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2018年11月| 2018年12月 |- ブログトップ

ケタ違いの才能を伸ばせ RIRI

RIRI NEO.jpg

ケタ外れの歌唱力に圧倒されたRIRI の『RUSH』。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-07-10
女子高生R&Bシンガーの逸材登場に、オジサンの胸もトキめいたわけなんですが、
その後満を持してリリースされたメジャー・デビュー作は、新作4曲があったものの、
インディ・リリースのEP2作からの5曲とリミックス1曲を収録した
再編集ともいえるアルバムだったので、
今回が実質的なメジャー・デビュー作といえるかも。

出だしの第一声で、うん、今回もいいねと確信。
その声に身体の細胞が活性化されるのを感じる、まさしく天性の声です。
高校卒業後、ロス・アンジェルスの3か月滞在して制作されたという本作、
アメリカのメインストリームを照準に置いたプロダクションは、申し分ありません。
楽曲もいいし、ゼッド&アレッシア・カーラの「Stay」のカヴァーも鮮やか。

英語詞の合間に、ところどころ日本語詞を挟み込むというスタイルも
完全に定着しましたね。RIRI ほど、英語と日本語を全く違和感なくつなげて歌える
日本人歌手はいません。英語のリズムに、日本語のアクセントを落とし込んで、
シームレスに繋げるスキルが、RIRI の最大の武器です。
なぜ群馬で生まれ育った彼女が、
こんなスキルを身につけたのか、不思議でなりません。

歌唱・プロダクションとも、あまりにスキなく作られていて、
物足りなさが残るといえば、ゼイタクな注文でしょうか。
じっくり聴けば、さまざまな冒険をしているのもわかるし、
けっしてコンサバな作りではないんだけれど、
ケタ違いの才能がもっとハジけるような、規格外のところが欲しいなあ。

あと、ひとつだけ苦言を。
『RUSH』をリリースした時のミニ・ライヴの会場でRIRI に会ったとき、
「Jポップにならないでね」と老婆心ながら言ったおぼえがあるんですけれど、
その懸念がはや今回のアルバムに表われています。

清水翔太とデュエットした「Forever」がそれ。
こういう凡庸なバラードを、彼女に歌わせちゃ、ダメ。
こんな曲は、あまたあるJ-ポップ・シンガーに歌わせときゃいいんです。
この1曲ゆえ、本作を年間ベストに選べないのが残念でなりません。

[CD+DVD] RIRI 「NEO」 ソニー AICL3584~5 (2018)
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ビート・センスが更新した日本語の響き 中村佳穂

中村佳穂  AINOU.jpg

日常的に日本のポップスを聴く習慣があまりないので、
あくまでも偶然耳に飛び込んできた歌に、
反応する範囲での感想にすぎないんですけれど、
最近の日本の若手の歌って、日本語の響かせかたが、
べらぼうに巧みになったのを感じます。

先日知った折坂悠太もそうでしたけれど、
日本語を英語風に崩して発声するタイプの日本語ポップスの歌唱とは、
まったく異なる語法を身に付けている人が増えたように思います。
母音を強調する日本語の発声のまま、洋物のリズムにのせるスキルが、
若手はものすごく上達したんじゃないでしょうか。

これって、ヒップホップを通過した若い世代ならではの、
リズムやビートに対する鋭敏な感受性が成せる技という気がします。
もっとも、大西順子のアルバムにゲスト参加していたような、
昔の日本語フォークみたいなラップを聞かせる者もなかにはいるわけで、
みんながみんな、スキルが上がったわけでもないようですけれど。

日本語の響きをビートにのせることにかけては、
ヒップホップより、むしろポップスの分野できわだった才能が目立ちます。
水曜日のカンパネラのコムアイしかり、小田朋美しかり。
彼女たちのようなリズム・センスって、一昔前までは、
矢野顕子のようなひと握りの天才だけが持っていたものだったのに、
いまや多くの若手が獲得しているのだから、とてつもない進化です。

そんなことをまた思わせられたのが、
京都のシンガー・ソングライターという中村佳穂の新作。
ビート・ミュージックに始まり、新世代ジャズやネオ・ソウル、ピアノ弾き語り、
民謡をモチーフにした曲など、さまざまな情報を詰め込んだトラックが並ぶものの、
一本芯が通っているのが、ビートで磨きあげられた日本語の響きです。
作為のない中村の発声が、日常感情を率直に表現した歌詞をまっすぐに伝えます。

「日本語ロック論争」などといったものが、
完全に昔話となったのを実感させる、頼もしい若手たちの登場です。

中村佳穂 「AINOU」 スペースシャワー DDCB14061 (2018)
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ロンドンのブラック・ディアスポラ モーゼス・ボイド・エクソダス

Moses Boyd Exodus  DISPLACED DIASPORA.jpg

鳴り響くパトカーのサイレンに続いて、ヨルバ語のチャントが吟じられ、
エレクトロ・ファンク・グルーヴがすべり込んでくるオープニングに、
胸をぎゅっとつかまれました。
その昔、ロンドンにひと月ほど滞在した時によく通った、
ブリクストンやトッテナム、セヴン・シスターズといったアフリカ系移民街の街並みが、
まざまざと目の前に蘇ったからです。

UK新世代ジャズで注目を集めるドラマー、
モーゼス・ボイドが率いるエクソダス名義の初アルバムは、
タイトルが示すとおり、アフリカ/カリブ系移民子孫のまなざしを投影した作品で、
ブラック・ディアスポラ意識の高い音楽家たちが数多く集まっています。

ドミニカ人の父とジャマイカ人の母のもとに生まれたモーゼス・ボイドは、
南ロンドンのキャットフォード生まれ。
南ロンドンのアフリカ系移民街ペッカムにもなじみがあり、
ペッカムのメイン・ストリート、ライ・レーンをタイトルに掲げた曲も収められています。

このアルバムで大きな存在感を放っているのが、
トリニダッド・トバゴにルーツを持つアルト・サックス奏者、ケヴィン・ヘインズですね。
ケヴィンはアフリカン・ダンス・カンパニーのパーカッショニスト兼ダンサーから、
ジャズ・ミュージシャンへ転身した人で、キューバでサンテリアの音楽を学び、
バタやヨルバ語を習得したというユニークな経歴を持っています。

ケヴィン率いるグルーポ・エレグアが参加した4曲は、
オープニングの‘Rush Hour/Elegua’ ほか、
チューバとギターが冴えたプレイを聞かせる‘Frontline’ に、
ファラオ・サンダースやサン・ラが思い浮かぶ‘Marooned In S.E.6’、
バタとエレクトロが交差する‘Ancestors’ と、
都会に野生を宿らせたナマナマしい演奏ぶりに、ドキドキさせられます。

新世代スピリチャル・ジャズともいうべき、熱のある演奏を聞かせる一方で、
UKジャマイカンのザラ・マクファーレンが歌うジャズ・バラードや、
テリー・ウォーカーをフィーチャーした、
ヒップホップ/ネオ・ソウルのトラックもあるのは、
エレクトロのプロデューサーとしての別の側面を表わしたものなのでしょう。

コンクリートとアスファルトの街に響き渡るバタのリズムと、
アフロフューチャリスティックな響きを獲得したエレクトロニカが、
熱量のあるドラミングによく映えた本作がレコーディングされたのは、15年のこと。
すでにボイドはここから一歩も二歩も歩みを進めているはずで、
多角的な才能を発揮する俊英ドラマーの今後にも、期待が高まります。

Moses Boyd Exodus "DISPLACED DIASPORA" Exodus no number (2018)
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20年代ハーレムのギター・マエストロ ボビー・リーキャン

Bobby Leecan  Guitar Maestro.jpg

1920~30年代に活躍したギター兼バンジョー奏者、
ボビー・リーキャンの単独アルバムが、
戦前ジャズ/ブルースの専門レーベル、フロッグから出ました。

よほど熱心な戦前音楽ファンでないと知る人もいないでしょうけれど、
ぼくにとっては、アルバータ・ハンターや
マーガレット・ジョンソンの伴奏で忘れられない人です。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-03-26
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-03-24
いまだに写真の1枚も見つかっていない、謎のリーキャンですけれど、
近年の調査で判明したさまざまな遍歴が、ライナーに載せられています。

バンジョーをバリバリとフィンガリングする、太く逞しいサウンドがリーキャンの持ち味。
低音弦を響かせてドライヴするギターに、その凄腕が表われています。
高音弦を華麗に響かせてメロディ・ラインを作るロニー・ジョンソンとは、
真逆のタイプですね。リーキャンが高音使いするのは、
装飾的に和音を鳴らすときくらいなんですけれど、
12弦ギターのような複弦の音がするのが不思議。

解説には、チャーリ・クリスチャンのプレイとの類似性が指摘されていますけれど、
その見解はぼくには疑問。リーキャンは、ギターをメロディ楽器として弾くことより、
リズム楽器としてプレイすることを重視した人で、
ショーロの7弦ギターのように、低音弦をガンガン鳴らすプレイが特徴でした。

このCDには、相棒のハーモニカ奏者ロバート・クックシーと組んだ
サウス・ストリート・トリオや、ウォッシュボード・バンド、
女性歌手の伴奏など、さまざまなタイプの演奏が収録されています。
そのどれもが、ジャズというよりヴォードヴィル色の強いもので、
レパートリーのほとんどがダンス・チューンというところが嬉しいんですよね。

黒人大衆演芸ムードがいっぱいの、
エリザベス・スミスとシドニー・イーストンの掛け合いも聴きもの。
エリザベスの歌に茶々を入れるシドニーの語り口が、いいんだなあ。
映画『ストーミー・ウェザー』で、
エイダ・ブラウンの歌にファッツ・ウォーラーが絡むシーンを思わせますね。
そのファッツ・ウォーラーが、パイプ・オルガンを弾いているトラックもありますよ。
ギター弾き語りで聞かせるリーキャンの歌にも、味わいがあります。

ボビー・リーキャンは、ずいぶん昔にドキュメントがCD化した2枚がありましたけれど、
選曲・曲順の良さでは、このフロッグ盤の方に軍配が上がりますね。
音質も驚くほど良くって、ガッツのある低音がすごく出ていますよ。
寒くなってきた宵の口に聴くのにもってこいの、
身体も気持ちもほっこりと温めてくれる、最高の一枚です。

Bobby Leecan "SUITCASE BREAKDOWN" Frog DGF86
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冬に聴くディープ・ヴォイス アル・リンゼイ

Al Lindsey  VERSATILITY.jpg

寒くなってくると、いいサザン・ソウルであったまりたくなります。
ということで、今年の冬も嬉しいアルバムに出会えましたよ。
かすれたスモーキー・ヴォイスが持ち味のデトロイトの実力派シンガー、
アル・リンゼイの新作です。

80年代のアーバン・ソウルをホウフツさせるサウンドにのせて、
じっくりと歌い込んでいますよ。
スローでの胸をかきむしるようなノドを絞った歌唱に金縛りとなり、
ブルースのアップ・ナンバーでのキレのある歌いっぷりに、ノック・アウトをくらいました。

ゴスペルの熱さをしっかりと伝えてくるディープなヴォーカルは、
やっぱり聴きごたえがありますねえ。
ウイリー・クレイトン、J・ブラックフット、ラティモアなどとの共演歴が、
この人の実力を物語っています。

アイザック・ヘイズの影も見え隠れするコンテンポラリーなサウンドは、
ヴィンテージな香りが漂い、華美になりすぎないプロダクションが、
歌と実にいいバランスです。ディープ・ソウルのコブシを利かせつつも、
現代のコンテンポラリーな洗練された歌い回しもできる、
間違いなくトップ・クラスの実力派シンガーです。

Al Lindsey "VERSATILITY" no label no number (2018)
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トゥアレグ版『パープル・レイン』 エムドゥ・モクタール

Mdou Moctor  AKOUNAK TEDALAT TAHA TAZOUGHAI.jpg

トゥアレグ版『パープル・レイン』ついにDVD化!
これは嬉しい。観たかったんです、この映画。
ニジェールのトゥアレグ人ギタリスト、エムドゥ・モクタールが主演した
『かすかに赤みがかったブルー・レイン』です。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-10-18

監督を務めたサヘル・サウンズの主宰者クリストファー・カークリーは、
全編タマシェク語の音楽映画は世界初と豪語しており、
ナイジェリアのハウサ語映画に牛耳られている
サヘル地帯の映画事情に風穴を開けようとしたと、鼻息荒く語っています。

この映画で描かれているのは、アガデスに暮らすトゥアレグ青年たちの日常。
レベル・ミュージックといった政治的なテーマは、ここには出てきません。
エレクトリック・ギター、オートバイ、携帯電話がこの映画のキーとなっているように、
疎外されたサハラの若者たちの心情をすくい上げた娯楽映画になっています。

当初カークリーは、『パープル・レイン』をベースにした脚本を作っていったものの、
現場で俳優たちからシナリオを拒絶され、よりトゥアレグの若者たちの現実に
沿った内容へと、どんどん修正されていったんだそうです。

その修正の結果、敬虔なイスラーム教徒の父親が、
ギターを弾くヤツなど、麻薬やアルコールの中毒者だけだと、
息子のギターを燃やしてしまうシーンや、
エムドゥと恋人が仲たがいするエピソードのシーンが生まれたのだとか。

このほかにも、コンペティションに向けてリハーサルをしていたエムドゥの演奏が、
小遣い目当ての少年に携帯電話で盗み録りされて、
ライヴァルのギタリストに自作曲を盗まれたり、
かつて父親も音楽家を夢見て詩を書いていたことを知ったエムドゥが、
父の詞に曲を付けて歌うなどのプロットにも、
トゥアレグのリアルな現実がよく捉えられています。

こうしてみると、この映画、『パープル・レイン』というより、
ジミー・クリフの『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』とカブるところもありますね。
出演しているキャストの大部分がアマチュアで、
ミュージシャン自身が演じているところも同じなら、
かたやキングストン、かたやアガデスという、
街のヴィヴィッドな姿を活写しているところもよく似ています。

フランス人撮影監督ジェローム・フィーノとともに、
たったの8日間で撮影を終えたという低予算映画ながら、
現場での葛藤が良い方向へ作用して、ストーリーにリアリティを生み出し、
トゥアレグのアマチュア俳優たちのいきいきとした演技につながった、秀逸な作品です。

全編75分。英仏語字幕付、NTSC方式なので、日本のプレイヤーで視聴可能。
1000部限定のリリースです。

[DVD] Mdou Moctor "AKOUNAK TEDALAT TAHA TAZOUGHAI" Sakel Sounds no number (2015)
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トゥアレグ新世代ギター・バンド イマルハン

Imarhan Temet.jpg

アルジェリア南部タマンラセット出身のトゥアレグ人バンド、イマルハンの2作目。
今年2月に出ていたのに、まったく気付かなかったのはウカツでした。
2年前のデビュー作が、優れた出来だったにも関わらず、
日本ではまったく評判になりませんでしたよね。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-05-16
新作も上出来なのに、ずっと気付かなかったほど
話題に上らずにいるのは、残念すぎます。

あまたあるトゥアレグ・バンドの中で、イマルハンが抜きん出ているのは、
ソングライティングの良さですね。
キャッチーというと、ちょっと語弊があるかもしれないけれど、
リーダーのサダムが書くフックの利いた曲づくりのうまさは、
とかく単調になりがちなトゥアレグのソングライターたちに比べ、
頭一つも二つも抜けています。

歌と演奏のパートが、静と動のコントラストを鮮やかにつける‘Tumast’ や、
ヘヴィーなファンクの‘Ehad wa dagh’ がある一方、
砂漠の夜のキャンプファイアが目に浮かぶ、トゥアレグ・フォークの
‘Zinizjumegh’ など、振り幅のある曲を書けるところが強みです。

コーラスに女性数人を加えているほか、控えめなフェンダー・ローズやオルガンが
効果を上げるなど、ゲストの起用もツボにはまっていますね。
特に凝ったアレンジをしているわけではないものの、
無理のない起伏を作り出してアルバムに変化を与えていて、
アルバム作りの上手さも光ります。

伝統的なトゥアレグの歌詞やブルージーなメロディと、
ロックやソウルで育ってきた若い世代のサウンド・センスが、
これほど自然体で融合しているトゥアレグ・バンドは貴重じゃないでしょうか。
現在はパリで活動しているというイマルハン、
「繋がり」と題されたタイトルに、彼らの思いや立ち位置が示されています。

Imarhan "TEMET" City Slang/Wedge SLANG50135 (2018)
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