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流し灯篭がゆらめく夜 ザ・レー

Da Le  TU TINH VOI HUE.JPG

次々とリリースされるヴェトナムの民歌系女性歌手の新作、尽きることがありませんね。
実はここ二ヶ月ほど毎夜の愛聴盤となっているのは、フエの伝統歌謡を集めたアルバム。
これまでの抒情歌謡とは違い、ぐっと本格的な伝統もので、聴けば聴くほど味わいが増します。

ザ・レーという歌手の名は初耳でしたけど、それもそのはず、これがデビュー作とのこと。
遅いデビュー作というべきか、写真を見ると、かなりお年を召しているよう(五十過ぎ?)。
仕立てのいい高級アオザイを着こなした、深窓の令夫人といった佇まいで写っています。

フエの古謡を歌った女性歌手というと、
去年フォン・モの“MƯA HUẾ” を愛聴したばかりですけれど、
あのアルバムのラスト2曲が、弦楽アンサンブルのみの伴奏で歌っていましたね。
本作はあの伝統スタイルで全編を通したものといえます。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-10-10

どの曲も、弦楽器が音合わせするかのようなさりげないイントロに始まり、
ヴェトナム独特のオリエンタルなサウンドスケープに引き込まれてしまいます。
ダン・ニー(胡弓)、ダン・グエット(月琴)、ダン・バウ(一弦琴)のゆらぐ音が絡み合い、
そこに華やかな音色のダン・チャン(筝)が加わると、
雅な宮廷の雅楽ニャ・ニャックのような雰囲気も醸し出されます。
ファック(拍子木)のカンッという響きは、ヴェトナムの深い夜を思わせるかのよう。
古都フエならではのおごそかさが滲み出たなんとも味わい深いサウンドで、
古典的な伝統歌謡が今も息づいているのを実感させます。

フエの古謡は、侘び寂びの風情のある、シブくて味わい深い曲が多いんですけれども、
このアルバムでは、宮廷音楽の祝祭を思わせる華やかな曲や、
伝統歌劇の幕間に歌われるような雰囲気の曲も加わって、
多彩なフエ音楽の魅力を楽しませてくれます。
♪アー、タァ~ン、タン、ターン♪ でおなじみの
フエ民謡の名曲“Lý Mười Thương” も歌っていますよ。

そして、主役のザ・レーの歌がまた絶品。
ぴんと張った発声に、ヴェトナム独特の抑揚をつけた唱法と絶妙なこぶし使いを聞かせ、
その歌いぶりから、相当なヴェテランであることがわかります。
浮遊する独特の節回しには細やかな情感が込められていて、
ほのかな大人の色香も漂ってくるのだから、もうたまりません。
これがデビュー作といいますが、おそらく長く歌ってきた人でしょう。

ヴェトナム伝統歌謡ならではの幽玄な音感にあふれたアルバムで、
ジャケット写真の、流し灯篭のゆらめく火がまぶたに浮かびます。
数年前フーン・タンが伝統サウンドで歌った民謡集『夢の成る木』
(原題 L’ARBRE AUX REVES) が話題を呼びましたけど、
あのアルバムを入口にヴェトナム伝統音楽が好きになった人には
ぜひ聴いてもらいたい、本格的な伝統歌謡アルバムです。

Dạ Lê "TỰ TÌNH VỚI HUẾ" Bến Thành no number (2012)
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