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ターボ・フォークは姐御におまかせ エマ・エマ

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お! ぼく好みのターボ・フォーク、来たぁ。

クラリネットとサックスがぶりぶりと、バルカン独特のコブシをつけて吹きまくれば、
アコーディオンが仄暗い情念を秘めた妖しい旋律を奏でる。
まっこと、いいですなあ、これぞバルカンであります。

ハスキー・ヴォイスのエマ・エマさん、変わった芸名でいらっしゃいますが、
迫力満点の身体つき同様、歌もパワフルそのもの。
見得を切るような節回しもキレよく、説得力を持って迫ってきます。
歌いぶりは熱くても、歌は暑苦しくなく、爽快感さえあります。

アップ・テンポで迫る曲ばかりでなく、
ギリシャ歌謡やトルコのハルクふうのスロー・ナンバーもあり、
多彩なレパートリーとなっているところがいいですね。
抒情味あふれるスローでも、情熱的に歌うエマ・エマにグッときますよ。
エキゾなムードが横溢するクレズマーのようなワルツもいいなあ。
全8曲、わずか28分にも満たないミニ・アルバムなんですけれど、
1曲1曲にそれぞれ趣向が凝らされ、充実したプロダクションとなっています。
ストリングスもオーケストラ並みの大人数をフィーチャーしていて、ゴージャスです。

やっぱ、ターボ・フォークの歌手は姐御肌でないと。

Ema Ema "EMA EMA" Grand Production CD692 (2016)
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テクノ・ホロン参上 ギュルセレン・ギュル

Gülseren Gül  MAVİŞİM.jpg

トルコ北部黒海沿岸の伝統舞踏、ホロンにぶったまげたのが2年前。
民俗的な伝統舞踏が、そのまんまトランス・ミュージック化してしまうという、
その強烈にキテレツな音楽のあり様に、ノックアウトされたんでした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27

その後話題が話題を呼び、現地絶賛品切れ中だったエミネ・ジョメルトも、
日本からの熱烈オーダー呼びかけで再プレスが実現し、
今年になり、めでたく日本盤がリリース。
ちまたでは、ホロン病患者が続出しているとか(ウソです)。

どうやらエミネ・ジョルメトの“HOLON” をリリースしたAK・システムが、
テクノ・ホロン(当方の勝手な命名です)を量産する代表的なレーベルらしく、
このレーベルから出た04年の旧作を今回たまたま手に入れたんですが、
これまた見事なテクノ・ホロンぶりに、ノケぞってしまいました。

すでに十年以上も前から、
ウチコミとケメンチェのフリーキーなインプロヴィゼーションがくんずほぐれつする、
テクノ・ホロンが存在してたんですねえ。
打ち込みの隙間をウネウネと暴れ回るベース・ラインがこれまたテクニカルで、
ヒプノティックなトランスを誘います。

このアルバムは、そうした高速ホロンと、
いわゆる普通のトルコ民謡らしいスローなハルクとが交互に収められています。
エミネ・ジョルメトのように、徹頭徹尾ホロンで迫りまくるといった内容ではないとはいえ、
スローなハルクも5拍子だったりと、
黒海地域のリズムが生かされていて、一筋縄ではいきません。

去年の暮に、ダウード・ギュロールがホロンをやっていたのを再認識しましたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-12-26
欧米のプロデューサーたちは、まだホロンを発見していないのかな。
オネスト・ジョンズやグリッタービートあたりが取り上げたら、
ホロンも、シャンガーン・エレクトロやコロゴみたいに注目されると思いますけどねえ。

Gülseren Gül "MAVİŞİM" AK Sistem no number (2004)
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芸術ぶった大衆歌謡の矜持 プナール・アルティノク

Pınar Altınok  DORUKTAKI ŞARKILAR.jpg

19世紀から20世紀に移らんとするオスマン帝国末期。
そのSP時代に栄えた古典歌謡を再興しようとする近年の傾向は、
「トルコ古典歌謡のルネサンス」と呼ぶにふさわしいものといえます。
その中心的レーベルともなったのが、
トルコ航空も後押しするアラトゥルカ・レコーズですね。

こうした新しい傾向が生まれる以前のトルコ古典歌謡といえば、
大編成のオーケストラをバックに、大仰な歌い回しで歌う、
わざとらしさ満点な歌謡音楽といったイメージが強かったですからねえ。
女装したゼキ・ミュレンがその典型で、
20世紀後半にサナートというジャンル名で呼ばれるようになった古典歌謡は、
いにしえの古典歌謡、シャルクと呼ばれた軽古典とはまったく異質の、
大衆歌謡がいびつに芸術化した音楽でした。

シャルクが小編成の室内楽的な伴奏で歌われる、
軽妙で爽やかな味わいを持つものであったことは、
初期のゼキ・ミュレンや、さらに昔のSP時代の録音が復刻されるまで、
気づくことができませんでした。

20世紀後半に、シャルクからサナートと称する芸術音楽に変質したのは、
1923年のオスマン帝国崩壊とともに野に下った帝国の宮廷楽士たちが、
イスタンブル新市街のナイトクラブを根城として大衆歌謡化した音楽に、
「芸術音楽」と称して箔を付けるための演出であって、
いわば宮廷楽士のプライドでもあったのでしょうね。

重々しいオーケストラが、やたらともったいつけて長ったらしい前奏をつけ、
やっと歌が出てきたかと思えば、聴き手を脅かすように声を張り上げたりと、
サナートはまさにケレンだらけの音楽になったんでした。
そんなことから、ここ最近のトルコ古典歌謡のルネサンス傾向の音楽を、
サナートと呼ぶのはふさわしくないんじゃないかと思うようになったきっかけが、
タルカンが昨年出した話題作“AHDE VEFA” でした。

なんと本作は、ミュニール・ヌーレッティン・セルチュークに、
サーデッティン・カイナクといった古典歌謡曲を、
ポップスの貴公子タルカンが取り上げた驚きのアルバムだったんですが、
最近の新傾向マナーではなく、
女装ゼキ・マナーのサナートを踏襲した内容だったんですね。
なるほど、旧態依然としたサナートも健在なんだなと、
あらためて気づかされたというわけです。
そういえば、ザラのアルバムも、同じように昔ながらのサナートでしたよね。

で、そのタルカンもザラもスルーしていた当方でありますが、
プナール・アルティノクというこの女性歌手のサナート作には、
ひっかかるものがありました。
オーケストラは厚ぼったいし、歌いぶりもケレン味たっぷり。
だけれど、なぜか惹かれるのは、強力な歌唱力がこれみよがしではなく、
歌い手として昇華したものを感じさせるからでしょうか。

芸術ぶった大衆歌謡が、必ずしもイヤらしくならないのは、
歌手が歌に殉じる、その透徹した美意識が表出するか否かにかかっているのかも。
そんな思いにとらわれた一枚です。

Pınar Altınok "DORUKTAKI ŞARKILAR" Elenor Müzik no number (2014)
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ノスタルジックなトルコ産タンゴ歌謡 メフタップ・メラル

Mehtap Meral Ask.jpg

20世紀初頭、パリに伝わったタンゴは世界的なブームとなって、
アラブやアジアのすみずみまで広まったことは、よく知られていますよね。
ヨーロッパからほど近いトルコでは、早速20年代から、
アルゼンチン・タンゴを演奏する地元楽団が現れ始め、
イスタンブールを中心に、ダンス・パーラーやダンス・スクールが賑わったそうです。

やがて、トルコ語の歌詞によるタンゴ歌謡が作曲され始めると、
トーキー映画によってさらに大流行となり、
歌手のイブラヒム・オズギュルや作曲家のフェフミ・エジェが、
タンゴ歌謡の代表的な音楽家として名を馳しました。

タンゴ歌謡のブームは50年代半ばまで続き、
大衆歌謡の一ジャンルとして、その一翼を担いました。
また、世界中に広まり土着化したタンゴのなかでも、
古典歌謡の風味が溶け込んだターキッシュ・タンゴは、
トルコ独自の香りを放つ個性を宿したといえます。

しかし、その後のロックの世界的な流行によって、
タンゴは急速に古びた音楽となりはてて、長い年月忘れ去られてしまいますが、
近年の古典音楽の再評価と軌を一つにして、タンゴ歌謡も見直されるようになりました。
そのきっかけのひとつとなったのが、シェヴァル・サムが13年にリリースした、
タイトルもそのものずばりの『タンゴ』でした。

とばかり、ずっと思っていたんですが、
いやいや、その前にこれがあったんですねえ。知りませんでした。
83年アンカラ生まれの女性歌手、メフタップ・メラルが11年に出したデビュー作。
ぼくも最近手に入れてびっくりしたんですが、
本作に感化されて、シェヴァル・サムはタンゴに取り組んだんじゃないのかな。
そう思わせるほど、これがたいへんな意欲作なんですよ。

だいたいデビュー作で、ノスタルジックなタンゴ歌謡ばかりを歌うというのも、
ものすごくチャレンジングならば、タイトルも『愛』というド直球ぶりに、
なみなみならぬ意欲を感じさせます。
レパートリーも、ピアソラ作の“Git”、
セゼン・アクスが歌ったポップ・タンゴの“Ben Her Bahar Aşık Olurum” 以外は、
すべて自作のタンゴというのだから、舌を巻きます。
楽想も豊かで、ソングライティングの才能ありですね。

バンドネオンを中心とするタンゴ楽団の伴奏に、
エレクトロなトリートメントをうっすらと施しているところなど、
シェヴァル・サムはこれに倣ったなと思わせる、粋なアレンジが光ります。
メフタップ・メラルはケレン味なく歌っていて、
これほどの意欲作で力が入るかと思いきや、
意外なほど力の抜けた、さらりとしたセクシーな歌いぶりで、後味は爽やか。
ベタつかない美人って、いいもんです。

シェヴァル・サムは、ウードやカーヌーンも使って
古典歌謡とのミックスを試みていましたが、
メフタップ・メラルは大衆歌謡路線のターキッシュ・タンゴに徹しています。
日本未入荷がもったいない、知られざるトルコ歌謡の傑作盤ですよ。

Mehtap Meral "AŞK" ADA Müzik no number (2011)
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テン年代の『そよ風の伝説』 ムーンチャイルド

Moonchild VOYAGER.jpg

白日夢のようなサウンド。
ヘッドフォンから流れてくる甘美なエレピの響きに、
全身の細胞が泡立つのを覚えました。

この快感は、はるか昔、70年代に覚えがありますよ。
ダニー・オキーフの『そよ風の伝説』じゃないですか。
そう、「マグダレナ」でドニ・ハサウェイが弾いた、ウーリッツァーの響きです。
ほかにも、ミニー・リパートンの「ラヴィン・ユー」で
スティーヴィー・ワンダーが弾いた、エレピの音も思い出すなあ。

まごうことなき70年代サウンドを奏でるのは、
南カリフォルニア大学出身の若き3人組、ムーンチャイルドです。
すでに3作目といいますが、ぼくはこれが初体験。シビれました。

波間にたゆたう陽の光がきらめいて、
さまざまに表情を変えて行く映像を見るかのような、
キーボードとシンセサイザーが織りなす響き。
そのデリケイトな音の重なりが絶妙で、ため息がこぼれます。

鍵盤楽器の音の層が重ねられたり、さっと後退したりを繰り返すなかで、
ひそやかにギターが爪弾かれ、木管楽器の柔らかなリフが添えられます。
アクースティックな音像を浮き彫りにしながら、
その裏でエレクトロニックなビートが、秘めやかに鳴らされているんですね。

このエレクトロなグルーヴは、ディープ・ハウスやクロスオーヴァーの諸作、
たとえばオム・レコーズのカスケイドとか、
ネイキッド・ミュージックのブルー・シックスと共通するセンスを感じさせます。
鍵盤系の選び抜かれた音色や、統一感のあるサウンドは、
クラブ・ミュージックを通過した世代ならではでしょう。
こればかりは、70年代にはありませんでしたよね。

ネオ・ソウルにエレクトロのマナーとジャズのセンスを取り入れた
ムーンチャイルドのサウンドは、現実と幻の境を見失う甘美さに溢れています。
ウィスパリング・ヴォイスの女性ヴォーカリストが、
ふわふわした綿菓子のような歌声で夢見心地に誘い、天空へも上る気分。

「ソフト&メロウ」から「チル&メロウ」へ。
時代とともに形容は変われど、メロウネスの快楽は永遠です。

Moonchild "VOYAGER" Tru Thoughts TRUCD341 (2017)
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ウィンストン・マンクンク・ンゴジのあゆみ

Mankunku Yakhal' Inkomo.jpg

南アの名サックス奏者ウィンストン・マンクンク・ンゴジの68年デビュー作
“YAKHAL' NKOMO” が、南アのガロからLPリイシューされたんですね。
発売5年で10万枚セールスを記録した、南アでもっとも売れたジャズ・レコードの
ひとつとして知られ、ジャズ・マニアには有名なアルバムです。
今回はLPのみのリイシューで、CDは出ていないようです。

ぼくは“YAKHAL' NKOMO” を、07年のリイシューCDで聴いていましたが、
このCDは、クリス・シルダー(スヒルデル?)・カルテットに、
マンクンクがフィーチャリングされた、
69年の“SPRING” をカップリングしたお徳用盤となっていました。
ジャケット・タイトルともに“YAKHAL' NKOMO” を踏襲していますが、
“SPRING” が丸ごと収録されています。

“YAKHAL' NKOMO” “SPRING” ともども、典型的なハードバップで、
マンクンクが心酔していたジョン・コルトレーンの影響色濃いアルバムとなっています。
拙著『ポップ・アフリカ700/800』に選ばなかったのは、
北米ジャズをまんまコピーした、「純」ハードバップ・アルバムだからで、
タウンシップ・ジャズのような大衆性のある南ア・ジャズの要素はなく、
有名盤ではありましたけれど、遠慮させていただきました。

43年西ケープ州リトリートに生まれたマンクンクは、
“YAKHAL' NKOMO” 録音当時まだ24歳でした。
血気盛んな年頃で、当時多くのジャズ・ミュージシャンが
海外へ亡命したのにも関わらず、マンクンクは仲間の誘いを断り、
南アにとどまって演奏活動を続けることにこだわりました。

Winston Mankunku  JIKA.jpg   Winston Mankunku Ngozi  Molo Africa.jpg


マンクンクの南ア・ジャズらしいアルバムというと、もっとのちのアルバムで、
87年作の“JIKA” や98年作の“MOLO AFRICA” があります。
“JIKA” にはソロ・デビュー前のベキ・ムセレクも参加しているんですけれど、
南ア・ジャズの代表作という意味では、
ヒットした“MOLO AFRICA” を選ぶのが順当でしょうか。
う~ん、でもぼくはあんまり買っていないので、
これまた『ポップ・アフリカ700/800』には載せてないんですけどね。

この頃になると、マンクンクは豪放にブロウすることがなくなり、演奏もやや冗長なんです。
ヴェテラン・ピアニストのテテ・ンバンビサがいい感じでピアノを弾いているのに、
マンクンクがオーヴァー・ダブしたシンセサイザーがジャマして、耳ざわりなのも難。
コーラスを加えるなど、ポップな味付けをしたかったことは分かるんですが。

Winston Mankunku Ngozi  Abantwana Be Afrika.jpg

むしろ、完全アクースティックの編成で演奏した
03年の“ABANTWANA BE AFRIKA” の方が、落ち着いたサウンドで楽しめます。
ちなみに、ベースはハービー・ツオエリが務めています。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-11-24
心臓の持病を抱えていたマンクンクは、09年に66歳で亡くなってしまったので、
本作が遺作となりました。
マンクンク自身のサックスは、すっかりレイドバックしていますが、
南アにとどまり続けたジャズ・プレイヤーの気骨は、しっかり聴き取れますよ。

Mankunku "YAKHAL’ INKOMO" Gallo CDGSP3123 (1968)
Winston Mankunku "JIKA" Nkomo Music/Avan-Guard Music SVCD521 (1986)
Winston Mankunku Ngozi "MOLO AFRICA" Nkomo NK0010 (1998)
Winston Mankunku Ngozi "ABANTWANA BE AFRIKA" Sheer Sound SSCD098 (2003)
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サンパウロ発アヴァンなポスト・パンク キコ・ジヌスィ

Kiko Dinucci.jpg

音楽って、出会いだなあと、つくづく思いますね。
自分の守備範囲だけしか聞かずにいたら、
こんなポスト・パンクな轟音に満ち溢れたアルバムと
出会うチャンスなんて、まずなかったと思うんですよ。

キコ・ジヌスィの本ソロ・デビュー作に出会う発端となったのは、ロムロ・フローエス。
このサンパウロの前衛サンバ作家に惚れこんでいたぼくは、
ロムロが参加しているグループ、パッソ・トルトも聴き、
パッソ・トルト一派の音楽性に、とても惹かれていました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-04-29

そのパッソ・トルトのメンバー、キコ・ジヌスィがソロ作を出したというので、
買ってみたんですが、飛び出してきたサウンドが、
見事なまでにポスト・パンクだったので、ビックリしてしまいました。

まったく不案内な音楽ゆえ、最後まで聴き通せるかしらと思ったんですが、
意外にも、当方もかすかながら持ち合わせているロック魂に火が点き、
いえ~ぃ!と盛り上がってしまったのですよ。

曲の構成が序破急か、てなほどメリハリが利いていて、冗長さ皆無。
アレンジがしっかりしていて、ムダな音がない。
ダークなムードの曲でもメロディアスなのは、パッソ・トルト一派の美点ですね。
曲ばかりでなく、ギターのリフも、アブストラクトな音列が並んでいるようで、
メロディはきれいなんだよなあ。こういうところにブラジルを感じますね。

激しく乱打するドラムス、咆哮するサックス、鬼のカッティングでかき鳴らすギター。
一点集中の突破力と肉体感溢れる出音が、胸をすきます。
破壊的な曲ばかりでなく、ユーモラスな曲調もあったりと、
いずれにせよ、アヴァンな音楽性で一本芯が通っています。

キコ・ジヌスィは、アドニラン・バルボーザやパウロ・ヴァンゾリーニなど、
パウリスタのサンビスタの影響をもろに感じさせるクルーナー・タイプの歌い手である一方、
ジョンゴやバトゥーキ、カンドンブレなどのアフロ・ブラジル音楽のリズムを再構築する、
前衛アフロ・ブラジル音楽ユニットのメター・メターでは、
トニー・アレンとも共演するという、多面的な音楽性の持ち主。
そんな豊かなバックグラウンドを持つキコだからこそ、
本作で発揮されるアヴァンなロックに、ぼくが夢中になれるのかもしれません。

手作り感溢れるペイパー・スリーヴの2色刷りジャケットは、
「黒/黄」、「オレンジ/黒」、「ピンク/ブルー」の3タイプがあり、
色合いのきれいなピンク/ブルーを買ったんですが、キコのサイトをのぞいてみたら、
この「ピンク/ブルー」が、どうやらデフォルトのよう。

キコのサイトでは、本作ほかパッソ・トルトやメター・メターなど、
これまでキコが関わったグループすべての音源が、フリー・ダウンロードできます。
本作にホレこみすぎて、メター・メターについては触れられませんでしたが、
またいずれ、別の機会にでも。

Kiko Dinucci "CORTES CURTOS" Red Bull Studios no number (2017)
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テレコ・テコからサンバランソへ オルランジーヴォ

Orlanndivo Bossa, Samba E Balanco.jpg   Orlann Divo  A Chave Do Sucesso.jpg
Orlann Divo 1963.jpg   Orlann Divo  Samba Em Paralelo.jpg

おー、ようやくブラジルで復刻されたか。
ずいぶん時間がかかりましたねえ。
ブラジル60年代に人気を博したバランソ歌手、オルランジーヴォのムジジスク盤3枚を、
ジスコベルタスがオリジナル・フォーマットで完全復刻。

01年にイギリスのホワットミュージックが復刻して、話題を呼びましたけれど、
ブラジル本国での復刻は、これが初。
バランソ時代の立役者エジ・リンコルンのムジジスク盤復刻の6CDボックスが出て、
オルランジーヴォの復刻を期待する記事を書いた時から、6年も経ってしまったんだなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-06-08
そのオルランジーヴォ、今年の2月8日に亡くなっていたんですね。知りませんでした。

オルランジーヴォは、58年に作曲家としてプロ・デビューし、
のちに歌手としてエジ・リンコリンのグループに迎えられ、
61年にムジジスクからレコード・デビューした人。
ボサ・ノーヴァの時代に花開いたバランソ、
そしてオルランジーヴォが称したサンバランソは、
30年代のルイス・バルボーザやシコ・モンテイロなど、
街のダンサブルなサンバの流れを汲んだものでした。

62年のデビュー作“A CHAVE DO SUCESSO” に収録された“Amor Vai E Vem” を聴けば、
軽妙なマッチ箱のリズムに、シコ・モンテイロのテレコ・テコが
ちゃんと受け継がれているのが、聴き取れますよね。
ルイス・バルボーザやシコ・モンテイロの時代は、
ショーロの楽団が伴奏をつけていましたけれど、時代が下った50年代になると、
シコ・モンテイロの後輩にあたるジョルジ・ヴェイガたちは、
管楽器を含む大編成のガフィエイラの楽団が伴奏をつけるようになりましたけど、
バランソはオルガンを中心に、フルート、ギター、ドラムス、パーカッションという、
スモール・コンボによる軽やかで涼しげなサウンドが、
ボサ・ノーヴァの時代にマッチしたんでした。

ムジジスク時代の3作は、デビュー作とセカンドがエジ・リンコルンのアレンジでしたけど、
3作目はエジ・リンコルンの名が消え、
サックスがソロを取るなど、サウンドが華やかになっています。
1・2作目とは別のジャズ・サンバのミュージシャンを起用したと思われ、
ドラムスがやかましくって、これ叩いてるのエジソン・マシャードなんじゃないかな。
そのせいか3作目はバランソというより、ジャズ・サンバ色が強くなりすぎた感があります。

ムジジスク時代では、やっぱりセカンドが一番でしょう。
オープニングの“Samba No Japão” なんて、細野晴臣の『泰安洋行』ムード満点ですよね。
木琴や月琴ふうな音色のバンジョー(テナー・ギター?)をフィーチャーして、
偽オリエンタルなリフをまぶし、イントロとエンディングには、お約束の銅鑼も鳴りますよ。
ちなみに、このムジジスク時代、オルランジーヴォはワン・ワードではなく、
「オルラン・ジーヴォ」と名乗っていて、「オルラン」の n もダブルだったんですね。

Orlandivo  Copacabana.jpg

オルランジーヴォは、60年代にこの3作を残してレコーディングから離れてしまい、
77年になってようやく、ジョアン・ドナートのアレンジで、
セルジオ・メンデス・マナーのポップなアルバムを1枚作ります。
キュートな女性コーラスをフィーチャーしたこのアルバムでは、
自作曲以外にも、ボサ・ノーヴァの定番曲“A Felicidade” を歌ったりと、
サンバランソのエッセンスは聴き取りにくくなりますけど、
ソフト・ロック・ファンが再評価したとおり、
オルランジーヴォらしいポップ・センスが発揮された名作でした。

Orlandivo  Sambaflex.jpg

でも、ぼくがオルランジーヴォで一番好きなのが、
05年になって出した“SAMBAFLEX”。
このアルバムは、テレコ・テコからサンバランソに繋がる、粋なサンバを現代に復活させ、
オルランジーヴォの集大成といえるアルバムになっていました。
シコ・モンテイロの代表曲“Boogie Woogie Na Favela” を取り上げて、
ロカビリーやヒップホップまで取り入れたアレンジで歌い、
オルランジーヴォの遊びゴコロあふれる音楽性が見事に発揮されていましたね。

生涯わずかこの5作しか残さなかったオルランジーヴォですけれど、
ノエール・ローザから脈々と受け継がれる、
街の粋なサンバの正統派として、もっともっと評価されてほしい人です。

Orlandivo "BOSSA, SAMBA E BALANÇO" Discobertas DBOX62
Orlann Divo "A CHAVE DO SUCESSO" Musidisc/Discobertas DB464 (1962)
Orlann Divo "ORLANN DIVO" Musidisc/Discobertas DB463 (1963)
Orlann Divo "SAMBA EM PARALELO" Musidisc/Discobertas DB465 (1965)
Orlandivo "ORLANDIVO" Odeon/EMI 541574-2 (1977)
Orlandivo "SAMBAFLEX" Deckdisc 22058-2 (2005)
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ヒップホップ・ジャズ・ファンク・フロム・ダラス RC&ザ・グリッツ

RC & The Gritz  THE FEEL.jpg

ネオ・ソウルで思い出したんですが、
エリカ・バドゥのプロデューサー、RC・ウィリアムズ率いる
ヒップホップ・ジャズ・ファンク・バンド、RC&ザ・グリッツの新作、
すでにヘヴィ・ロテ4か月目突入です。

2月に来日して、その公演が終った後で、このアルバムを聴いたという、
自分の間の悪さが情けないんですが、観たかったなあ、え~ん。
デビュー作にノレなかったもので、新作が出てもやり過ごした自分がバカでした。
だって、デビュー作はこんなにジャジーじゃなかったもんなあ。

セカンドは、ネオ・ソウルの美味なところがふんだんにまぶされ、
レイヤーしたシンセにホーンズの絡むサウンドが極上リッチで、トロけます。
ベース代わりにモーグを使って、チューバがベース・ラインを吹くようなサウンドを出す
“Jazz And Reverse” なんて、すごく新鮮なアイディア。

そしてまた、しなやかなグルーヴといったら。
変拍子好きをうならせる7拍子のタイトル曲にもやられましたけれど、
粘っこいミッド・スローの“Feathers” にはトリコになりました。

なんて心地いいグルーヴなんだろうと思いながら、何度も聴くうちに、
ハイハットがものすごく奇妙なリズムを刻んでいることに気づきました。
これって、ハズれてるよね……。正確にハズしてるっていうと、
オカシな表現だけど、わざと遅らせたリズムでハイハットを踏んでいます。
しかも、時々拍を抜いたりして、揺らいだリズムを作っているんですね。

誰だ、このドラマー、とクレジットを見たら、なんと、クリス・デイヴ!
うわー、さすがだわー。この強烈にもたったリズムは、確かに彼の真骨頂。
どうやったら、こんなにハズしたリズムを叩けるんですかねえ。
ジャストのリズムとずれたリズムを同時に叩くなんて、人間業とは思えん。
レギュラー・ドラマーのクリオン・エドワーズのほか、クリス・デイヴ、
ジャミル・バイロン、マイク・ミッチェル、タロン・ロケット、ロバート・シーライトと、
新世代ジャズをリードするドラマーが勢揃いしているところも、聴きものですねえ。

ヴォーカルのクラウディア・メルトンは、
CTI時代のパティ・オースティンを思わせるし、
80年代にフュージョンを聴いていた人なら、懐かしいはずの
バーナード・ライトなんて人も参加しています。
81年にGRPからデビューした、天才少年キーボーディストですね。
思えばザ・グリッツのサウンドって、80年前後のフュージョンのテイストだよねえ。
その一方で、ジャジー・ヒップホップなところもあれば、
新世代ジャズのビート感も兼ね備えているんだから、鉄壁ですよ。

こんなに夢中になったヒップホップ・ジャズ・ファンク・アルバムは、
おととし出会ったエンパイア・オヴ・サウンド以来であります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-11-06

RC & The Gritz "THE FEEL" Ropeadope no number (2016)
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クールなナイジェリアン・ネオ・ソウル ミスター・イージー

Mr. Eazi  ACCRA TO LAGOS.jpg

Youtubeでナイジャ・ポップの最新ヒットを眺めていると、
どのヴィデオもゴージャスで、金がかかっていることに驚かされます。
ナイジェリアの音楽ビジネスが、配信やヴィデオの広告売上へと移り、
CDなどハナから制作するつもりがなくなっている現状は、
フィジカル派にはツライものがありますねえ。

おお、これはいいなと、書き留めたアルバムが、ことごとく配信のみで、
ああ、またかと嘆息すること続きだったのですが、
これはフィジカルが出たんですねえ。
91年7月19日リヴァー州ポート・ハーコート出身のミスター・イージーこと
オルワトシン・オルウォレ・アジバデくんの2作目となるミックステープです。
ミックステープのアルバムがCD化するなんて、珍しいな。

生まれはポート・ハーコートですが、小学校からはレゴス、
大学はガーナのクマシにあるクワメ・ンクルマ科学技術大学へ通ったという、
まだ弱冠25歳の若者。
昨年ガーナ・ミュージック・アワードを受賞したガーナでも人気の歌手で、
ガーナとナイジェリアの音楽に関する彼のツイートが物議を醸し出し、
芸能ニュースをにぎわすこともあったようですね。
本作のタイトルも「アクラからレゴスへ」とあるように、
両国のファンを意識したものとなっています。

ミスター・イージーの音楽は、ヒップホップR&B寄りのメロディックなポップで、
アフリカらしいビート感をもったバックトラックがクールです。
ナイジェリアン・ネオ・ソウルといいたいスキマのあるサウンドが心地よく、
レイドバックした彼のヴォーカル・スタイルも哀感があって、いい感じ。

彼は自身の音楽を、「バンクー・ミュージック」と称していますけれど、
バンクーって、フフと並ぶガーナ料理の主食のことです。ご存じですか。
キャッサバとトウモロコシの練粉で作る、ちょっと酸味のある練り粥ですね。
いろいろなスープと一緒に食べるので、
さまざまな音楽をごったまぜしたという意味で名付けたとのこと。
「ガンボ」や「チャンプルー」と同じで、みんな料理に例えるのが面白いですね。

ミクスチャーというものの、ハイライフやアフロビートなどの要素はなく、
何をもってミクスチャーと称しているかは不明ですが、
アーバンナイズしたクールなシティ・ポップぶりは、十分魅力的です。

Mr. Eazi "ACCRA TO LAGOS" Starboy no number (2017)
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メンフィス・ソウルふたたび ドン・ブライアント

Don Bryant DON'T GIVE UP ON LOVE.jpg

号泣。

48年ぶりの新作だよ? 信じらんない気分。店頭でCDを持った手が震えました。
去年来日した時も、ほんとに?と思ったもんですけど、
ウィリアム・ベルに続いて、ドン・ブライアント、そして先日のスペンサー・ウィギンスと、
サザン・ソウルのレジェンドたちが立て続けに来日して、もう完全復活じゃないですか。
R&Bじゃねえよ、ソウルだよ、おっかさん!

そしてこの新作。
オープニングが“A Nickel and a Nail” ですよ。泣くしかないじゃないですか、もう。
ちょうど1年前のビルボードライブ東京のステージでもこれを歌ってくれて、
身体の芯がシビれたっけねえ。そん時の記憶が湧き上がってきましたよ。
アレンジはO・V・ライトのヴァージョンをほぼ踏襲。
O・Vの若き狂おしさとは違った、74歳という年齢の深みが胸に迫ります。

O・Vが Lord, Have mercy! と自嘲するようにシャウトすれば、
ドンはOh lord... と救いを求めるように唸ります。
粘っこく歌うドンの泥臭い歌いぶりは、これぞサザン・ソウルでしょう。
ハワード・グライムズの重厚なドラミング、チャールズ・ホッジのオルガン、
ヴィンテージ・ソウルを刻印するホーンズやストリングスも揃い、
往年のハイ・サウンドを支えてきた名手たちが繰り出すサウンドに、
ハンカチはもう2枚目です。

“How Do I Get There” では激しいシャウトを聞かせるかと思えば、
“It Was Jealousy” では、アル・グリーンばりの甘やかな歌いぶりを聞かせる。
年輪を重ね、さらりと歌う節回しひとつに、老練な味わいを醸し出すドンの歌いぶりに、
衰えはまったく感じられず、ほとばしる歌ぢからに圧倒されるばかりです。

2017年ベスト・ソウル・アルバム確定!と言いたいところですけど。
こうなると、スペンサー・ウィギンスの新作だって、ありそうじゃないですか。
その可能性も捨てきれないので、それまでベスト・ソウル・アルバムは保留としましょう。

Don Bryant "DON’T GIVE UP ON LOVE" Fat Possum FP1607-2 (2017)
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ジャズ・ショーロの愉しみ サムエル・ポンペーオ

Samuel Pompeo Quinteto.jpg

おお、これはジャズ・ショーロじゃないですか。
今では誰も演奏することのなくなったジャズ・ショーロは、
その名からわかるとおり、北米ジャズに影響されたショーロです。
歴史は古く、30年代にスウィング・ジャズがブラジルに輸入された時代まで遡ります。

といっても、ジャズより歴史の古いショーロゆえ、
当初は、外国で流行しているという新しいインスト音楽を、
ほんのお遊び程度に取り入れたにとどまり、
その後のショーロの発展に大きな影響を与えることはありませんでした。
第二次世界大戦前後に、ラダメース・ニャターリやガロートたちが、
ショーロのモダン化を図るなかで、ジャズ・ショーロを演奏しましたが、
これも実験的な試みに終わり、
のちの音楽家たちに受け継がれることはありませんでした。

廃れてしまったショーロの一変種であるジャズ・ショーロですけれど、
何年か前にサックス奏者レオ・ガンデルマンが出した、
ジャズ・ショーロのアルバムがありましたね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29
あれは、ショーロの歴史に精通したカヴァキーニョ奏者
エンリッキ・カゼスが仕掛けたアルバムでしたけれど、
本作はそうしたかつてのジャズ・ショーロに触発されたのではなく、
独自のアイディアで制作されたアルバムのようです。

サムエル・ポンペーオは、
サンパウロの交響楽団やビッグ・バンドで演奏してきたサックス奏者で、
MPBの世界でも、数多くの歌手の伴奏も務め、
現在は音楽学校で教鞭をとっているという人物。
ショーロやジャズのいずれかをプロパーとする音楽家ではないところが、
この企画を成功させた秘訣だったように思えますね。

サムエルはバリトン・サックス、ソプラノ・サックス、
バス・クラリネットを吹いていますが、ショーロ・マナーで吹奏していて、
一部のスロー曲をのぞき、ジャズ的な奏法やフレージングを慎重に避けています。
SP袋のジャケット・デザインや、
ノスタルジックなサウンドで始まるオープニングの演出含め、
ショーロとしてのアイデンティティをくっきりと表わしていますよ。

ガロートのショーロを改変したオリジナル曲を演奏していた、
ブラジルの新進ジャズ・ピアニスト、ヴィトール・ゴンサルヴィスは、
リズム・アレンジにくっきりとコンテンポラリー世代のジャズが刻印されていましたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-03-22
サムエルの演奏からは、そうした現代的なジャズのセンスは感じられません。

では、ジャズ・ショーロの「ジャズ」の部分はどういうものかといえば、
60年代ジャズのモーダルなハーモニーを加えたまでの、いわばオーソドックスなもの。
ジャズがプログレッシヴなインスト音楽ならば、
ショーロは芸術性より娯楽性を優先させるインスト音楽であり、
そこがジャズ・ショーロのショーロたるゆえんです。

Samuel Pompeo Quinteto "QUE DESCAÍDA" P&MB Produções no number (2016)
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ブラジルの歌ものインストルメンタル・ミュージック トレイス・ノ・ソン

3 No Som.jpg

このサンパウロ出身のトリオもいいなあ。
パーカッション、ギター、ハーモニカ(ガイタ)という、
レシーフェのサラコチーアとはまた違った編成の変則トリオ。
トレイス・ノ・ソンのデビュー作です。

クラリネットを加えた2曲目の“A Primeira Dama” のような、
優雅なショーロ曲もやっていますけれど、彼らはショーロのトリオではなく、
インストルメンタル・ミュージックですね。
メンバーが歌う曲も少しあるんですけれども。

ハーモニカがクロマチックだけでなく、
曲によってダイアトニックやバスも使い分けているところがミソですね。
一部の曲で聞かれる、わざと音程をずらした演奏も面白いですね。
ファニーな感じのメロディにぴったりなんですけど、これ、どうやって吹いているんだろう。

サンバ、マラカトゥ、バイオーン、フレーヴォのリズムをベースとした、
ブラジルならではのインストルメンタル音楽ながら、
エレクトリック・ギターがソロを弾きながらユニゾンでスキャットをするなど、
ジャズの素養をしっかりと身につけていることが、聴き取れます。
ギタリストはマヌーシュ・スタイルのギターも聞かせたりと、
豊かな音楽性をうかがわせます。

曲はメンバーのオリジナルですけれど、1曲のみギンガの曲をやっていて、
ギンガ自身もゲストに加わっています。
不思議な浮遊感たゆたう、いかにもギンガらしい官能的な曲で、
このグループの音楽性によく馴染みます。

ラストは大勢の子供たちのコーラスをフィーチャーした楽しい曲で、
歌ものインスト音楽の秀作です。

3 No Som "3 NO SOM" no label no number (2017)
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アミルトン・ジ・オランダ・キンテートのライヴァル サラコチーア

Saracotia.jpg

アミルトン・ジ・オランダ・キンテートの良きライヴァルとなりそうな、
サラコチーアというレシーフェのグループを知りました。
バンドリン、7弦ギター、ドラムスの3人組で、3人とも83年生まれの同い年。
ベースレスという変則トリオで、アミルトン・ジ・オランダ・キンテートとは
編成が異なりますけれど、ショーロ、バイオーン、フォローをベースとしながら、
コンテンポラリー・ジャズの素養を身につけた音楽性を発揮しています。
08年に結成したグループで、15年にリリースした本作は2作目とのこと。

アクースティック編成の3人組ながら、カラフルなサウンドに仕上げているキー・マンは、
7弦ギターのロドリゴ・サミコ。
エフェクトを使ってエレクトロな音響を効果的に加えています。
ラファエル・マルキスのバンドリン・プレイと曲作りは、完全にショーロ・マナー。
それをコンテンポラリー・ジャズのセンスでリズム・アレンジするところが、
アミルトン・ジ・オランダ・キンテートと見事に重なります。

アミルトン・ジ・オランダ・キンテートとの違いといえば、
やはりレシーフェの出身らしく、ショーロばかりでなく、
フレーヴォやフォローの要素がふんだんに取り入れられ、
ノルデスチの香りをたっぷりとさせているところでしょう。
ロマンティックなヴァルサなど、より歌ゴコロに溢れたトラックが多く、
アミルトン・ジ・オランダ・キンテートのような、
急速調でリフやブレイクでキメまくったアレンジは控えめとなっています。

ゲストにアコーディオンやピアノを迎えた曲や、
虫の音などの自然音や列車の通過音、女性のヴォイスをコラージュした
アルバム・プロデュースもよくできていて、
若い才能が発揮されたインスト傑作といえます。

Saracotia "A VISTA DO PONTO" no label no number (2015)
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オリンダのテレイロでグルーヴ ボンガール

Bongar  Samba De Gira.jpg   Bongar  29 DE JUNHO.jpg

オリンダのアフロ・ブラジレイロ宗教ナソーン・シャンバのテレイロで活動する
6人組の若者のグループ、ボンガールの新作が手に入りました。
01年に結成したボンガールは、地元のコミュニティで40年以上続く、
シャンバの儀式や祭りで演奏をしているグループです。
06年にリリースしたデビュー作を気に入っていたので、
新作が手に入るとは嬉しい限り。

デビュー作は、メレ(太鼓)、パンデイロ、アゴゴ、マラカスなどのパーカッションのみで、
リード歌手とコーラスがコール・アンド・レスポンスする、オーセンティックな内容でした。
曲ごとに使われるパーカッションが違えばリズムも多彩で、
太鼓のリズムと手拍子がポリリズムを生み出すところや、
曲の途中でリズムがスイッチして変化していくところなど、
パーカッション・ミュージック・ファンには聴きどころイッパイのアルバムでしたけれど、
こういう音楽を聴き慣れない人には、たぶん単調に感じてしまうんだろうな。

でも、今度の新作は、
そういうパーカッション・ミュージックのツボがわからない人にも親しみやすい、
ノルデスチのグルーヴを感じられるアルバムになっていると思います。
デビュー作同様、コーラスと太鼓のアンサンブルには変わらないんですけれど、
曲ごとのリズムやアンサンブルが変化に富むようになったのに加えて、
中盤あたりからギターがポスト・ロック的な音響を加えたり、
コーラスのメロディがキャッチーだったりと、
耳をひく工夫があちらこちらに施されています。

今作の音楽監督を務めているのが、
パト・フーやゼリア・ダンカンのプロデュースで知られる、
サンパウロの才人ベト・ヴィラレス。元メストリ・アンブロージオのシバとともに、
ベト・ヴィラレス自身もギターを弾いて演奏に参加しています。

デビュー作では、赤のシャツに白のスボンという揃いの衣装で、
伝統を継承する真面目な好青年ふうだったメンバーたちが、
10年経って、ずいぶんムサくるしいオッサンに変貌したもんですねえ。
コミュニティの伝統的な宗教音楽というと、
閉鎖的で堅苦しいものかと想像しがちなんですが、
開放的な明るさに溢れた、みずみずしい音楽に目を見開かされますよ。

Bongar "SAMBA DE GIRA" no label no number (2016)
Bongar "29 DE JUNHO" no label no number (2006)
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