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ターラブのアマチュアリズム ラジャブ・スレイマン&キターラ

Rajab Suleiman & Kithara  ZANZIBARA 8.jpg

ザンジバルのターラブは、アラブ音楽の古典的な音楽性を保ちながら、
本家アラブ古典音楽にはないアマチュアリズムを発揮していて、
そこに風通しのよさや、親しみをおぼえます。

マカームをはじめとする音楽理論を、師匠から弟子へと継承してきた
正調のアラブ古典音楽の厳粛なたたずまいに比べて、
大衆音楽として土着化したザンジバルのターラブには、
古典という敷居の高さがなく、よりカジュアルな雰囲気がありますよね。

「ザンジバラ」シリーズの新作を聴いて感じ入ったのは、
ザンジバルのターラブが古い歴史を持つ音楽であるにもかかわらず、
アマチュアリズムを発揮する余地がまだまだある、
<若い>音楽なんだなあということでした。

そんな<若さ>を感じさせた、「ザンジバラ」シリーズ第8集のキターラは、
カルチャー・ミュージカル・クラブの若手メンバーによって結成されたグループです。
グループ結成当初は、リーダーのラジャブ・スレイマンが弾くカーヌーンと
ベース、パーカッションのトリオに、ゲスト・シンガーが加わる編成だったのが、
徐々にメンバーが増え、現在は11名編成になっているとのこと。

もともとキーボード奏者としてさまざまなグループで演奏していたラジャブは、
アコーディオン奏者としてカルチャー・ミュージカル・クラブに加わり、
はじめてカーヌーンと出会ったそうです。カーヌーンの魅力に取り憑かれたラジャブは、
この楽器を習得するため、エジプトやトルコの古典音楽、
さらにはジャズやクラシックまで幅広く学んだのだとか。
本作でもタクシームをたっぷりとフィーチャーしているところに、
古典音楽を学び取ったラジャブの音楽性が発揮されています。

従来のターラブ楽団にないキターラの魅力は、パーカッションの強調にあります。
ンゴマ、キドゥンバク、ドゥンバクなどのパーカッションをフィーチャーしてビートを強化しているのは、
キドゥンバクの影響であることはすぐにわかりますけれど、
キドゥンバクのようなコール・アンド・レスポンスのダンス・チューンをやらず、
歌曲というフォーマットを崩さないところが、
聴くための音楽であるターラブのアイデンティティを守っているといえますね。

タクシームや歌の即興のパートをたっぷりと取る一方、
パーカッションのみのパートを短く差し挟むアレンジがとても効果的で、新鮮です。
こんなふうに伝統的なターラブをブラッシュアップさせているところに、
柔軟な若さがよく表れていて、コミュニティのアマチュアたちが育ててきた音楽の良さを感じます。

個人的に気に入ったのは、メンバーのヴァイオリン奏者が作曲した“Chungu”。
ムラユを思わせるエキゾティックなメロディは、これぞ熱帯歌謡ですね。
二人の若い女性歌手の歌いぶりはいずれもアマチュアぽく、
女性コーラスがぜんぜん揃わないところなんて、微笑ましい限りなんですが、
そのせいか、ゲストのヴェテラン女性歌手ルキア・ラマダニの妖艶なこぶし使いが余計に映えます。

もう一人、カルチャー・ミュージカル・クラブの看板歌手であるマカメ・ファキも参加しているんですが、
歌いぶりはやや元気がなく、声にも少し衰えを感じます。
そのかわり、ウードの演奏はハツラツとしていて、
ラジャブのカーヌーンと鮮やかなアンサンブルを聞かせてくれます。
ザンジバルの若手たちが、伝統ターラブを着実に進化させていることを知らせてくれる一枚です。

Rajab Suleiman & Kithara "ZANZIBARA 8 : CHUNGU" Buda Musique 860248 (2013)
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