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おばあちゃん子のヌーラ・ミント・セイマリ

Noura Mint Seymali_Tzenni.jpg   Noura Mint Seymali_Arbina.jpg

この夏来日した、モーリタニアの女性グリオ、ヌーラ・ミント・セイマリに取材して、
ムーア音楽の旋法体系を、大づかみながら理解できたのは、大収穫でした。

これまでムーアのグリオの古典的名盤であるオコラ盤の解説や、
ポール・コラール/ユルゲン・エルスナー著『人間と音楽の歴史 北アフリカ』などで、
ムーア音楽の旋法の基礎知識はあったものの、
資料ごとに内容が違っていたり、いまひとつピンとこないところもあったんですよね。
ヌーラの説明を聞いて、それまで漠然としか理解できなかったものが、
ようやくなるほどと腑に落ちたのでした。

ヌーラが語ってくれたムーア音楽の旋法体系については、
今月号の『ミュージック・マガジン』のインタヴュー記事をお読みいただくとして、
この時の取材で面白かったのが、ヌーラのおばあちゃん子ぶり。

ヌーラのインターナショナル・デビュー作“TZENNI” のジャケットで
意外に感じたのが、世界的に有名な継母のディミ・ミント・アッバの写真を載せず、
父親のセイマリ・ウルド・アフメド・ヴァルと祖母のムニナの写真を載せていたことでした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-09-26

ディミ・ミント・アッバの威光を借りるのを、よしとしないからなのか、
インタヴューでもディミについて言葉少なだったのに比べ、
父と祖母については、たくさんの思い出を喋ってくれました。

Musique Maure.jpg

なかでも、祖母ムニナへの敬愛は相当なもので、
取材に持参したレコードと写真集が、ちょっとした騒ぎになりました。
レコードは先に挙げたオコラ盤LPで、
A面2曲目に収録されている女グリオの Mouninna は、
ヌーラの祖母ではないかと思ってヌーラに示したところ、大当たり。

先日出たばかりのシャルル・デュヴェーユ写真集にも、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-07-14
ムニナの別のショットがあったので、それも一緒に見せると、
ヌーラばかりでなく、同席していたギタリストのご主人ジェイシュ・ウルド・シガリ、
ドラマーのマシュー・ティナリ3人とも身を乗り出して、大興奮。
めいめいがスマホを取り出し、写真を撮りまくり、取材が中断してしまいました。

LP Photo Book Mounina.jpg

3人とも、ムニナの写真もレコードも初めて見たとのことで、むしろぼくの方がびっくり。
これまでヨーロッパやアメリカでさんざん取材を受けているだろうに、
このムーア音楽の名盤LPをヌーラに見せた人は、誰もいなかったのか。
まさか日本で祖母の写真を見るとはと、ヌーラは感無量そうでしたけれど、
これほどのリアクションは予想外で、重たい写真集を持っていった甲斐がありましたよ。

“TZENNI” に載っていたムニナの写真は、サングラスをかけていて
顔がよくわかりませんでしたけれど、オコラ盤のムニナの写真は、
ヌーラと顔立ちがそっくりなうえ、歌声まで似ているのだから、間違いようがありません。

ムニナはモーリタニアの紙幣にもなったという、
ドラマーのマシュー・ティナリの発言に、取材から帰って調べてみると、
なるほど旧1000ウギア札にアルディンを弾くムニナが描かれていて、
透かしにも、正面を向いたムニナの姿がデザインされていました。
ムニナは、モーリタニアを代表する名グリオとして、
ディミ・ミント・アッバ以上の存在だったんですね。

Banque Centrale de Mauritanie, 1000 ouguiya.jpg

シャルル・デュヴェーユがモーリタニアでフィールド録音した音源は、
のちにプロフェット・シリーズから、CD3タイトルでリリースされましたけれど、
残念ながらムニナの録音はCDに収録されず、未CD化です。
オコラ盤LPも現在では入手が難しくなっていまいましたが、
ムニナの吟唱“Vagho” は、Youtube で視聴可能です。
ちなみに、Vagho は曲のタイトルではなく、「ヴァフォ」というモードの名称で、
オコラ盤LPの曲タイトルは、すべてモード名になっていました。

Si Daty et Mounina_MB1415.jpg   Si Daty et Mounina_MB1419.jpg

取材を終えてひと月後、偶然にも、ムニナのレコードを2枚見つけました。
入手したのは、モロッコのブシフォンから出たEPで、
調べてみると、ブシフォンからは以下のLP5枚も出ているんですね。
KAR MTAMASS (MB19)
FAKO TAMAJOUGA (MB20)
LAKHAL (MB21)
LABYAD AKOURASS (MB22)
LABTAYT AADAL (MB23)
LPはカヴァーなしのいわゆる白ジャケですが、EPにはスリーヴが付いていました。

Noura Mint Seymali "TZENNI" Glitterbeat GBCD016 (2014)
Noura Mint Seymali "ARBINA" Glitterbeat GBCD038 (2016)
[LP] Sidi Ahmed El Bakay Ould Awa, Mouninna, Ahmedou Ould Meïddah, Les Griots De L’Emir Du Tagant "MUSIQUE MAURE" Ocora OCR28
[EP] Si Daty et Mounina "INALI MAOULANE KARIMANE / YA OUGUI" Boussiphone MB1415 (1966)
[EP] Si Daty et Mounina "IDA HAKA" Boussiphone MB1419 (1966)
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コメント 3

としま

デビュー作以来僕も大のお気に入りなので、そのうち二枚まとめてなにか書こうと思っています。ところでモーリタニアの人名の読みが分らないのでお尋ねします。この人のNouraは「ノーラ」表記でいいんですね?インタヴューは何語でなさったのでしょう?
by としま (2017-10-20 11:46) 

としま

あっ、書き間違ってる。(「ノーラ」じゃなくて)「ヌーラ」でいいんですね?と言いたかったのです。
by としま (2017-10-20 12:35) 

bunboni

発音はノーラと聞こえましたが、アラビア語で「光」を意味する語なので、ヌーラと書いた方がいいでしょうね。
インタヴューはフランス語ですが、ヌーラはフランス語があまり得意ではないようで、通訳の方が苦労されていました。マシューとは、英語で話しましたけれど。
by bunboni (2017-10-20 13:13) 

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