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マイ・ベスト・アルバム 2017

Vijay Iyer Sextet  Far From Over.jpg   Tony Allen The Source.jpg
Meddy Gerville  TROPICAL RAIN.jpg   Orchestra Baobab  Tribute To Ndiouga Dieng.jpg
Tony Chasseur  LIVE - LAKOU LANMOU.jpg   20171105_André Vaz.jpg
U Tin  Rollers.jpg   May Thet Htar Swe  TAW PAN KALAY.jpg
Randy Newman Dark Matter.jpg   Don Bryant DON'T GIVE UP ON LOVE.jpg

Vijay Iyer Sextet "FAR FROM OVER" EMI ECM2581
Tony Allen "THE SOURCE" Blue Note 5768329
Meddy Gerville "TROPICAL RAIN" Dot Time DT9060
Orchestra Baobab "TRIBUTE TO NDIOUGA DIENG" World Circuit WCD092
Tony Chasseur "LIVE - LAKOU LANMOU : 30 ANOS DE CARRIÈRE À LA CIGALE" 3M - Mizik Moun Matinik CM2487
André Vaz "FADO" Todos Os Direitos Reservados 0530-2
U Tin "MUSIC OF BURMA VIRTUOSO OF BURMESE GUITAR -MAN YA PYI U TIN AND HIS BAMA GUITAR-" Rollers ROL004
May Thet Htar Swe "TAW PAN KALAY" Rai no number
Randy Newman "DARK MATTER" Nonesuch 558563-2
Don Bryant "DON’T GIVE UP ON LOVE" Fat Possum FP1607-2

3年連続の大豊作、そしてアフリカとジャズに尽きた一年でした。
ここ数年のアフリカの絶好調は相変わらずで、ここに選べなかったジュピテールや
ジェドゥ=ブレイ・アンボリー、ピエール・クウェンダーズも忘れられません。
90年代に死に絶えたと思っていたジャズが、多角的に展開しながら、
現代の音楽として蘇ったのを、これほど実感した年はありませんでした。
新人は、日本のRIRIとミャンマーのトーンナンディ。
今後どう成長していくのか、楽しみです。
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四半世紀ぶりのレゲエ ジェシー・ロイヤル

Jesse Royal  LILY OF DA VALLEY.jpg

珍しくレゲエの新作を気に入って、買ってきたんですが、
レコード・リストのデータベースに入力していて、自分でオドロいちゃいました。
なんと、レゲエの新作を買ったのは、23年ぶり。
え、えぇ~、そんなに疎遠になってたんだっけか。

データベースは、国別・年代別になっているんですけれど、
ジャマイカの2010年代は今回がお初。
2000年代は、アーネスティン・ラングリンがトニー・アレンと共演した
テラーク盤1枚のみなんだから、お粗末の極み。

そして90年代の最後に載っていたのが、
95年のダイアナ・キングの“TOUGHER THAN LOVE”なんだから、
自分でも笑っちゃう。あれはレゲエというより、ポップスだよねえ。
なんだか、レゲエ・ファンから石投げられそうだな。

そしてその前が、94年のドーン・ペンの“NO, NO, NO” と
ベレス・ハモンドの“IN CONTROL” なんだから、実質的にはこの時以来ってわけ。
それほどレゲエと縁遠くなっていたとは、われながら呆れるばかりなんですが、
ルーツ・レゲエがリヴァヴァルになっているなんてことも、ぜんぜん知らなかったのでした。

で、ジェシー・ロイヤル、その人であります。
新世代ルーツ・アンド・カルチャーの旗手として、すでに活動歴7年。
15年には日本ツアーもしているというのだから、
満を持しての初フル・アルバムなのですね。

四半世紀近くぶりに聴く、ルーツ・レゲエ・シンガー、いい歌いっぷりです。
声にアーシーな味があって、それでいて歌いぶりはなめらか。
これがデビュー・アルバムとは思えぬ、堂々たる存在感を示していますよ。
緻密に作られたプロダクションも、申し分なし。
これほどスキなく作られていると、もう少し破れたところが欲しい、
なんて注文を付けたくなるところなんだけど、そんな気にもならないのが、
レゲエ門外漢の耳にも届く、モノホンの説得力といえそうです。

Jesse Royal "LILY OF DA VALLEY" Easy Star ES1063 (2017)
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伝説のトロバドール シンド・ガライ

SINDO GARAY - DE LA TROVA UN CANTAR….jpg

シンド・ガライのリイシュー! こりゃ、事件だ。

19世紀末から20世紀にかけて、600曲ものカンシオーンを残した、
キューバ伝説のトロバドールです。
のちのソンやボレーロへ与えた影響も計り知れず、
101歳まで生き、キューバの民衆からこよなく愛された音楽家でした。
いまなお多くの歌手がシンド・ガライの曲を歌い継いでいるというのに、
ご本人の録音がまったく復刻されておらず、
ぼくも“Cualquier Flor” の1曲しか、聴いたことがありません。

2017年がシンド・ガライの生誕150周年にあたるということで、
記念作としてエグレム社から復刻された本作。
喜び勇んで飛びついたんですが、SP時代の復刻は2曲のみで、
ほかに晩年のプライヴェート録音が2曲収録、本人の演唱は4曲だけとなっています。

シンド・ガライのSP復刻集とばかり思ったので、当てが外れてしまいましたけど、
没後の70年代に制作されたトリビュート・アルバムから、
シンドの息子のグアリオネクス・ガライや、アドリアーノ・ロドリーゲス、
ドミニカ・ベルヘスがカヴァーしたシンドの曲が収録されています。

こうして聴いてみると、あらためてガライの曲の豊かな音楽性に感じ入ります。
その音楽の雑食ぶりは、いわゆる吟遊詩人のギター弾きという、
ぼんやりとしたトロバドールのイメージだけでは、到底くくれないものがあります。

SP録音を聴いてみれば、シンドの高度なギター・テクニックにまず驚かされるし、
歌の方も、高音部を担当する息子と低音部を担当するシンドの、
ハーモニーと呼ぶには自由すぎるというか、相手に合わせることに囚われない
その闊達ぶりに、キューバの美学を感じます。
「素朴」などという形容からはあまりに遠い、高度に洗練された音楽です。

19世紀末にトロバドールたちが歌っていた曲は、
芝居などの芸能にも、強く結び付いていたんじゃないでしょうか。
後年となる26年には、リタ・モンタネールと一緒に活動し、
パリ公演もしているほどですからね。

そんな痕跡を、男女二重唱のドゥオ・カブリサス=ファルチのハーモニーにも感じます。
白人系カンシオーンの典型といえる演唱でありつつ、
ソンに橋渡しされるリズム感覚を聴き取れる曲もありますよ。
マノロ・ムレットが歌う“La Baracoesa” にいたっては、
フィーリンそのものじゃないですか。

19世紀末のトロバドールたちが歌っていたカンシオーンは、
のちのソンやボレーロ、フィーリンなどに発展していく、
さまざまな養分をたたえていたんですね。

Sindo Garay, Adriano Rodeiguez, Dominica Vergas, Dúo Cabrisas-Farach, Manolo Mulet and others
"SINDO GARAY - DE LA TROVA UN CANTAR…" Egrem CD1517
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ポップスも健康志向で メーテッタースウェ

May Thet Htar Swe  TAW PAN KALAY.jpg

トーンナンディのデビュー作と一緒にミャンマーから届いたのが、
11月10日にリリースされたばかりのメーテッタースウェの新作『森の愛らしい花』。
うわーい、これはぼくにとって、最高のクリスマス・プレゼントです~♡

前作“APYOZIN” は、スライド・ギターやバンジョーをフィーチャーした、
ユニークなサウンドのポップ作でしたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-02-28
今作はバックを一新し、オープニングは、
タンズィンのカケラもないポップ・ロック・サウンドでスタートします。

人気ロック・シンガーのマナウとデュエットするキャッチーなナンバーで、
ヒット狙いなのか、これはこれですごくサマになっていますけれど、
メーテッタースウェほど伝統歌謡の天賦の才に恵まれた人が、
フツーのポップ・シンガーになっちゃうつもりなのかなあ。

なんて心配していたら、2曲目からは、ご安心。
メーテッタースウェなればこその、ミャンマー調ポップスにスイッチします。
バンジョー(たぶんサンプル)をフィーチャーした曲あり、
伝統楽器の笛や太鼓、サウンをカクシ味に使った曲あり、
ユーモラスな男性コーラスを配した曲ありで、
ミャンマーならではの唯一無比なポップスを聞かせてくれます。

前作は、シンセがサウンドを支配しすぎていて、うっとうしく感じましたが、
今作はそのあたりのバランスも、すっかり改善。
タンズィン調のメロディもポップなサウンドに無理なく溶け込み、
プロダクションもグンと向上したのを感じます。

そしてなにより、主役メーテッタースウェの歌い方が、吹っ切れましたね。
前作では、ポップなメロディに伝統歌謡の節回しをなじませるのに、
迷いを感じさせるところがありましたけれど、
今作ではのびのびと歌えているじゃないですか。歌いぶりにキレが増したのに加え、
声に落ち着きも出てきて、成長を感じさせますよ。

いやあ、なんだかマレイシアのシティ・ヌールハリザが登り坂だった
90年代末を、思い起こしちゃいますねえ。
シティ・ヌールハリザの名は、
マレイシアの伝統歌謡をリフレッシュメントした97年の“CINDAI” で、
広く知れ渡ったわけですけれど、その後、伝統歌謡とポップ作を交互に制作しながら、
00年代にグングン成長していったんですよね。

あの時のシティとメーテッタースウェが、ぼくにはダブってみえます。
シティの“CINDAI” がメーテッタースウェの“KAUNG CHIN MINGALAR” なら、
今回のポップ作は、シティの01年作“SAFA” に当たるように思えるんですよ。
シティ・ヌールハリザのファンだったら、この話通じると思うんですけれど、どうかなあ。

マレイ・ポップスとミャンマー・ポップスとでは、だいぶ違いがありますけれど、
世界を見渡しても、こんなに朗らかで健康なポップスは、
ミャンマーをおいてほかにありません。
毒のないポップスなんて、とお思いのムキもありましょうが、 
カッティング・エッジなんて価値観とは、
正反対のポップスがここには存在するのですよ。

May Thet Htar Swe "TAW PAN KALAY" Rai no number (2017)
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ミャンマー伝統歌謡の新星少女歌手 トーンナンディ

Thone Nandi  YIN TWIN SU.jpg

メーテッタースウェ、キンポーパンチに続いて、
ミャンマー伝統歌謡の新人少女歌手が、またまた登場しましたよ。
その名は、トーンナンディ。
珍しい名前だなと思ったら、「トーン」は「クイーン」を意味する名前だとか。
「クイーン・アイダ」みたいな、芸能人ならではのネーミングのよう。
まだ子供なのに、ずいぶんと背伸びした芸名を付けたもんです。

ヤンゴンのCD屋のオヤジは、「ハタチ」だとか言って売っているそうですが、
んなわけないでしょう。どう見たって、メーテッタースウェより年下、
12歳くらいじゃないですか。じっさいのところ、いくつなんだろう?
そうだ、フェイスブックで友達の(←自慢)キンポーパンチに訊いてみよう。

というわけで、メッセージでCDの画像を送ったら、
なんとキンポーパンチは、“Who is she?”だって。
へ? 知らないの? まさか! 
てっきり、「トーンナンディとは、一緒によくステージに立っているのよ」なんて答えが
返ってくるとばかり思っていたので、意外や意外。同業者なのに、ホントに知らんのか?

ネットで検索しても、本人のフェイスブック以外に情報が見当たらないんですが、
なんと彼女のフェイスブックは、13万人がフォローしています(驚)。
あれ? キンポーパンチも「いいね」してるじゃん。
おいおい、と思っていたら、
キンポーパンチと並んでステージに立っているライヴ動画まで見つけちゃいました。
何がWho is she? だよ、ライヴァル心を燃やして、向こうを張ってるってか。

結局年齢はわからずじまいなんですが、
フェイスブックには学校の成績表の画像も載っているので、
ミャンマー語が読めれば、年次とかで年齢がわかりそうなんですけれども。
でも、なんでミャンマーのコって、メーテッタースウェもそうだけれど、
成績表をフェイスブックに載せるんだろうね。

以前、キンポーパンチとメーテッタースウェともっと幼い少女の3人で
ステージに立っている写真が、フェイスブックによくアップされていましたが、
トーンナンディは、そのコとは別人のようです。
う~ん、ミャンマー伝統歌謡の少女歌手は、層が厚いな。

ステージ用にばっちりメイクした写真は、年齢不詳ですが、
普段着姿を見る限り、まだ小学生のように見えます。
Youtubeに上がっている映像を見ると、年配の先生に指導を受けている様子や、
ステージ・ママらしきご婦人と一緒のところ、
はたまた、もっと幼い5・6歳くらいの頃のコンテストらしきテレビ映像などがあって、
幼少の頃から伝統歌謡をしっかり修養してきたことがわかります。

そして今年の9月28日、満を持してリリースした本デビュー作。
タイトルは、「心の中の願い」の意。
CDリリースにあわせて、ヤンゴンのオーキッド・ホテルでセレモニーが行われ、
その時の動画も、フェイスブックに上がっています。

オープニングのみ、シンセ伴奏のポップ曲で、
あとはサイン・ワイン楽団にヴァイオリンとキーボードが加わった、
古典歌謡のタチンジーで、4曲目とラスト10曲目のみ、
歌謡調メロディが入り混じるミャンマータンズィンとなっています。
トーンナンディの華のある声が、いいですねえ。
この声、ソーサーダトンやメーテッタースウェに通じる才能ですよ。
よくコントロールされた発声と、鍛えられたこぶし回しがまた見事。
このコは大器、間違いありません。

CDはソフト・ケースでなくジュエル・ケースで、
ジャケットやバック・インレイの印刷も美麗。
個人的なお気に入りは、表紙写真の額縁の左右に吊されている
ヨウッテー・ポエー(ミャンマーの糸操り人形劇)の人形。
そういえば、キンポーパンチのバック・インレイにもあったっけな。
伝統工芸の人形好きには、嬉しい演出であります。

Thone Nandi "YIN TWIN SU" May no number (2017)
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現代レンベーティカの最高峰 カテリーナ・ツィリドゥ

Katerina Tsiridou  AMAN KATERINA  A TRIBUTE TO PANAYIOTIS TOUNDAS.jpg   Katerina Tsiridou  OPOU KI AN EISAI GURISE.jpg

うわぁぁ、ハードボイルドだぞぉ。こりゃ、たまらん。

レンベーティカにこだわって歌い続けるヴェテラン女性歌手、
カテリーナ・ツィリドゥの新作、これは話題を呼びそうですね。
今回はスミルナ派を代表する作曲家、
パナギオーティス・トゥンダス(1886-1942)の作品集ですよ。

マルコス・ヴァンヴァカリスやヴァシリス・ツィツァーニスなど、
20世紀初頭のスミルナ派のレンベーティカを歌ったカテリーナの前作
“OPOU KI AN EISAI GURISE” も素晴らしかったんですけれど、
今作はパナギオーティス・トゥンダスの作品とあって、
さらにディープさを増して、現代レンベーティカの最高峰じゃないですか、これ。

生粋のスミルナっ子のパナギオーティスは、幼い頃からマンドリンを弾き歌い、
のちにエジプトで古典音楽も学んだ、スミルナ派きっての教養高い音楽家。
トルコとの住民交換後にピレウスへ移り、
24年にオデオン社ギリシャ支社のディレクターとなって、
数多くのレンベーティカを録音しました。
31年になるとコロンビアとHMVの音楽監督に迎え入れられ、
40年までに350曲以上の歌を残したといいます。
ローザ・エスケナージを見出したのも、パナギオーティスだったんですよ。

ブズーキ、バグラマー、カーヌーン、ヴァイオリン、チェロの弦楽器に、
アコーディオンとパーカッションを加えた、伝統的なレンベーティカのサウンドにのせ、
甘さを排したカテリーナの芯のある歌声がキリリとしていて、胸をすきます。
期待の若手女性歌手アレッティ・ケティメもサントゥールで参加していて、
1曲歌を歌っているのも、聴きどころ。
カテリーナの歌の合間にアレッティの声を聞くと、
なんとも可愛らしいというか、チャーミングですねえ。

かつてローザ・エスケナージが歌った、
パナギオーティスの代表曲“Chariklaki” はじめ、
無頼な味わいを色濃く残す、これぞ地中海のブルースといった、
パナギオーティス・トゥンダスのレンベーティカを堪能できる傑作です。

Katerina Tsiridou "AMAN KATERINA : A TRIBUTE TO PANAYIOTIS TOUNDAS" Protasis Music PR1173-2 (2016)
Katerina Tsiridou "OPOU KI AN EISAI GURISE" Protasis Music PR1157-2 (2012)
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イングランド南部ウィルトシャーから ロージー・フッド

Rosie Hood  THE BEAUTIFUL & THE ACTUAL.jpg

ジャケットには、ずいぶん昔に撮られたご婦人ふうの写真が載っていますけれど、
じっさいのロージー・フッドは、まだ若い英国の女性歌手。
これがデビュー作になります。

イングランド南部ウィルトシャー出身の人で、
地元ウィルトシャーに残された伝承歌を掘り起こし、
自作の曲をつけて歌っている人だそう。
第一次世界大戦前に、ウィルトシャー出身の詩人で
歴史家のアルフレッド・ウィリアムズが、多くの民謡を採集して
それらをまとめた本を23年に出版していて、
その本から多くの曲がレパートリーに選ばれています。
このデビュー作のタイトルも、その本の冒頭の一文から、採られたものなんですね。

きりりとした発声が、いかにもイングランドらしくて、すがすがしいじゃないですか。
その真摯な歌いぶりに、デビュー作らしいほどよい緊張感が溢れていて、
聴いているこちらの背も伸びます。

ロージー自身が弾くテナー・ギターとフィドルのほか、
メロディオンだけを伴奏に歌った曲や、ベースのみで歌った曲など、
曲に合わせて、もっとも効果のある楽器を選び抜いて歌っているところが良く、
これ以上引き算できない、シンプルな伴奏が、歌を鮮やかに引き立てています。

冒頭1曲目の通奏低音のように響くサウンドは、
てっきりシンセが作っているものと思ったら、
ラップ・スティールとベースとフィドルで出していると知り、すっかり感心。
こういうアイディアを目の当たりにすると、安易にシンセを使って、
ケルト・サウンド一丁上がり式なプロダクションが恥ずかしくなりますね。

ほかに、エミリー・ポートマンと2曲デュエットしているのも聴きものなんですが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-04-12
無伴奏で歌った“The Cruel Mother” での二人のハーモニーは、
アルバムのハイライトとなっています。

Rosie Hood "THE BEAUTIFUL & THE ACTUAL" Rootbeat RBRCD36 (2016)
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リルティングの魅力 ジュリー・ファウリス

Julie Fowlis  ALTERUM.jpg

3年ぶりに届いたジュリー・ファウリスの新作。
スコットランドの女性ガーリック・シンガーで、ぼくのいっちばん好きな人。
i の母音を発声する時のチャーミングさは、この人を凌ぐ女性歌手はいません。
ジュリーの声を聴いているだけで、幸せになれるんですよ。
ほんとにこればっかりは、相性ですよねえ。

前作“GACH SGEUL - EVERY STORY” が出たさいに、
「大人への階段を上った新作」という記事を書きましたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-04-03
あのあと、ジュリーは二人の娘がいるお母さんだということを知りました。
えぇ~、それじゃあ、「大人への階段を上った」もなにもあったもんじゃないなあ。

ジュリーが結婚していたことすら知らなかったので、びっくりだったんですが、
ご主人はアイリッシュの人気バンド、ダヌーのエイモン・ドアリーだそう。
ジュリーのアルバムにいつもブズーキ奏者として参加していた音楽パートナーで、
07年に結婚、10年に長女を、12年に次女を出産していたとのこと。
いやあ、知りませんでした。

デビューまもなくの、十代の歌声としか思えない若々しい印象があまりにも強くって、
いつまでも二十代みたいなイメージが抜けなかったんですけれど、
実は今年ですでに三十代終わりの歳なんですね。
このみずみずしい声を聴いていると、そんな感じがまったくしません。

今作も、ガーリック・シンガーとして着実な歩みを進めたことを実感させる充実作で、
軽やかなダンス・チューンから、メランコリックなラメントや清涼なバラッドまで、
どんなレパートリーでも、それぞれにふさわしい表現と奥行きを持って歌っています。
初めて取り上げた英語曲、アン・ブリッグスとアーチー・フィッシャーの2曲が
話題を呼びそうですけれど、ぼくにとって一番魅力なのは、
愛らしいリルティングを聞かせてくれる“Thèid Mi Do Loch Àlainn”。

リルティングは、ジュリーの生まれ故郷、
北ユーイスト島でも盛んなアウター・ヘブリディーズ特産の毛織物ツイードを、
叩いたりひっぱたりする作業で歌われる労働歌のウォウキング・ソングでよく使われますね。
一種のマウス・ミュージックのようなものですけれど、リルティングが好きなもので、
ウォウキング・ソングも大好物なんであります。
ウォウキング・ソングは、カパーケリーが現代化して再生し、
カパーケリー登場以降、ハイランドの重要なレパートリーとなりました。

音符が弾むジュリーの声で歌われるリルティングは格別。
1音1音エッジが立ったアーティキュレーション、スタッカートの利いた発声は、
ジュリーの真骨頂です。

Julie Fowlis "ALTERUM" Machair MACH008 (2017)
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人生の宿命を受け入れた歌声 サラ・タヴァレス

Sara Tavares  FITXADU.jpg

“XINTI” から8年。
新作リリースのニュースに、首を長くして待っておりました。

サラ・タヴァレスは、かつてぼくが溺愛した女性シンガー・ソングライター。
リスボン育ちのカーボ・ヴェルデ移民二世ならではの洗練された音楽性を備えた、
オーガニックなクレオール・ミュージックを聞かせる人です。

“BALANCÊ” と“XINTI” を、いったい何百回聴いたことか。
2つのアルバムに刻み込まれたサラのチャーミングな歌い口は、
かすかな息づかいさえ、ぼくの脳裏にくっきりと染みついて、
これって、ほぼ恋愛感情みたいなもんじゃないかとさえ思います。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-08-03

それにしても、なぜ8年もの長いブランクがあったんでしょう。
なんとサラは“XINTI” 発表後のツアーで脳腫瘍を発症して手術を受け、
一時は歌手生命を断念する深刻な事態にあったのだとか。
そんなことがあったとはツユ知らず、
無事復帰して新作を出すことができたのは、本当に、本当に良かったです。

で、待ちわびた新作なんですが、けだるい歌声が冒頭から流れてきて、ガクゼン。
暗いトーンが支配するその歌声は、まるで別人です。
かつてのコケティッシュな表情など、どこにも見当たりません。
わずか30の若さで、死をも覚悟せざるを得ない絶望を体験したことが、
サラの歌声をすっかり変えてしまったようです。

哀しみを宿して、苦みの加わった歌声に、正直戸惑いは隠せませんでしたけれど、
何度も聞き返すうちに、最初のショックも次第に和らいでいき、
サラの変わらぬ作風であるソダーデ溢れるセンチメントなメロディに、
避けられない宿命を静かに受け入れた者の諦念を感じ、はっとさせられました。

本作は、曲ごとにサラの音楽性に合ったゲストや共作者を
PALOP(ポルトガル語圏アフリカ)・コネクションから迎え、丁寧に制作されています。
サラのルーツであるカーボ・ヴェルデからは、ナンシー・ヴィエイラが参加し、
“Ginga” をサラと共作しています。
ギネア=ビサウからは、才人のマネーカス・コスタがギターとベースで参加、
“Coisas Bunitas” ではスキャットも披露しています。

そしてアンゴラからは、大物シンガー・ソングライターのパウロ・フローレスが参加。
本アルバムの中では異色のアフロビートにアレンジした“Fitxadu Flutuar” で
サラと詞を共作し、一緒に歌っています。
このほかアンゴラ勢では、ぼくが注目しているトッティ・サメドを起用。
トッティ・サメドは、配信リリースのみのデビューEPを出したばかりの新人で、
“Brincar De Casamento” をサラと共作し、一緒に歌っています。
ここには収録されていませんが、トッティ・サメドのギター伴奏で、
ボブ・マーリーの“Waiting In Vain” を一緒に歌っている動画が、
Youtube に上がっていますよ。

エレクトロやプログラミングを加えつつも、
生演奏を生かしたデリケイトなプロダクションが、
とてもいいディレクションとなっているし、
フナナーなどカーボ・ヴェルデのリズムを、
これまでになくさりげなく取り入れているところも、とても好感が持てるアルバムです。

死に直面し、絶望の淵に立たされたサラが、
その歌声に憂いの表情をまとうようになったのも、
人生を深く捉え直し、内面を成長させた結果なのだと、今は前向きに受け取っています。

【蛇足的追記】
本作は、ジュエル・ケース入りの通常版と、
“Coisas Bunitas” のリミックスがボーナスで追加された、紙ジャケ仕様限定版があります。
せっかくなので、限定版をオーダーしたんですけれども、
中身は通常版ディスクの紙ジャケ盤が届き、ただいま業者に問い合わせ中(泣)。

Sara Tavares "FITXADU" Sony Music Entertainment 88985490712 (2017)
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インドネシアのパワー・ロック トーパティ・ブルティガ

Tohpati Bertiga  Faces.jpg

凍てつく冬の朝はロックだ!

なんて、ガラにもないことを言ってますが、
ここ半年ほど、朝のウォーキングの友が、ずっとジャズのアルバムだったもんで、
ロックにスイッチすると、すごく新鮮に響くんですよねえ。
ロックといっても、インストのアルバムなんでありますが。

そのアルバムは、脚光を集めるインドネシアのギタリスト、
トーパティ率いるトーパティ・ブルティガの新作。
トーパティといえば、昨年トーパティ・エスノミッション名義のアルバムにブッとんだのが、
まだ記憶に新しいところですけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-07
今作も、実にフッ切れた爽快なロック・サウンドを聞かせてくれて、カイカン。
いやあ、トーパティ、エネルギーありますねえ。

トーパティ・ブルティガは、インドロ・ハルジョディコロのベース、
ボウイことアディテョ・ウィボウォのドラムスとのトリオ編成。
トーパティのギターは、ソロ・パート、リズム・カッティング、バッキング・リフで
異なるカラーのサウンドをはじき出し、トップ、ミドル、ボトムそれぞれに、
厚みのあるサウンドを作り出しています。

楽曲作りも巧みで、次々と転調しながら、リズムもスイッチしていく
息つかせぬダイナミックな展開には、ドキドキしますよ。
こういうスリルは、ロックの醍醐味ですよねえ。

パワフルに押しまくるソリッドなサウンドは、徹頭徹尾ロックで、
フュージョンのセンスは皆無。
曲はポップでも、メロウでもなけりゃ、ソフトでもないし、アーバンでもありません。
ジャズ的なフレージングはほとんど使われないし、
かといって、ブルースぽいニュアンスもなく、
ジェフ・ベックに通じる正統派ロックといえます。

Tohpati Bertiga "FACES" Demajors no number (2017)
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ロウ・テープス・オール・スターズ エコー

Echo  CALLING ON WONDERS.jpg

バターリング・トリオよりマイっちゃったのが、こっち。
エコーという女性歌手/ラッパーのソロ・アルバムなんですが、
こちらは、ロウ・テープスのオール・スターがずらり勢揃い。
多士済々の面々がプロデュースするサウンドのハイブリッドぶりが、スゴい。

まず、ヤられたのが2曲目の“Come Sit With Us”。
レコードのチリ・ノイズの奥から聞こえてくるのは、なんとフェイルーズの歌声。
いやあ、ドキリとさせられますねえ。
サンプルされたその歌声の神秘なことといったら。やっぱフェイルーズは、マジックだわ。
この曲のプロデュースは、レーベル主宰のプロデューサーでビートメイカーのリジョイサー。
う~ん、さすがだわ。

本作は、プログラミングされたトラックとドラムスが生演奏するトラックが、
違和感なくシームレスに繋がっていくところが、最大の聴きどころ。

ジャズ・ドラマーのアヴィヴ・コーエンが3曲フィーチャーされているとおり、
細分化されたビート感やスモーキーなサウンド・メイクは、
イマドキのジャズのセンスそのもの。
アヴァイシャイ・コーエンと一緒にやっていたアミール・ブレスラーのドラムスや、
セフィ・ジスリングのトランペットなどの生演奏に加え、
ヒップホップのリズム感が生かされていて、この音づくりの巧みさは、ただごとじゃない。

ヒップホップ、ジャズ、ビート・ミュージックなど、欧米の最先端トレンドとリンクしつつ、
イスラエルの独自性をしっかりと発揮する若い才能が、見事に開花した作品。
こりゃあ、ロウ・テープスから、しばらく目が離せなくなりそうですねえ。

Echo "CALLING ON WONDERS" Raw Tapes no number (2016)
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テル・アヴィヴ新時代 バターリング・トリオ

Buttering Trio  THREESOME.jpg

『ミュージック・マガジン』12月号のイスラエル音楽特集記事に触発されて、
紹介されていたディスクを、ネットでいろいろ試聴していたところ、
ロウ・テープスという新興インディの作品が、やたらと面白い。
ただ残念なのは、カタログは70作品以上あるのに、
フィジカルになっているものが少ないこと。
とりあえずCDで出ている作品を、いくつかオーダーしてみました。

まずは、レーベルを主宰するリジョイサーことユヴァル・ハヴキンを擁する
バターリング・トリオの16年最新作。
すでに今年の春、日本盤でもリリースされた人気盤であります。

「イスラエルのハイエータス・カイヨーテ」という前評判もナットクの音楽性で、
「フューチャー・ソウル」なるヤスっぽいネーミングは、
雲散霧消したかつてのフューチャー・ジャズを思い出させ、気乗りはしませんが、
なるほど、そんな感じのバンドではありますね。

エレピとシンセがレイヤーするサウンドや、
ヴォーカル・ハーモニーが生み出すサウンドの浮遊感は、
ムーンチャイルドも連想させます。
女1・男2というフォーマットも同じなら、女性が歌とサックスを担当しているのも、
ムーンチャイルドとおんなじで、偶然にしても面白いですね。
メルボルンとLAとテル・アヴィヴが共振しているような、そんな時代なんですねえ。

9月に観たムーンチャイルドのライヴでは、ドラムスが起用されていましたけれど、
こちらはプログラミングが基本で、ヴォーカルや鍵盤がハーモニーを作り出し、
ベースがグルーヴを生み出すというより、
歌心豊かなメロディ・ラインを残すところが面白い。
スキマだらけの空間を、サックスが一筆書きのように吹き流すのも印象的です。
サウンドの組み立てがムーンチャイルドほど洗練に向かわず、適度にラフで、
時にサイケな感覚が横断するなど、引き出しはかなり持ってそう。

ネオ・ソウルな感触はあっても、ブラック・ミュージックの要素はなく、
ビート・ミュージックとジャズのセンスが、すごくイマっぽい。
インド音楽やレゲエの取り入れ方も自然で、
音楽の参照の仕方に、力みがないところがいいな。
気付くのが遅すぎて、10月の来日を観れなかったのが、残念であります。

Buttering Trio "THREESOME" Raw Tapes no number (2016)
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サンバ・ジャム・グルーヴ ガブリエル・モウラ

Gabriel Moura  QUEM NÃO SE MEXER VAI DANÇAR.jpg

うわぉ! ガブリエル・モウラの新作。
ブルーのバックに、ど派手なファッションでポーズをキめたジャケットに、即買い。
中央にどーんとでっかく名前をレタリングしたデザインも、キマってます。
サンバ・ソウルのジャケットは、こうでなくっちゃ、ね。

ここんところ、サンバ・ソウルの良作に出会えないなあと、ボヤいていたところ、
サンダリア・ジ・プラッタの6曲入りミニ・アルバムが良かったので、
これを取り上げようと思っていたところだったんですけどね。
ガブリエル・モウラの新作が届いたとあっては、
何を置いても、これをまず紹介しなくっちゃねえ。

ガブリエル・モウラについては、もう説明不要ですよね。
かつてセウ・ジョルジやロジェーとファロファ・カリオカで活躍した、
サンバ・ソウルのヴェテランであります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-01-26
今作では大物プロデューサー、リミーニャを迎え、
生音のホーンズもたっぷり、
80年代ディスコの祝祭感もいっぱいなサウンドが炸裂します。

メジャー感いっぱいのプロダクションに、
レーベルはユニヴァーサルかWEAかと思えば、なんと、ビスコイト・フィーノ。
えぇ? なんかイメージが狂いますねえ。
インテリ向けの知的な作品を出すビスコイト・フィーノが、
こんな大衆味溢れたポップ・アルバムを出すとは。
リミーニャがプロデュースしたビスコイト・フィーノ作品なんて、これまであったっけか。

リミーニャが辣腕をふるうと、やっぱ違うと思わせるのが、ベース・ライン。
直接リミーニャがシンセ・ベースを弾いている曲もあるものの、自身が弾いていなくても、
アレンジで口出ししているに違いないとおぼしきベース・ラインがそこかしこに。
ジェリー・ジェモットばりのグルーヴ溢れるラスト・トラックなど、
背中ゾクゾク、踊らずにはおれません。

Gabriel Moura "QUEM NÃO SE MEXER VAI DANÇAR" Biscoito Fino BF501-2 (2017)
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美人妻にボレーロを歌わせて トゥイ・ティエン

Thuỷ Tiên  ĐÔI MẮT NGƯƠI XƯA.jpg

すんばらし。

1曲目を聴き終え、タメ息がもれました。
ヴァイオリンがむせび泣くイントロから、
滑り出すように歌い始めるトゥイ・ティエンの歌い口に、はや降参です。
レー・クエンによって、すっかりヴェトナム歌謡の一大潮流となった、
ボレーロ(ヴェトナム戦争前の抒情歌謡)の新作であります。
変形横長ジャケット内には、トゥイ・ティエンのブロマイドが3枚入っていて、
経年劣化したふうのデザインが、いかにもボレーロらしい演出となっています。

トゥイ・ティエンというこの女性歌手、はじめて知りましたが、
85年生まれ、南部メコン・デルタのタイランド湾に面する
港湾都市ラック・ザーの出身とのこと。
モデルで女優でもあり、コンサドーレ札幌でプレーした経験を持つ、
元ヴェトナム代表のサッカー選手レー・コン・ヴィンと、14年に結婚しています。

トゥイ・ティエンは、おもにバラードを歌うポップ・シンガーで、
時にEDM歌謡なども歌うアイドル的存在だったようですが、
夫になったレー・コー・ヴィンが大のボレーロ好きで、
トゥイ・ティエンに、ボレーロを歌うことを強く薦めたんだそうです。

本人は、大人向けの歌手へ転身する自信がなく、
ボレーロを歌うことに相当抵抗を示したようなんですが、
制作に3年を費やし、レー・コン・ヴィンが選曲やアレンジの助言もして、
完成にこぎつけたのが本作とのこと。
ジャケット裏には、レー・コン・ヴィンの名がエディターとしてクレジットされています。

しっとりとした情感のある歌い口で、丁寧にメロディを織り上げ、
ゆらぐヴィブラート使いも美しく、いい歌いぶりじゃないですか。
自信がなかったといいますが、見事な歌いぶりです。
また、佳曲揃いのレパートリーもいいですねえ。
レー・コー・ヴィンの選曲、シュミ合うなあ。
美人の奥さんに自分の好きな歌を歌わせるなんざ、男の夢ですな。

Thuỷ Tiên "ĐÔI MẮT NGƯƠI XƯA" Bến Thành no number (2017)
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春霞に溶けていく歌声 アンディエン

Andien  METAMORFOSA.jpg   Andien  KINANTI.jpg

15年ぶりのアンディエン。

もうお母さんになったんだって?
結婚していたことも知りませんでした。
いやあ、歳月は流れるだなあ。
まるでお子ちゃまなアイドル・ルックスのCD表紙に、
買うのをためらったのが、ついこの前のよう。

16歳当時の02年作“KINANTI” には、心底驚かされました。
インドネシアの天才少女という評判に、CDを手に取ってみれば、
幼児タレントか?てな写真にゲンナリ。
裏ジャケットの、ショートパンツにタンクトップ姿で唇かんだポーズもカンベンつーか、
ジャリ・タレだの、ロリータ趣味だのに、ムシズが走る性分なもので、
こんなん金出して買うの、ヤダなあとか思ったよなあ。

で、その表紙写真からは到底想像がつかない、しっとりとした歌声と、
都会的で洗練されたプロダクションのハイ・レヴェルぶりにノックアウト。
ほんとに、このコが、これ歌ってんの!? 別人でしょ、これ。
その落ち着き払った歌声に、びっくりしました。
ティーン特有のはしゃいだ感じなど、どこにもありません。

背伸びして、大人びた歌い方をしているというのとも違って、
発声じたいが柔らかく、破綻しない一定のトーンを、ずっと保っているんですね。
霞がかった声で、声が前に出ることがないので、
それが余計落ち着いた雰囲気を漂わせます。
アップ・テンポの曲でも、華やいだりしないので、声がキンキンすることも皆無、
10代らしからぬ歌いぶりは、この人独自の個性でした。

歌い回しに、シーラ・マジッドの影響も感じさせますが、
ハイ・トーンにオキャンな感じもにじみ出るシーラとは、だいぶ印象が異なります。
ジャジーなプロダクションにのる、どこまでも柔らかく、こもった歌声は、
極上のAORを演出するのにうってつけな癒し系ヴォーカルで、
おそるべき16歳!と驚嘆しました。

あれから15年。
あいかわらず、もやあっとした声をしてますねえ。
02年作のジャケットとナカミのチグハグぶりと違って、
ジャケットの淡いブルーが、アンディエンらしさをよく表わしています。
早熟すぎた歌声が、ようやく実年齢に追いついたというか、
歌声と外見に違和感がなくなったのをおぼえます。

イントロとアウトロでペロッグ音階が飛び出すのは、
おやっと思わせる演出ですけれど、これも大人になった余裕でしょうか。
ちらっと最後に出てくる赤ちゃんの声は、アンディエンの子供なのかな。
しなやかなプロダクションによくなじむ慈愛に満ちた歌声から、
母アンディエンの今がよく伝わってきます。

Andien "METAMORFOSA" Demajors no number (2017)
Andien "KINANTI" WEA 0297-45336-2 (2002)
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議論はやめ!!! 汚せ!!! 汚せ!!! 脅せ!!! 脅せ!!! オルケストル・レ・マンゲレパ

Orchestre Les Mangalepa  LAST BAND STANDING.jpg

アフリカのヴェテラン・バンドが、またひとつ復活!
今度はケニヤのマンゲレパですよ。
う~ん、懐かしいですねえ。

36年前、今はなき、高円寺の輸入レコード・ショップ、アミナダブで、
はじめて手にしたケニヤ直輸入のレコードのジャケットを、
クンクンと嗅いだことを、思い出しますねえ。
あの時匂いを嗅いだマンゲレバのLP2枚を、棚から取り出してきましたが、
さすがにケニヤの匂いは、もうしなくなっちゃったなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-03-23

Orchestre Les Mangelepa_913.jpg   Orchestre Les Mangelepa_921.jpg

マンゲレパは、当時のザイール、現在のコンゴ民主共和国の
東部の都市ルブンバシからケニヤのナイロビへ出稼ぎにきたバンドで、
ナイロビを拠点に東アフリカ各国を回り、活動していました。

オープニングから、懐かしいアニマシオン(かけ声)が聞こえてきますよ。
♪チャッフア! チャッフア、チャッフア!♪ ♪シトゥカ! シトゥカ、シトゥカ!♪
印象的なアニマシオンがそのまんまタイトルとなった80年作
“AMUA!!! CHAFUA!!! CHAFUA!!! SHITUKA-SHITUKA” の収録曲
“Kanemo” が再演されていて、いきなり頬がゆるんじゃいました。

ほかにも、この80年作からもう1曲再演されているほか、
先に掲げた78年作の『1周年記念作』からは、4曲中3曲が再演されています。
13年に亡くなったウィリアム・ンタンブウェ・キマケサが
ベースとクレジットされているので、レコーディングは13年以前ということですか。

ちなみに、ウィリアムの後任のベーシスト、
ジュマ・カチェングも16年に亡くなっています。
どういうわけだか録音年月のクレジットがなくて、
リリースまで4年以上かかっていることを、隠してるふうなのは、どういうわけ?

アニマシオンのアグレッシヴさはさすがにないけど、
涼しげなハーモニーやみずみずしいグルーヴは、70年代そのまま。
ヴォーカルが口ずさむフレーズやアニマシオンを、ベースがマネしてなぞるという、
マンゲレパお約束の掛け合いもきっちり再現していて(“Malawi Zikomo”)、
懐かしさでいっぱいになりました。

Orchestre Les Mangalepa "LAST BAND STANDING" Strut STRUT159CD (2017)
[LP] Orchestre Les Mangelepa "1ST ANNIVERSARY ALBUM" ASL ASLP913 (1978)
[LP] Orchestre Les Mangelepa "AMUA!!! CHAFUA!!! CHAFUA!!! SHITUKA-SHITUKA" ASL ASLP921 (1980)
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