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未来型マグレブ音楽 アマール808

Ammar 808 Maghreb United.jpg

チュニジア人プロデューサー、ソフィアン・ベン・ユーセフの新ユニット、
アマール808がスゴい。
チュニジア北西部の山あいの村に伝わる音楽、タルグをモダン化したバルグー08でも、
伝統音楽が持つ野趣を損なわず現代化する手腕に、
冴えを見せていたソフィアンでしたけれど、
マグレブ音楽の統合を目指した新作では、
さらに大胆なプロダクションに挑戦しています。

ユニット名の「808」は、ローランドの歴史的な名器であるリズム・マシーン、
俗称「ヤオヤ」から取ったらしく、
マグレブ音楽のモダン化の象徴として使っているようです。
じっさいのビートメイキングでは、それほど典型的な「ヤオヤ」の音は出てきませんけど、
シンセ・ベースやパーカッションの加工音として、きっと活躍しているんでしょうね。

バルグー08での試みをさらに進化させたデジタル・サウンドが、
今回の最大の聴きどころです。
ソフィアンは、アルジェリア、モロッコ、チュニジアの伝統音楽のリズムを
強化するためにエレクトロを使用していて、
サウンドを整理したり洗練させたりするのではなく、
土俗性をさらに強調する作用をおこそうとしている意図が、はっきりと汲み取れます。
ゲンブリや、ガスバ(葦笛)、ゾクラ(ダブル・リード楽器)といった楽器が生み出す、
アクのあるマグレブの響きを最大限に生かすような、
エレクトロな活用にそれが表れていますね。

伝統音楽のリズム理解をふまえたプロデューサーがクリエイトするサウンドの前には、
トライバル・ビートと称するハウスやテクノのDJが作り出す
安直なビートメイクなど、比較になりません。
ワールド・ミュージック時代の欧米プロデューサーによる
サウンド・プロダクションがひと時代巡り、
現地のプロデューサーによって乗り越えたのを実感します。

そんな未来型マグレブ音楽のプロダクションにのって歌う3人が、
また力量のある歌手揃いというのが嬉しいじゃないですか。
アルジェリア代表には、
ワールド・ミュージック時代のライ・サウンドに回帰した新作も痛快だった
パリ在住のライ歌手ソフィアン・サイーディを起用、モロッコからはメハディ・ナスリ、
チュニジアからはシェブ・ハッセン・テジが参加しています。

よくもまあ、こんなに臭みたっぷりの歌手ばかり揃えてくれたもんです。
3人ともいかにもマグレブ出身らしいノドの持ち主で、こぶし回しも強力な実力者揃い。
特に、シェブ・ハッセン・テジの伝統的な歌唱がしっかりと刻印された歌いっぷりには、
感じ入っちゃいましたよ。

こうしたタイプの歌手の起用や、野趣な味わいを強調するエレクトロ・ビートに、
かつてのワールド・ミュージック時代の欧米プロデューサーとは
まったく異なるセンスがうかがえ、頼もしくなります。

Ammar 808 "MAGHREB UNITED" Glitterbeat GBCD060 (2018)
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シックな夜に堕ちて J・ソウル

J Soul.jpg

ジャケットのムードが、中身の音楽を暗示しています。
ケニー・バレルの名盤をひっくり返したタイトルにも、
ピンとくるものがあって、試聴してみたら、アタリでした。

ボルチモアのシンガー・ソングライター、J・ソウルことジャマル・スミス。
マルチ・プレイヤーでビート・メイカーでもあるという彼、
アンダーグラウンドのR&Bシーンで高い評価のある人だそうです。
本作は13年にデジタル・リリースした4作目で、
このたび未発表曲をラストにボーナス・トラックとして加えて、
フィジカル化が実現したんだそう。

イントロのレコード盤のチリ・ノイズに、メロウなキーボードがたゆたえば、
はやアルバム・コンセプトのツカミもオッケー。
続いて、ミュート・トランペットをフィーチャーした
スムースでジャジーなトラックに、もうトロトロです。
多重コーラスとファルセットにレイヤーしたキーボードが浮遊して、
シックな夜を演出します。

ネオ・ソウル/ジャジーヒップホップのもっとも甘美なサウンドを抽出して、
官能的な夜へ沈み込んでいくムードをすみずみまで落とし込んだ逸品、
ベッド・ルームでの使用にも重宝するかと。

J Soul "BLUE MIDNIGHT" B.S.M Productions no number (2013)
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人生の痛みを癒すメロウ サー・チャールズ・ジョーンズ

Sir Charles Jones  The Masterpiece.jpg

おぅ! サー・チャールズ・ジョーンズの新作。
待ってましたっ、と飛びつこうにも、配信ばかりで、
CDがどこにも売っていないじゃないですか。
うわ~ん、と地団駄踏んでたら、
ダラスのちっちゃなオンライン・ショップで扱っているのを発見。
ようやっと入手できました。
インディ・ソウルも、だんだんフィジカルが入手困難になってきましたねえ。

14年の前作“PORTRAIT OF A BALLADEER” が胸に沁みる極上の出来でしたからねえ。
多事多難の苦しい日々を送っていた時に、サー・チャールズの苦み走った声に、
どれだけ助けられたことか。彼のヴォーカルにはブルースが滲んでいますよ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-10-02

あのアルバムは、ウィリー・クレイトン肝いりのレーベル、エンドゾーンからのリリースで、
ウィリー御大も共演するバックアップも得た豪華なものでしたけれど、
今回は自主制作。ジャケットがいかにもインディなチープさで、
まあ、それなりのプロダクションならいいかと、期待値を下げて聴いてみたら、
予想をはるかに上回る出来で、ひょっとして、前作以上?
すっかり舞い上がっちゃいまいた。

「このアルバムはマスターピースだ」というMCに促されてスタートする今作、
タイトルは伊達じゃありませんでした。
この人のビッグ・マウスには、またか、と苦笑もするんですけれど、
しっかりとした実力が備わっているんだから、大したもんです。

今回も全編ミディアム~スロー。
カルヴィン・リチャードスン、オマー・カニングハムをフィーチャーして
3人が順にリードをとった“Cal On Me” は、
時代の生きにくさに抗えず、つまずいてしまった者に、
黙って肩を貸すような男のメロウさがあって、胸に沁みます。
その一方、アクースティック・ギターとシンセをバックに、
ソウル・マナーな歌いぶりを封印して、
ストレイトにメロディを歌った“100 Years” の温かさにも泣けますねえ。

ポーキー・ベアをゲストに迎えたブギー・ファンクあり、
ステッパーあり、ネオ・ソウルあり、多彩な曲調にさまざまな歌いぶりで迫る、
サー・チャールズ・ジョーンズの魅力が全開した傑作です。

Sir Charles Jones "THE MASTERPIECE" Southern King Entertainment no number (2018)
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帰ってきたクイーン・サラワ・アベニ

Queen Salawa Abeni  Recovering.jpg

ナイジェリア、ワカのトップ・シンガー、クイーン・サラワ・アベニの新作が届きました。
サラワ・アベニについては、コリントン・アインラと蜜月だった時代の
80年代の諸作がCD化され、前に記事にしましたけれど、
新作を聴くのはずいぶんひさしぶりです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21

『回復』というタイトルに、何かあったのかなと思ったら、
08年から体調が悪化し、6年間のブランクを余儀なくされていたとのこと。
なんの病気だったのかは、明らかにはされていませんけれど、
身体の麻痺で歩くこともできなくなっていたというのだから、かなり深刻だったようですね。

息子さんを亡くすなど、世紀をまたいでからトラブルが続いていたアベニですが、
復帰作となる本作では、長いブランクをものともしない、
パワフルな歌声を聞かせてくれます。
バックのパーカッション・アンサンブルも気合が入っていて、充実していますよ。

コリントン・アインラと別れてからは、
ワシウ・アラビ・パスマやセフィウ・アラオなどの支援を受けていたようなので、
本作のバックも、アラビ・パスマのバンドかもしれません。
ワカは、歌手とコール・アンド・レスポンスするコーラスも、
全員女性なのが通例ですけれど、
このアルバムでは男性陣がお囃子をしています。

全5曲、なかでも故シキル・アインデ・バリスターに捧げた曲では、
ゆったりとしたテンポで始まり、途中でリズムがスイッチして疾走していく構成で、
トーキング・ドラムが快音をあげています。
サックスなどが一部で入るものの、現在のフジのサウンドでは控えめな方で、
パーカッション・ミュージックの妙をたっぷりと味わえます。

Alhaja Queen Salawa Abeni "RECOVERING" Alagbada no number (2016)
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絶好調続くジュジュの若大将 フェミ・ソーラー

Femi Solar ft Idowu Santana  ON STREET.jpg

ナイジェリアで5月にリリースされたばかりの新作。
ゴスペル・ジュジュのフェミ・ソーラー、快調です。

フェミ・ソーラーのフェイスブックでは、
“SWEETNESS” という新作が出ているようなんですけれど。
本作はそれとは別のアルバムで、イドウ・サンタナという
若手男性歌手をフィーチャリングしたアルバムとなっています。

5曲分のタイトルが書かれているものの、ノン・ストップのメドレー形式で、
1トラック36分38秒の収録といったミニ・アルバム・サイズですね。
そういえば、前作の“IYIN” も同じ1トラック、36分の内容でしたけれど、
フル・アルバムの合間のEP扱いのようなものなんでしょうか。

閑話休題。
フェミ・ソーラー、絶好調ですね。
80年代前半のキング・サニー・アデを思わせる輝きを感じさせます。
これほど軽快に疾走するビートの気持ち良さは、アフリカ随一じゃないですかね。
手数の多いドラムスがメリハリのあるビートを強調して、
トーキング・ドラムなどのパーカッションがステデイなリズムを刻みながら、
ドラムスの合間を埋めるように、フィルを叩き込んでいく。
この揺るぎないアンサンブルは鉄壁といえますね。

今回フィーチャリングされたイドウ・サンタナというシンガーは、
軽い歌い口のフェミ・ソーラーとは対照的に、野性味のあるこぶし回しを聞かせます。
イバダンをベースに活動している若手ジュジュ・シンガーのようで、
ソロ・アルバムも出しているようなので、聴いてみたいですね。

ギター3台のアンサンブル、コーラスのコンビネーションも実に緊密、
どこにもスキのないサウンドの完成度は、スゴイですね。
36分38秒、まったく飽きさせることなく、最後まで軽やかに突っ走るこの快感、
聴き終わると、もう一度プレイ・ボタンを押したくなります。

Femi Solar ft Idowu Santana "ON STREET" Al-Hassan Music/Chimecs Music Int’l no number (2018)
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パン=アフリカン・ポップ・スターを目指して イェミ・アラデ

Yemi Alade  MAMA AFRICA.jpg   Yemi Alade  BLACK MAGIC.jpg

前作“MAMA AFRICA” でナイジャ・ポップ・シーンから、
インターナショナル・マーケットに飛び出したイェミ・アラデ。
「クイーン・オヴ・アフロビーツ」の称号を海外メディアから与えられるなど、
一躍注目を集め、ナイジェリアのスーパースターへと登りつめた女性歌手です。

その“MAMA AFRICA” は、タイトルにも示されているとおり、
ミリアム・マケーバの跡を継ごうという気概に溢れたアルバムでした。
インターナショナル向けのジャケットでは、
ナイジェリア国内盤のマーサイ・コスチュームはさすがに控えていましたけれど、
そんなファッションにも、
パン=アフリカン・ポップ・スターを目指す心意気が表われていましたね。

R&B/ヒップホップ・ベースの、はっちゃけたアフロ・ポップが痛快だった前作に続いて
リリースされた新作は『黒魔術』と、これまた物議を醸し出しそうなアブナいタイトル。
前作の『ママ・アフリカ』といい、
この人のイメージ戦略は、かなりリスクを取っていますね。
イギリス盤ジャケットは、顔から腕にペインティングしたヴィジュアルで迫っていましたが、
ナイジェリア盤はナチュラルなコスチュームで、特にタイトルを強調してはおらず、
マーケットによって慎重に使い分けているのがうかがえます。

ところで今回の本作、じっさいの音に触れる前に、
ナイジェリアのメディアに載った辛辣な記事を読んでしまったものだから、
実は聴くのが不安でした。
その記事では、
「音楽的な成長がまったく見られず、創造性に欠けている」とボロクソの評価で、
5点満点の2点という低評価だったのです。

このアルバム・レヴューを書いたジョーイ・アカン氏は、
ぼくが高く評価しているシミを、同じ記事の中で絶賛しているだけに、
なおさら信ぴょう性はありそう……。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-02-07

で、聴いてみたんですが、え、えぇ~、そこまで言う? というのが、ぼくの感想。
はじけたポップさは少し後退して、クールになったというのが全体の印象でしょうか。
たしかに前作の延長線上のアルバムではありますけれど、
プロダクションのクオリティは、前作より上がっているところもあるし、
南アのクワイトに接近したハウス・サウンドは十分魅力的です。
イボ・ハイライフを取り入れた“Kpirim” など、アルバムのフックとなる曲もあるし、
“Bread And Butter” や“Jantoro” のつっかかるリズムなんて、踊りたくなりますねえ。

ヨーロッパでの成功ばかりでなく、東アフリカや南アへの進出など、
パン=アフリカンなポップ・スターを目指すイェミ・アラデ、
同じ志向を持つオラミデよりも、彼女の音楽性の方が確かです。

Yemi Alade "MAMA AFRICA" Effyzzie Music no number (2016)
Yemi Alade "BLACK MAGIC" Effyzzie Music no number (2017)
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テランガが溢れた夜 エルヴェ・サンブ

20180615_Herve Samb_Teranga.jpg   20180615_Herve Samb_Teranga_Inner.jpg

ペイ爺さんに大感謝です。
エルヴェ・サンブの記事につけてくれたコメントのおかげで、
ライヴを見逃さずに済みました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-06-01

6月15日、代官山の晴れた空に豆まいて。
いやぁ、スゴいライヴでした。
バンド・メンバー全員、セネガル屈指といえる名手が勢揃いしていて、
こんなに演奏力の高いバンドは、セネガル現地でも、ちょっといないんじゃないの。

サバールのアリュヌ・セックは、
セネガルの偉大なパーカッション・オーケストラ・リーダー、
ドゥドゥ・ンジャイ・ローズに捧げたソロ・プレイを披露するなど、
切れ味鋭い演奏を聞かせるほか、
タス(プレイズ・ポエトリー)も繰り出し、ドラマーのマコドゥ・ンジャイとともに、
ムチのようにしなやかで強靭なリズムを叩き出していました。

主役のエルヴェ・サンブはエレクトリックを封印して、
アクースティック・ギターで通したのは、
新作“TERANGA” お披露目のライヴだからなんでしょうね。
ベースのパテ・ジャッシは、ユッスー・ンドゥールやシェイク・ローのバンドの
ツアーやレコ-ディングへファースト・コールのミュージシャンで、
デトロイトを拠点にジャズ・ミュージシャンとしても活躍するスゴ腕ベーシスト。
ライヴではヨコ・タテのベース両刀使いで、
ソロで披露したテクニックには目を見張りました。
どうやらエルヴェは、パテからジャズを学んだみたいで、「ぼくの先生」と呼んでいました。

そして、一番の呼び物が、ヴォーカリストにアルファ・ジェンを連れてきたこと。
オーケストラ・バオバブの看板歌手で11年に亡くなったンジュガ・ジェンの息子です。
“TERENGA” のラスト・トラックで、生前のンジュガ・ジェンが歌っていて驚いたんですが、
やはりあのセッションがンジュガ・ジェンのラスト・レコーディングだったとのこと。
その曲を、息子アルファが歌ってくれるとは、グッとくるじゃないですか。

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そのアルファの歌いぶりの素晴らしさといったら、言葉がありませんでしたね。
グリオを思わせるパワフルな歌い声は、アフリカの伝統が誇る遺産そのものといえる響きで、
カンゲキが抑えられませんでした。
終演後にアルファに話を聞いたところ、オーケストラ・バオバブの新作
『ンジュガ・ジェンに捧ぐ』のヨーロッパ・ツアーに、
アルファは帯同して歌ったんだそうです。そちらも観たかったですねえ。

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エルヴェ・サンブのギターは、ジャズから学んだ運指やピック使いをするものの、
一方で、セネガルの伝統的な弦楽器ハラム(ンゴニと同じ弦楽器)のフレーズを
写し取ったプレイをしたり、曲のマテリアルに合わせて多彩な弾き分けをします。
こういうところに、ジャズを語法として学び取った新世代のしなやかさがありますね。
コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」が、
いつのまにかセネガル伝統色濃い曲にスイッチするメドレーなど、その白眉でした。

新作のレパートリーで通した今回のライヴは、
ジャズ色のないセネガル一色といった音楽だったんですが、
ハイライトは飛び入りしたタマ奏者でした。
ちょうどぼくの後ろの客席に座っていたセネガル人が、
おもむろに立ち上がってステージにあがり、タマを叩き出したのには仰天。

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そのタマの演奏の巧いことといったら! インタープレイも自在で、
ただもんじゃないぞ、この人誰と思ったら、終演後わかったことですけれど、
“TERENGA” にも参加していたサンバ・ンドク・ムバイとのこと。
そりゃあ、巧いわけだわ。
シェイク・ローのバックなどで、実力派タマ奏者として知られる有名人。
なんと今年の頭から日本に滞在しているとのことで、
サプライズ・ゲストとして登場したようなんですが、
おかげで、さらにセネガル伝統色の強いサウンドになりました。

サンバはエルヴェが駆け出しの頃から知っているらしく、
「こいつはギター小僧で、若いときから練習の虫だったんだ。
それが、セネガルのトップ・クラスのこんなスゴイ面子と
一緒にやるようになるなんて、スゴイぜ」とMCで感極まったように言っていました。
客席から先輩ミュージシャンが登場するという、嬉しいハプニングは、
ライヴの空気を一気にフレンドリーな場に変えて、
セネガルのおもてなし精神<テレンガ>を満ち溢れさせたのでした。

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Herve Samb "TERENGA" Euleuk Vision no number (2017)
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戦意喪失する軍楽

Qajar Era Martial Music.jpg

イラン古典音楽の名門レーベル、マーフール文化芸術協会から、
いにしえのイラン軍楽のヴィンテージ録音集がリリースされました。
原盤となったのは、1906年にイギリス、グラモフォンがテヘランで出張録音した音源。
当時グラモフォンは、7インチ盤6面と10インチ盤20面を録音しましたが、
7インチ盤は未発見で現存せず、10インチ盤に残された20曲のうち17曲が、
本CDに収録されています。

軍楽というと、オスマン帝国の軍楽メフテルが有名ですけれど、
イランの軍楽を聴くのは、ぼくはこれが初めて。
LP時代に復刻されたことがありましたっけ?
たぶんこれが、初の復刻なんじゃないかと思うんですけれども。

1906年のイランというと、歴史の教科書を紐解けば、
ガージャール朝第5代君主モザッファロッディーン・シャーの時代。
イギリスやロシアの半植民地に下り、経済的権益を外国に奪われた暗い時代でした。
そんな頃に、大国ロシアが日本に負けるという日露戦争や、
ロシア第一革命などを契機に、イラン人の改革意識が高まり、立憲革命が起こりました。
1906年は、まさにイランで初めての憲法が起草された年です。

一方で、近代化に向けてさまざまな変革を迎えた時代でもあって、
本作の解説によれば、イランの軍楽は、1851年にテヘランで開学した
ダーロル・フォヌーン校が迎え入れたフランス人音楽教師によって、
軍楽隊が編成された時に始まったとあります。

聴いてみると、ビューグル(軍隊ラッパ)もしくはクラリネットの独奏で演奏が始まり、
前奏が終わると、軍楽隊のオーケストラ演奏になるという形式をとっています。
オーケストラ演奏のリズムこそマーチで、
マーチング・バンドらしいとはいえるんですけれど、
ダストガーにもとづく旋律が奏でる前奏は、なんとも陰影のある哀感に満ちたもので、
およそ軍楽のイメージからは遠いものです。

こんな物悲しいメロディばかり聴かされたら、
戦意なんて喪失しちゃうと思うんですけれどもねえ。
戦場へ向かうどころか、脱走兵続出になっちゃうんじゃ。
イラン人はこういうしみじみとしたメロディで戦意高揚できるんでしょうか。

ビューグルやクラリネットの前奏のつかない、軍楽らしい楽隊演奏の曲も4曲ありますが、
それとて、やっぱり旋律は憂いたっぷりだし。
異邦人には理解しがたい、ヨーロッパの軍楽ともトルコ軍楽メフテルとも趣を異にする、
世にも不思議な軍楽です。

Shâni Orchestra, Etezâdiye Band, Qoli Khân Yâvar, Ebrahim Khân Yâvar, Soltân Ebrâhim Khân
"QAJAR ERA MARTIAL MUSIC : 1906 RECORDINGS ON 78 RPM RECORDS" Mahoor M.CD514
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伝説ではなく現役 エボ・テイラー

Ebo Taylor YEW ARA.jpg

ストラットからミスター・ボンゴに移籍してリリースした、
ガーナのハイライフの大ヴェテラン、エボ・テイラーの新作。
これ、復帰後の最高作じゃないですか。

10年の復帰第1作“LOVE AND DEATH” も快心の出来でしたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-11-18
まさか82歳でこんなスゴいアルバムを作るとは、驚嘆です。
歌いっぷりまで若返っているのは、いったいどういうことなんですか。
いや、恐れ入りました。

ストラットから出した2作は、ベルリンをベースに活動する
多国籍ユニットのアフロビート・アカデミーがバックアップしていましたけれど、
今作はエボ自身のバンド、ソルトポンド・シティ・バンドと、オランダで録音しています。
最近は地元ガーナやヨーロッパのツアーでも、このバンドと活動しているようで、
トランペット、トロンボーンの2管を含むメンバー全員、ガーナ人です。
キーボードのヘンリー・テイラーとパーカッションのロイ・X・テイラーは
エボの息子で、ヘンリーがヴォーカルをとっている曲もありますよ。

今回のアルバムをプロデュースしたのは、ジャスティン・アダムス。
タイトに引き締まったバンド・アンサンブルのアレンジや、
ホーンのダブ・ミックスなどには、
ジャスティンがかなり助力したものと思われます。
ジャスティンはアディショナル・ギターとしてもクレジットされていますが、
どこで弾いているのかわからないほど、控えめな参加ぶりですね。
むしろ、ハイライフ・ジャズ・ギタリストであるエボのギター・ソロを、
要所でくっきりとフィーチャーしているところは、
主役を引き立てるジャスティンらしいプロデュースです。

リズムを全編アフロビートで通しているのは、時代のトレンドなんだろうなあ。
“Ankona'm” “Aba Yaa” のようなハイライフ・ナンバーは、
ベル・パターンのハイライフのリズムで演奏した方が似合うはずなんですけれども。
なんでもかんでもアフロビートにしちゃうのが、
ハイライフ・ファンには少し残念ですけれど、
これだけビシッと引き締まった力強いサウンドを生み出してくれれば、不満はありません。

昨年はジェドゥ=ブレイ・アンボリーの新作に快哉を叫んだものですけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-05-29
今年はエボ・テイラーと、ガーナのハイライフのヴェテランの現役感に脱帽です。

Ebo Taylor "YEW ARA" Mr Bongo MRBCD155 (2018)
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サン・パウロのヴェテラン・ジャズ・ドラマーの初リーダー作 クレベール・アルメイダ

Cleber Almeida Septeto.jpg

今年のブラジルはジャズがきてますねえ。
もちろんジャズは、ブラジルばかりじゃなく、ワールドワイドにきてますけど、
ブラジルでこれほどフレッシュなジャズが続々リリースされるのは、
長らくインストルメンタル音楽が日陰の存在だったブラジルではまれなことで、
インディ・シーンの活性化を実感します。

デアンジェロ・シルヴァ、ブルーノ・ヴェローゾときて、
今度はこのクレベール・アルメイダです。
前の二人は、ベロ・オリゾンチの若手でしたけれど、こちらはサン・パウロのヴェテラン。
トリオ・クルピーラですでに20年以上活動してきたドラマーで、
バンダ・マンチケイラでも活躍するほか、
さまざまな歌手のレコーディングでひっぱりだこのドラマーですね。

編成はサックス、トランペット、トロンボーンの3管に、
ピアノ、ギター、ベース、ドラムスのセプテート。
遅すぎる初リーダー作ともいえる本作ですけれど、
ヴェテランらしい懐の深い音楽性を示しています。

ブラジル音楽の要素を表出せずにジャズをやる、最近の若手の傾向とは違い、
サンバやマラカトゥ、フォロー、ヴァルサをベースにしたレベールの自作曲は、
90年代から活躍する世代を象徴しているといえるのかも。
マラカトゥの曲で聞かせるホーン・アレンジでは、ホーンがリズムをかたどるなど、
さまざまな細やかなアレンジが施されていて、編曲の才に耳を奪われます。

トリオ・クルピーラでも北東部のリズムを多用していましたけれど、
軽快なドラミングで、ジャズのリズム・フィールに応用していくプレイは、
巧いですよねえ。プレイはスムースなので、さらりと聞けてしまうんですれど、
なかなか手の込んだことを、あちこちでしていますよ。
シンバルでアクセントを付けていくところも、サンバ・ドラムのニュアンスがたっぷりで、
反対に、リズムを細かく割るといったヒップホップからの影響は、
この人のドラミングからは聞かれません。

メロディアスな曲ばかりで、器楽的な曲がないのも、この人の作曲の特徴。
踊り出したくなるポップな曲や、しっとりとした泣きのワルツなど、
どれも歌詞をつけて歌えそうな曲だから、アレンジも歌もの的になるのかな。
ピアノのベト・コレアがアコーディオンを弾いているのも、とても効果的ですね。
ピアノとギターはエルメート・パスコアールの系譜のミュージシャンだそうですが、
ここではエルメート色を感じさせるプレイはいっさい出てきません。

若手の台頭著しいサン・パウロのジャズ・シーンで、
ヴェテランらしい奥行きのあるコンポーズとアレンジに冴えを見せたアルバムです。

Cleber Almeida Septeto "MÚSICA DE BATERISTA" no label MCKPAC0083 (2018)
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ブルメナウの青い空 ジョン・ムエレール

John Mueller  NA LINHA TORTA.jpg

MPBの良き伝統を感じさせるシンガー・ソングライターですね。
シコ・ブアルキやジョアン・ボスコ、ジャヴァンに、
ちょっとミナスぽい感じも加えたような作風で。
前にもこんな曲を書く人がいたな、誰だっけと考えて、
ペセ・カステイーリョを思い出しました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-05-28

ジェントルな歌声やすがすがしいメロデイ・センスに、共通する資質を感じたんですが、
ジョン・ムエレールはミナスではなく、南部サンタ・カタリーナ州のブルメナウ出身。
なるほどドイツ人のような苗字は、
ドイツ系移民の都市ブルメナウ出身だからなんですね。
彼もドイツ系移民の子孫なんでしょう。

14年のデビュー作は聴いていませんが、
2作目となる本作は、ブルメナウの昔からの仲間のミュージシャンたちとともに、
サンタ・カタリーナ州都フローリアノーポリスでレコーディングしています。

アルバム制作のために、リオから音楽監督として招いたのが、
シコ・ブアルキのパートナーとしても知られる、
ヴェテラン・ベース奏者のジョルジ・エルデール。
ゲストに、ピアノのクリストヴァン・バストスや、
アコーディオンのブルーノ・モリッツのほか、
ギンガまで呼んだのは、ジョルジ・エルデールの采配でしょうねえ。

ギンガと2人の声・2本のギターで綴った“Na Linha Torta” は、
インティメイトな仕上がりで、アルバムのハイライトとなりました。
ブルメナウの澄んだ青空に吹き抜ける風を思わせるアルバムです。

John Mueller "NA LINHA TORTA" no label JM002 (2018)
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レディ・ジャンプ・シャウター キティ・スティーヴンスン

Windy City Divas.jpg

キティ・スティーヴンスン!

うわあ、40年ぶりの再会ですねえ。
かつてPヴァインが、チャンス・レコードのリイシュー・シリーズの1枚としてLP化した
謎の女性ジャンプ・シンガー、キティ・スティーヴンスンが、ついにCD化されました。

本人の写真が1枚もなく、経歴も不明という謎だらけのシンガーで、
ジャンプ/ジャイヴ・ファン好きの間で話題を呼んだ人です。
あの時リイシューされた7曲がまるごとCD化されたんですが、
ほかに追加曲がなかったのは残念。同じセッションで録音されたと思われる
“It Ain't Right” “It Couldn't Be True” “Then Comes The Day” “Evening Sun”
の4曲があるんですけれども。

いやあ、ひさしぶりに聴き直しましたけれど、
イナたいジャンプ・シャウターといった味わいが、たまりませんねえ。
田舎のジューク・ジョイントで歌ってるシンガーといった風情がいいんです。
いや、実際のところは、CDタイトルにあるとおり、シカゴで歌ってた人なんでしょうけど、
そんな都会のダンスホールのムードなんてまるでない、田舎臭さがいいんです。

今回のCD化で、この7曲は52年12月ではなく、47年12月録音で、
伴奏はトッド・ローズ・オーケストラだということが判明しました。
また、名前もPヴァイン盤ではスティーヴンスとなっていましたが、
スティーヴンスンと改められています。
そして最大のディスカヴァリーはキティ嬢の写真で、表紙を飾っていますよ。

ブギウギのビートにのせて、ぶっきらぼうに歌う
“That Jive” のジャイヴ味がこたえられません。
まるっきり洗練されていないからこそ出せる、
濃厚なブルース臭としか言いようがありませんね。
ジャマイカ民謡の“Hold 'Em Joe”なんて、この人の土臭さにドはまりで、
47年4月録音のルイ・ジョーダンの“Run Joe” の洗練ぶりと対極といえますよ。

Pヴァイン盤はA面のキティ嬢ばっかり聴いて、
B面を聴いた記憶がぜんぜんないんですけれど、
このCDにはキティ以外にも、ドロシー・ローガン、ルー・マックなど、
ぼくも初耳のレディ・ジャンプ・シャウターが勢揃いで、悶絶が抑えられません!

このなかで、もっとも知名度の高い人といえば、女トランペッターとして名を馳せ、
自身の楽団も率いたヴァライダ・スノウでしょうね。
さすがにヴァライダの2曲は、
ほかのレディとは比べ物にならない洗練ぶりで、華があります。
ここだけ、めかしこんだ社交場のシカゴの夜というムードですけれど、
他は、シカゴ郊外の場末のバーでしょうかね。
馴染みの店で、常連客とともに卑猥な歌に嬌声をあげる、
気の置けなさが嬉しい1枚です。

Kitty Stevenson, Miss Byllye Williams, Edna McRaney, Valaida Snow, Dorothy Logan and Lou Mac
"WINDY CITY DIVAS : RHYTHM & BLUES IN CHICAGO VOLUME 1" Theron CD5001
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ピーコックのゴスペル

Classic Gospel  1951-1960.jpg   The Five Blind Boys Of Mississippi.jpg
The Bells of Joy.jpg   Spirit of Memphis.jpg

ゴスペル黄金時代の最重要レーベル、
ピーコックのコンプリート・リイシューがついに実現です。
ようやっとというか、なんとも時間がかかりましたけれど、感慨深いですねえ。

51年から60年までのピーコックのゴスペル・レコードを発売順に、
4枚のCDに完全収録。
ただし、すでに単独盤でCD化済のブラインド・ボーイズ・オヴ・ミシシッピ、
ベルズ・オヴ・ジョイ、スピリット・オヴ・メンフィスの曲は除かれているので、
これらのCDと合わせてのコンプリート・リイシューとなります。

ピーコックといえば、ア・カペラだったゴスペルに、
ギターとドラムスを加えてリズムを強化し、
ドライヴ感を押し出したことで知られる名門レーベル。
ぼくにとっても、初めて聴いたゴスペルがピーコックのディキシー・ハミングバーズで、
これを入口にゴスペル・カルテットの魅力に取りつかれた、思い出深いレーベルです。

Dixie Hummigbirds.jpg   The Original Blind Boys.jpg

きっかけは、中学三年生の時に聴いた、
ポール・サイモンの“Loves Me Like A Rock” と“Tenderness”。
この曲にフィーチャーされたディキシー・ハミングバーズで初めてゴスペルを知り、
すぐさまディキシー・ハミングバーズの“IN THE MORNING” を買ったんでした。
この1枚に衝撃を受け、そのあとすぐファイヴ・ブラインド・ボーイズのレコードも買い、
ゴスペルにハマったんでしたね。

ちょっと話が脱線しますけれど、
ポール・サイモンの“THERE GOES RHYMIN' SIMON” は、
ぼくに多くの音楽入門をさせてくれたレコードでした。
ゴスペルばかりでなく、マッスル・ショールズのミュージシャンや
マルディ・グラのブラス・バンドを知ったのもこのレコードなら、
だいぶ後になってからですけれど、クインシー・ジョーンズのオーケストラ・アレンジの
スゴさに気付かされたのも、このレコードでしたからねえ。

話を戻して、今回の4枚組、もっとも曲数が多いのは、そのディキシー・ハミングバーズ。
すでにアクロバット以外でCD化された曲も多いとはいえ、
あらためてリード・シンガーのジェイムズ・ウォーカーと
コーラスのかけあいには、感じ入りますねえ。
ディスク1所収のメドレー“Let's Go Out To The Programs” での、
ザクザクと刻むギターにのせたインタールードを挟んで、
次々と曲を繋いでいくスリルは格別です。

そしてなんといっても最大の聴きどころは、センセイショナル・ナイチンゲールズ。
こちらにいたっては、初CD化曲揃いとくるのだから、
まさしく世界中のゴスペル・ファンが待ちに待った、長年の悲願だったもの。
さあ、ジュリアス・チークスのシャウトを、こころゆくまで味わいましょう。

The Dixie Hummingbirds, The Bells of Joy, Five Blind Boys of Mississippi, Sister Jessie Mae Renfro and others
"CLASSIC GOSPEL 1951-1960" Acrobat ACQCD7119
The Five Blind Boys of Mississippi "THE FIVE BLIND BOYS OF MISSISSIPPI" Acrobat ADDCD3003
The Bells of Joy "THE COLLECTION" Acrobat ACMCD4207
Spirit of Memphis "HAPPY IN THE SERVICE OF THE ROAD" Acrobat ADDCD3007
[LP] Dixie Hummingbirds "IN THE MORNING" Peacock PLP108
[LP] The Original Five Blind Boys of Mississippi "PRECIOUS MEMORIES" Peacock PLP102
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アンゴラの美メロ・マスター リル・サイント

Lil Saint NEW DAY.jpg

アンゴラのセフ・タンジーがすっかりお気に入りとなって、はや2か月。
センバやキゾンバといったアンゴラ色のまったくない、
北米R&Bマナーのシンガーなんですけれど、
スウィートな歌いっぷりに、聴けば聴くほど惹きつけられています。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-04-08

そんなところに、また一人、アンゴラの歌えるシンガーと出会っちゃいました。
リル・サイントことアントニオ・リスボア・サントスのセカンド作。
こちらはキゾンバのシンガーですけれど、歌は完全にR&Bマナーですね。

やるせなく歌うテナー・ヴォイスが、女子イチコロといったセクシーさで、
歌い上げると声がかすれるところも、たまりませんねえ。
作曲やプロデュースもほとんど一人で手がけていて、才能豊かな人です。
ルーサー・ヴァンドロス、ボビー・ウォーマック、タンク、タイリース、
ドネル・ジョーンズといったシンガーの影響を受けたというのが、
この人の音楽性をそのまんま説明していて、
アンゴラの美メロ・マスターと呼びたくなります。

経歴をみると、14歳の時に、留学先のオランダで学校の友人と音楽活動を始め、
ポルトガルへ移って、ヒップホップ・グループ、マフィア・スクワードを結成して活動、
その後ベルギーで実兄のC4・ペドロと落ちあって、
ブラザーズ・リスボア・サントスというデュオを組み、
その後アンゴラへ帰国してソロ活動をスタートさせたという、
若いながらもキャリアのある人です。

父親のリスボア・サントスがシンガーで、音楽一家に育ったんですね。
C4・ペドロもR&B色の強いキゾンバ・シンガーですけれど、
お兄さんの方がR&Bよりヒップホップ色が強いみたい。

それにしても謎なのは、7曲目のイントロに登場する楽器。
どう聴いても、タイのソーみたいな音なんだけど、
アンゴラにこんな胡弓みたいな楽器ってあったっけか?
サンプルなのかもしれませんが、妙に耳残りして気になります。

Lil Saint "NEW DAY" B26 Entretenimento/LS & Republicano no number (2017)
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ようやく注目されたセネガル人ジャズ・ギタリスト エルヴェ・サンブ

Herve Samb  TERANGA.jpg

取り上げるかどうか、ずっと迷っていたんですけど、
日本で先行発売されるという破格の扱いともなったので、
やっぱり書いておこうという気になりました。
セネガル出身のジャズ・ギタリスト、エルヴェ・サンブの新作。

エルヴェ・サンブは、デヴィッド・マレイ、ファラオ・サンダース、
パット・メセニー、マーカス・ミラーらと共演する一方、
アマドゥ&マリアムのバック・バンドでワールド・ツアーに同行し、
ウム・サンガレ、オマール・ペン、ジミー・クリフのバックを務めるなど、
パリとニュー・ヨークを行き来しながら活動するジャズ・ギタリストです。
最近は、ニーナ・シモンの娘のリサ・シモンのミュージカル・ディレクターを務めるほか、
ルワンダ/ウガンダ移民二世シンガー、ソミのバックなど、多方面で活躍していますね。

昨年日本でリリースされた新作は、久しぶりに故郷のセネガルに戻って、
地元のミュージシャンたちとダカールで録音したもので、
ゲストにファーダ・フレディ、若手女性シンガーのアジューザ、
元ハラムのヴェテラン・シンガー、スレイマン・フェイほか多数が参加しています。

特に驚いたのは、16年11月に亡くなったオーケストラ・バオバブの歌手、
ンジュガ・ジェンが参加していたことで、16年5月録音ということは、
これがおそらくンジュガ・ジェンのラスト・レコーディングだったはず。
この半年後に亡くなってしまうなんて、とても信じられないほど、元気に歌っています。

エルヴェはアクースティック・ギターを弾き、
サバールやタマによるセネガルの伝統的なリズムを生かした
オーガニックなサウンドに仕上げています。
エルヴェの卓越したギター・プレイも、十分魅力的なんですが、
ちょっとソツなくキレイにまとめすぎた感があって、物足りなかったんですね。

「マイ・ロマンス」や「酒とバラの日々」という選曲も、いかがなものかと。
現代の曲のようにリフレッシュメントしたアレンジは感心するんだけど、
どこか割り切れない思いがあって、取り上げるのをためらっていたんでした。

Herve Samb  CROSS OVER.jpg

誤解のないように言っておくと、エルヴェ・サンブというジャズ・ギタリストは、
ぼくはすごく買っていて、リオーネル・ルエケより、断然才能がある人とみなしています。
そう確信するのは、09年のデビュー作“CROSS OVER” が大傑作だったからで、
10年早すぎて、見過ごされた作品と思っています。

ヴァーノン・リード、ジャン=ポール・ブレリー、
ジェフ・リー・ジョンソンといった面々を思わせるギターに、
エルヴェのギターを豪快にプッシュするJ・T・ルイスのドラムスが痛快なアルバム。
ラップとスクラッチをフィーチャーしたクールなジャジー・ヒップホップに、
デヴィッド・マレイがブロウしまくる「アフロ・セントリック」と題されたトラック、
ソミのヴォーカルをフィーチャーして、
清廉なアクースティック・ギターを聞かせる曲もあれば、
セネガル人歌手を起用したンバラあり、ジミ・ヘンドリックスに捧げたロックもあるという、
その引き出しの多さが魅力となっていました。

Herve Samb  TIME TO FEEL.jpg

13年の2作目では、レジー・ワシントンのベースを迎えて
アクースティック寄りのヌケのいいクリーンなサウンドになるとともに、
M-BASEの影響色濃いギターを聞かせるコンテンポラリー・ジャズでした。

1・2作目がアフリカ人ジャズ・ギタリストとして出色の作品だっただけに、
こちらがまったく話題にもならず、この3作目が日本盤で出たのが素直に歓迎できず、
ちょっとヒネくれた反応をしてしまったんでした。
今からでも遅くないので、ぜひこの人に注目してもらいたいと思います。

ついでに、日本盤で「エルヴェ・サム」と表記しているのも、
エルヴェと共演したことのある、小沼ようすけのアルバム・クレジットの悪影響と思われ、
綴りどおり「サンブ」と書いてほしいと思います。

Herve Samb "TERENGA" Euleuk Vision no number (2017)
Herve Samb "CROSS OVER" Samb no number (2008)
Herve Samb "TIME TO FEEL" Such Production SUCH006 (2013)
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