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アラブ式オペラを開拓したアラブ歌劇場のパイオニア サラマ・ヒジャズィ

Salāma Ḥigāzī  PIONEER OF THE ARAB MUSICAL THEATRE.jpg

レバノンのアラブ音楽保存調査財団AMARから新作が届きました。
今回も、アラブの文芸復興運動ナフダが盛り上がった、
19世紀後半から20世紀初頭のエジプトで活躍した歌手の復刻で、
サラマ・ヒジャズィ(1852-1917)の3枚組になります。

エジプト古典歌謡のアーカイヴというと、アラブ近代歌謡の道を拓いた
サイード・ダルウィッシュ(1892-1923)までは容易にさかのぼれても、
それ以前の歌手の録音となると、なかなか耳にすることができず、
かろうじてぼくが長年頼りにしてきたのが、87年にオコラが出した
“ARCHIVES DE LA MUSIQUE ARABE VOL.1” でした。

ARCHIVES DE LA MUSIQUE ARABE VOL.1  Ocora.jpg

これまでAMARが復刻したアブドゥル・ハイ・ヒルミや
ユースフ・アル・マンヤーラウィも、このオコラ盤にはちゃんと収録されていて、
今回のサラマ・ヒジャズィも収録されています。
今あげた3人の単独復刻は、AMARが初ではなく、
90年にクラブ・デュ・ディスク・アラブAAAが出していましたけれど、ぼくは未入手。
AAAのムハンマド・アブドゥル・ワッハーブやウム・クルスームあたりは
買いましたけど、それ以前の歌手にまではとても手が回りませんでした。

さて、今回も充実した解説が付いていて、それによるとサラマ・ヒジャズィは、
ムアッジン(コーラン詠み)から世俗歌手に転向した人だということが書かれています。
のちに劇団に歌手として引き抜かれて歌劇と深い関わりを持ち、
エジプトからシリアやチュニジアまで巡業して名声を高め、
歌劇場のパイオニアという役割を担った人だったんですね。

のちにサイード・ダルウィッシュが、
近代歌謡の旗手として短い生涯にもかかわらず名声を残せたのも、
サラマ・ヒジャズィが西洋近代化の波が押し寄せたエジプトで、
歌劇場という場をアラブ古典音楽の実験場として切り拓き、
アラブ式オペラを開拓した前史があったからこそだったんですね。

歌劇場からアラブ大衆歌謡の基礎はスタートして、
のちにレコード、ラジオ、映画というメディアの発達によって、
近代アラブ音楽の黄金時代を迎えることとなるわけですけれど、
そのまさに出発点といえるのが、本作に収録された録音ということになります。

音源は、ドイツのオデオン社によって1905年から1911年にかけて
録音された50枚以上のSPで、組ものの長編の曲も収録されています。
音質はかなり貧弱とはいえ、サラマ・ヒジャズィの歌声は、
アブドゥル・ハイ・ヒルミにも通じるナマナマしさがあり、
ヒジャズィの歌劇を観覧した当時の人々が、
物語のあらすじや俳優の演技よりも、ヒジャズィの歌を聴きに行ったというのも、
なるほどとうなずける、メリスマの技巧も鮮やかな歌声を堪能できます。

Salāma Ḥigāzī "PIONEER OF THE ARAB MUSICAL THEATRE" Arab Music Archiving & Research Foundation P1131193
Muhyiddin Ba Yun, Muhammad Al-Ashiq, Yusuf Al-Manyalawi, Ali Abd Al-Bari, Salama Higazi, Abd Al-Havy Hilmi and others "ARCHIVES DE LA MUSIQUE ARABE VOL.1" Ocora C558678
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