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イピロス地方音楽の粋 アレヒス・ズンバス

Alexis Zoumbas  A Lamet For Epirus.jpg

「ヴァイオリンが歌う」とは、よく使われる形容ですけれど、
1曲目の絶妙なプレイに思わず引きずり込まれ、
息を押し殺したままじっと聴き耳をたて、終わった時には、息苦しさを覚えるほどです。
これほど繊細に歌うヴァイオリンも、ちょっと他にないかもしれないなあ。

ギリシャ北西部山岳地帯のイピロス地方出身のヴァイオリニスト、
アレヒス・ズンバスのSP録音集です。
1曲目の“Epirotiko Mirologi” には、「イピロスの哀歌」という英訳が付けられているとおり、
人が嘆きむせび泣くさまを、雄弁に表現したヴァイオリンのプレイが圧巻です。
ラストの12曲目でも、鳥のさえずりを模したような演奏に息を呑みました。

アレヒス・ズンバスは、1883年イピロス地方ヨアニナのグラメノという村に生まれ、
1910年にニュー・ヨークへ渡り、47年にデトロイトで亡くなった人。
本作は26年から28年にニュー・ヨークで録音されたSPから、12曲が収められています。
SPコレクター、クリストファー・クロスさんが2年前にリリースした
ギリシャ北西部イピロス地方のヴィンテージ録音集に続く第2弾になるわけですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14

英訳された曲目を眺めてみると、シルト・トゥー・ステップ・ダンス、
マケドニアのダンス、アルバニアの羊飼いの曲、メイポール・ダンス、
盗賊のダンスなんてのもあります。
シルトというのは、ギリシャの横並びダンスですね。
メイポール・ダンスは、ヨーロッパ全域で親しまれるフォーク・ダンスです。
アレヒスのヴァイオリンにはチェンバロもしくはベース、またはその両方が伴奏に付きます。

解説によると、イピロスの音楽を特徴づける二つのタイプの曲に、
ミロロギとスカロスがあるそうです。
ミロロギは葬儀の嘆き唄で、古くは古代ギリシャの叙事詩の中にもみられ、
イピロスの祝祭の踊りパニイェリアの始めと終わりに、
必ず演奏されるのが習わしなのだとか。
一方、スカロスは、クラリネットとヴァイオリンで演奏される羊飼いの歌だそうです。

東欧的な旋律と、ギリシャのオリエントな香りもたっぷり含んだ音楽がなんとも味わい深く、
アレヒスのヴァイオリン演奏の華麗なアーティキュレーションにのせて、
イピロス地方音楽の粋を堪能させてくれる名演集です。

Alexis Zoumbas "A LAMENT FOR EPIRUS, 1926-1928" Angry Mom AMA04
コメント(4) 

コメント 4

としま

bunboniさんのこの記事で興味を持って、アマゾンに種ピンしている海外の業者が安かったので、それで買いました。時間が掛りましたが、昨日ようやく届いたので、聴きました。

いやあ、これは素晴しい。こんなに情感豊かでよく歌うヴァイオリン演奏は、他ではあまり聴いたことがないと思ってしまうほどです。感動しました。

また、1920年代の録音なのに、現代の録音と遜色ないくらいのいい音で、演奏者の生々しい息づかいまで伝わってくるかのようです。
by としま (2015-08-18 16:07) 

bunboni

このナマナマしさにはビックリさせられますよね。
今日びの音楽より、SP時代の音楽の方が刺激的で、
いやんなっちゃいますよ。
by bunboni (2015-08-18 19:05) 

としま

仰る通り、第二次大戦後に成立したジャンルを除けば、殆どの大衆音楽が、SP録音時代にピークを迎えていたような気がします。米国のジャズだってブルーズだって、僕は昔からSP時代の音源の方が圧倒的に好きです。トルコ歌謡だってギリシアのレンベーティカだって、オスマン帝国時代の20世紀初頭に爛熟したわけですし。
by としま (2015-08-18 19:41) 

bunboni

おっしゃるとおりです。
だからといって、SPまで追っかけたら、生活破綻は目に見えているので、その誘惑だけには負けないよう心がけております(笑)。
by bunboni (2015-08-18 20:08) 

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