DE LIMA.jpg

ブラジルのリイシュー専門レーベル、
ジスコベルタスの新作ニュースに心踊ったのは、ひさしぶり。
ここ数年ジスコベルタスのリイシューは、
守備範囲外のジョーヴェン・グアルダやブレーガ、ディスコものが続いていたので、
乏しい資金を散財せずにすんでいたんですけれども。

ところが今回は、往年のサンバ・カンソーン女性歌手という、
60歳以上男性客限定みたいなラインナップで、
まんまとターゲットになってしまいました。
エリゼッチ・カルドーゾの79年作『冬の季節』という、
往年のサンバ・ファンには懐かしい名作のCD化もあったりして、
日本盤を持っているサンバ・ファンなら、即買い必至でしょう。

エリゼッチのアルバムはサンバ・ファンならよくご存じと思うので、
日本ではまったく知られていない、エレーナ・ジ・リマを取り上げましょう。
今回CD化されたのは61年のRGE盤で、もちろんこれが初CD化ですけど、
そもそもエレーナ・ジ・リマを聴いている人って、日本に何人いるんでしょうね。

ブラジル音楽のディスク・ガイドで、その名を目にしたことはないし、
ぼくの記憶のある限りでは、40年前に中村とうようさんが
「中南米音楽」(「ラティーナ」の旧名です)に寄稿していた、
ブラジル音楽のレーベル別連載記事で触れていたのがあったくらいのもので、
ほかにエレーナ・ジ・リマについて書かれた記事なんて、見たことないもんなあ。

それくらい日本ではまったく知られていないサンバ・カンソーン歌手ですけれど、
エリゼッチやマイーザのような大物を聴いているのに、
エレーナ・ジ・リマを知らずにいるのは、もったいない。
アルト・ヴォイスの落ち着いた声で歌う人で、押し出しの強さはないものの、
その控えめな歌いぶりが、ツウを喜ばせるタイプといえます。

エレーナ・ジ・リマは26年リオ生まれ。22歳でリオのナイトクラブで歌い始めると、
瞬く間に大人気となり、50年代初めにはサン・パウロのナイトクラブに引き抜かれ、
成功を収めた歌手です。52年にコンチネンタルへ初録音し、
56年に出した初のレコード(10インチ)は、ぼくも持っています。

Helena De Lima.jpg   Helena De Lima  VALE A PENA OUVIR HELENA.jpg
Helena De Lima  UMA NOITE NO CANGACEIRO.jpg   Helena De Lima  É BREVE O TEMPO DAS ROSAS.jpg

この10インチは未CD化ですけれど、
エレーナ・ジ・リマのアルバムはけっこうCD化されていて、
これまで58年コンチネンタル盤、65年RGE盤、75年コパカバーナ盤が出ているんですよ。
特に65年のRGE盤はエレーナの代表作とされる名作で、
サンバ・カンソーンが好きなら、外せない作品でしょう。
CDが出てからだいぶ経つので、LPの方が簡単に見つかるかもしれませんね。

古いブラジル盤は、ボサ・ノーヴァの狂乱ブームが過ぎても、
高値安定してしまった感がありますけれど、
サンバ・カンソーンは客がつかないから、今でも手ごろな値段で買えるはずです。
古いサンバ・カンソーンが再評価されるなんてことは、
これからも、まあないでしょうね(タメ息)。

Helena De Lima "A VOZ E O SORRIO DE HELENA DE LIMA" RGE/Discobertas DBSL104 (1961)
[10インチ] Helena De Lima "DENTRO DA NOITE" Continental LPP38 (1956)
Helena De Lima "VALE A PENA OUVIR HELENA" Continental/Warner 5051011128028 (1958)
Helena De Lima "UMA NOITE NO CANGACEIRO" RGE 0496-2 (1965)
Helena De Lima "É BREVE O TEMPO DAS ROSAS" Copacabana/EMI 527305-2 (1975)
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おぢさん、恋をする H.E.R.

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これが10代の歌声とは!
恋に疲れたやるせなさを表現できる、大人びたヴォーカル。
アンビエントなサウンドスケープを、ゆったりとたゆたうヴォイスに、息を呑みました。
一瞬たりとも声を張ることのない、柔らかで落ち着きのある声。
少女独特のキンと立つ声が苦手なぼくには、生理的にとてもなじむ女声です。

今年21となる新人女性R&Bシンガーが
16~17年にアナログと配信で出したEP3作をCD化した作品。
全21曲、収録時間72分を超すヴォリュームは、
少し前までのR&Bマナー(最近は40分程度に落ち着いてきましたね)ですけれど、
おなか一杯にならないのは、ヴォーカルの魅力ゆえ。

全曲ミディアム・スロー・ジャム。
90年代を思わすメロウなトラックが並びますけれど、
ヒット性のありそうな飛び抜けた曲がなく、
起伏の乏しい幻想的な曲調が並びます。
フックの利いたメロディもなければ、キャッチーなラインもないのに、
アルバム全体を通じて覆う、濃密な空気感に金縛りとなります。

甘美なサウンドの中でけだるく揺れる吐息めいたヴォーカルは、
ほのかな体温を伝え、時にいじらしいオンナ心を示したり、
また時につれなく歌ってみせたりと、その歌の表情は、
デリカシーの極致と呼びたくなります。
エモーショナルに歌っても、歌が強くならないのは、
感情表現が昇華しているからこそ。
その成熟した表現力に舌を巻きます。

そっと歌い出す‘Every Kind Of Way’ の歌い口に、もうクラクラ。
おぢさん、恋をしそうです。

H.E.R. "H.E.R." RCA 19075-93269-2 (2019)
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潮風のサンバ バルラヴェント

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なんて爽やかなんでしょうか。
ジャケット写真そのままに、
バイーアの潮風を感じるサンバを、たっぷりと満喫できるアルバムです。

07年に結成されたというバイーア3人組、バルラヴェントの3作目。
ナザレー出身のサンビスタ、ロッキ・フェレイラをゲストに迎えた1曲目から、
バイーアらしさイッパイのサンバを繰り広げます。
シャラーンと高音を響かせるスティール弦のアクースティック・ギターの響きが、
潮の香りを運び、カンカン、コンコンと愛らしく鳴るアゴゴに頬が緩みます。

目の覚めるようなみずみずしいメロディを、3人はソフトに歌います。
ハーモニーを織り交ぜたコーラスは、伝統サンバをベースとしながら、
オーセンティック一辺倒ではない、MPBからのポップ・センスが発揮され、
とてもフレッシュです。

‘A Banda Que Samba’ のイントロで飛び出すトロンボーンのソリは、
まるでトロンバンガみたい。ヴァイオリンの使い方もシャレてますねえ。
こうした楽器の起用や扱い方に、
伝統サンバに軸足を置きながら、現代的なサウンドを生み出すセンスを感じます。

カンドンブレ由来のリズムを使ったアフロ・サンバをやっても、
ちっともディープな感触にならないのは、洗練された彼らの音楽性ゆえでしょう。
アコーディオンをフィーチャーしたシャメゴも、
のんびりとした田舎情緒を上手に演出しています。

こんなにほんわかした庶民的なサンバって、
今日びなかなか得難いんじゃないでしょうか。

Barlavento "QUEBRAMAR" MCK MCKPAC0231 (2018)
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ショラールあふるるブラジルのジャズ エドゥアルド・ベロニ

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オーソドックスなジャズ・ギター・アルバム。
一言でいえばそれに尽きるんですけど、これがとびっきりの内容なんです。
3年前に出ていたサン・パウロの新進ギタリストのデビュー作で、気付いて良かったあ。
正統派のジャズ・ギターでこれほどの逸品、ありそうでなかなかありませんよ。
ギターのトーン、ソロ・ワーク、アンサンブル、楽曲、アレンジ、
すべてがハイ・レヴェルという、欠点の見当たらないアルバムです。

箱ものギター特有のクリアで柔らかなトーンに、まず、耳が反応します。
指板をすべるなめらかなソロは、柔肌を愛撫するジゴロの指先のよう。
都会の夜のムード溢れるメロウな楽曲を引き立てる、
歌心溢れるラインの組み立て方にも、ウナらされます。

泣けるメロディ満載で、インストなのがもったいないと思えるほど、
「歌」を感じさせるトラックが並びます。
メロディは甘すぎず、苦みも含んだメロウさが、実にセクシーなんです。
せつなさや、やるせなさもたっぷり混じった、
心の傷みを優しく包み込む楽曲にシビれます。
メカニカルなラインをテーマに持つ‘Cotopaxi’ ですら、
なんともいえない哀感が漂うんだから、この人の作曲能力の高さがわかりますね。

サウンドにブラジルのテイストはないものの、
これほどの歌心あふれる作曲能力は、やはりブラジルならでは。
フェリーピ・ヴィラス・ボアスに続く、要注目のギタリストです。

Eduardo Belloni "BACK TO THE BEGINNING" no label no number (2016)
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