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ファンキー・チャ・チャ エル・グラン・フェジョーベ

El Gran Fellove.jpg

ヴィンテージ・ミュージックという聞いたことのないスペインのレーベルから、
興味をソソるタイトルのオールディーズ・ラテンのCDが、
いろいろ出ているのに気付きました。
気になったタイトルをいくつか買ってみたら、
届いたCDはペーパー・スリーヴのケースにCD-Rのディスクを突っ込んだだけで、
ライナーノーツもクレジットもない、曲目が書かれているだけの、アイソのない作り。
廉価盤シリーズなら諦めもするけど、お値段はフツーのCDと変わらないんだから、
ちょっとこれはないんじゃない?

ヴィンテージ・ラテンのレア盤を次々とCD-R化しているユニコよりは、
ジャケットの印刷もキレイだし、なにより音質がいいので、
購買意欲はかきたてられますけれども、でも、ちょっと、ねえ。
同じスペインでは、かつてトゥンバオという復刻専門の優良レーベルが
活躍していた時代を知っているだけに、「雑な仕事しやがって」という不満は残ります。

手にしたCDの裏面に、お店のサイト・アドレスが書かれていたので、
ほかにどんなのがあるのかしらんとアクセスしてみたら、驚愕!
カタログに載っていたタイトルは、なんと、3300以上。
ひえ~、なんだ、このレーベル。
こんな膨大なカタログを持ってるとは想像だにせず、ビックリ。
おかげで、カタログ全部チェックするのも大変で、2日がかりになっちゃいましたよ。

カタログは、ラテンに限らず、オールディーズ全般を扱っていて、
ジャズ、ロック、ムード、ダンス・オ-ケストラ、サウンドトラックなどがずらり勢揃い。
なんだか、昔のメモリー・レコードを思い出すなあ(50代以上のオヤジ限定の述懐)。
過去にCD化されたタイトルもありますけど、まったく見ず知らずのものも、たんまりある。
これ、ちょっと欲しいかも、と書き出したタイトルが結構な数になってしまって、
う~ん、どうするかなあ。1枚千円くらいなら、思い切って買っちゃうけど、
この値段じゃなあ。ぶつぶつぶつぶつぶつ。

閑話休題。
今回買ったCDで驚いたのが、エル・グラン・フェジョーベ。
メキシコRCAに録音した代表作2作は、
エル・スール・レコーズがすでに完全復刻してくれましたけれど、
ワトゥーシやツイストなんてやっているこのアルバムは聞いたことがなく、
“WATUSSI” というタイトルの66年ムサート盤とは違うようで、原盤は不明。
間違いなく初CD化でしょう。

のっけの“Watussi” からジャイヴィーな歌い口で迫るフェジョーベ、カッコよすぎます!
全編ファンキー一色に塗りつぶした歌いっぷりが、胸をすきますねぇ。
スムースでメロウな色気たっぷりな歌いぶりを聞かせる“Calypso” に、
「ワトゥ・チャ」を連呼するファンキーな“Mueve La Cintura”
キレまくるツイストのリズムにのせてシャウトしスキャットが爆発する“Sagcuiri”。
この役者ぶり、ぼくの大のごひいきのスキャット・シンガー、
ジョー・キャロルをホーフツとさせます。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-02-14

キューバン・ジャイヴの新たなる名盤登場、
フィーリン、ジャイヴ、スキャット好きの皆さん、お聴き逃しなく。

El Gran Fellove "EL GRAN FELLOVE" Vintage Music 095
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音楽ファンが知らない優良CDシリーズ

BGM 20 LIMA.jpg

へぇ~、こんなCDがあるのかぁ。
知ってます? 無印良品が店内で流しているBGMのCDシリーズ。
無印良品のお店にあまりなじみがないもんで、
こんなCDシリーズがあるなんて、ぜんぜん知りませんでした。
フツーのCDショップじゃ売ってないから、気づかないよねえ。

アイルランド、ブルターニュ、リオ・デ・ジャネイロ、ハワイ、プエルト・リコなどなど、
世界各地でレコーディングされた自主企画の録音が20タイトル以上もあって、
ライセンス契約のタイトルを含めると、
その数30を越す一大シリーズというのだから、タイヘンです。

まるでワールド・ミュージック・ファンのために
作られたようなラインナップなんですけど、
ほとんどのワールド・ミュージック・ファンが、これ、知らないでしょう。
なんせ無印良品のお店でしか売ってないんですからねえ。
店内で流すBGMのために、こんな贅沢なレコーディングをしてるとは、驚愕。

このBGMシリーズの20番が、ペルーのリマでレコーディングされた
クリオージョ音楽アルバムだというんだから、聞き捨てなりません。
しかもプロデューサーは、なんと、
サヤリー・プロダクションのフェルナンド・ウルキアガ。
なんだってぇ~? 思わず声が裏返っちゃいましたけど、
このレコーディングのコーディネーターを務めた
アオラ・コーポレーションの高橋めぐみさんから、
「ロサ・グスマンも1曲歌ってるのよ」と耳打ちされ、まじですか!

すぐさま無印良品のお店に駆け込み、手にしたCDは、
ダンボール紙のジャケットに、「20」の文字をエンボス仕上げしただけのそっけなさ。
なんとお値段、千円ぽっきりであります。安っ!
サヤリー・プロダクション諸作のキー・パーソンともなった
エドゥアルド“パペオ”アバンはじめ、ダビラ家のマキシモ・カルロス親子、
カルロス・カスティージョなど、
『ファミリア』『ラ・グラン・レウニオン』の立役者が勢ぞろい。

歌と演奏曲が半々のレパートリーという聴きやすさが、BGMたるゆえんでしょうけれど、
クリオージョ音楽シーンで活躍する名手たちによる演奏は、
サヤリー・プロダクション制作と寸分もかわらないハイ・クオリティで、
これが千円で楽しめちゃうって、もったいないような、申し訳ないような。
音楽誌に紹介されることもないので、ぼくみたいに気づいていない音楽ファンも
大勢いるはず。『リマ編』に限らず、このシリーズは要チェックですよ。

ネットのカタログをのぞいてみたら、『リオ・デ・ジャネイロ編』は、
先月話題にあげたサックス兼フルート奏者のエドゥアルド・ネヴィスが参加した
ショーロ・セッションのようだし、『ハワイ編』『アイルランド編』なんて、
もう売り切れになってますよ。
さらに、自主企画シリーズの『BGM』とは別に、
『BGM+』というライセンス契約シリーズものもあって、
そのラインナップをみたら、まー、ぼくの愛聴盤がずらり。

スコットランドの女性ハープ・デュオ、シーリスの96年の大傑作“PLAY ON LIGHT”、
アイルランドの女性歌手アイリス・ケネディの01年の名盤“TIME TO SAIL”、
ケルト音楽バンド、フルックの02年作“RUBAI”、
カーボ・ヴェルデの女性歌手ルーラの04年作“DI KORPU KU ALMA”。
これをセレクトした人とは、お友達になれそうですねえ。

Eduardo “Papeo” Abán, Calros Castillo, César Oliva, Rosa Guzmán, Leticia Curay, Calros Ayala and others
「BGM 20 LIMA」 無印良品 WQCQ634 (2015)
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ポップに進化したイムザード

Imzad  TARHA.jpg   Imzad  IMZAD.jpg

昨年、ライ歌手のカデール・ジャポネの新作に登場して驚かされた
アルジェリアのトゥアレグ人バンド、イムザードの近作2枚が手に入りました。
コンテンポラリーなセンスを発揮しながらも、トゥアレグらしいブルージーな感覚を
しっかりと背骨にしているところが、信頼に足るバンドです。
過去2作を取り上げた記事がこちら。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-08-30
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28

14年作は前2作に比べると、幾分渋い仕上がりといえるでしょうか。
ミディアム・テンポのゆったりとした曲調が並んでいて、
全体に落ち着いたトーンになっているのが印象的です。
コンテンポラリーなセンスも今作は抑え気味で、
レゲエ・アレンジの“Adewagh Ad Mezwane” で、
控えめながらオルガンを導入したのが、ゆいいつの新機軸かな。

感情を表に出さず淡々と歌うアナスラム・エル・ハッサンと、
キレよく解き放つような歌いっぷりを聞かせるダナ・ベイという、
個性の異なるヴォーカリストの対比がこのバンドの妙味なら、
グルーヴィーなラインを弾くベーシストは今回もうなりをあげていて、
耳をひきつけられます。

ところが15年作では、がらりとサウンドを変えてきましたね。
手拍子に女声のウルレーションも華やかなアップテンポの曲でスタートして、
祝祭感を演出するかと思えば、続く2曲目では、初めてシンセサイザーが登場。
さらにはサックスを起用した曲もあり、従来とは大きくサウンド・イメージを変え、
前作の渋さから一転、ポップ感覚を強めたサウンドに仕上げています。

驚かされたのは、ツイストにアレンジした“Bess Essanagh”。
へー、カッコいいじゃない! ツイスト・ブルース・ロックだね、こりゃ。
このリズム・センスは新鮮で、ヤられました。

一方で、バンド名であり、今回のジャケットにも写っている
トゥアレグ女性の楽器イムザードも初登場しています。
これまでこのバンドの不思議だったんですが、イムザードを名乗りながら、
なぜかこれまでこの楽器をまったく使っていなかったんですけど、ついに来ましたねえ。
アルバム・タイトルともなっている曲名もすばりな“Imzad” の冒頭で、
メンバーたちがドローンのようなチャントを唸るなか、イムザードがフィーチャーされ、
まるでトゥアレグ女性のティンデが始まるかのようなイントロを聞かせます。

ほかにも、葦笛を使ったり、ヴァイオリンをフィーチャーしたりと、
随所にこれまでなかった新機軸のサウンド・メイキングをあちこちに施していて、
このバンドがポップに進化を遂げたことを、強くアピールしています。 

Imzad "TARHA" Padidou CD612 (2014)
Imzad "IMZAD" Padidou CD795 (2015)
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フルベの女性グリオ アワ・プーロ

Awa Poulo  POULO WARALI.jpg

オウサム・テープス・フロム・アフリカの新作は、
マリのフルベ人女性歌手による、ぴかぴかの新緑。
オウサム・テープスは、アフリカのローカルで流通している
カセットを発掘する再発専門レーベルでしたけれど、
最近はこうした新緑もリリースするようになったみたいですね。
アーティストとじかにライセンス契約したリリースは、
おととしのバラフォン奏者SK・カクラバのアルバム・リリースに続くものです。

フルベのグリオ歌手と聞いては、触手を伸ばさないわけにはいきませんよ。
マリばかりでなく、セネガルからカメルーンまで西アフリカの広い地域に暮らす
遊牧民フルベの音楽は、アフリカ音楽聴き始めの頃から、ぼくの大好物。
そのことはこのブログを始めた早々の記事で、打ち明けた覚えがあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-06-20

その記事では、ソンガイの歌手であるアフェル・ボクームが
フルベの歌も歌っていたことで、話題にしたんですけれど、
そのアフェル・ボクムが本作の1曲目にゲストで参加しています。
その曲は、フルベのグリオ歌手として名高いインナ・ババ・クリバリの曲。
解説によれば、アワ・プーロはインナ・ババ・クリバリの娘だといいます。
アルバム・ラストも母インナの曲で、1曲伝統曲があるほかは、すべてアワの曲です。

ンゴニ、ソク、エレクトリック・ギター、カラバシ、タマ、フルートに
女性コーラスを伴奏に歌うフルベ音楽らしいペンタトニックのメロディが、
滋味な味わいに富んでいて、とても和みます。
同じマリでも、マンデの華やかな音楽とはまったく別種の味わいで、
むしろソンガイの音楽と親和がありますね。

あと、フルベらしさを象徴するのが、フルートです。
便宜上フルートと称されることが多いんですけれど、
もちろん西洋楽器のフルートではなく、木製の笛です。
奏者が息を吹き込む音の混じり合う、ノイジーな音色が特徴的で、
フルベ音楽に限らず、最近はマンデ・ポップや、
セネガルその他西アフリカの音楽で広くフィーチャーされる機会が増えたので、
聞き覚えのある人も多いはずです。

インターナショナルなマーケットにめったに登場しない、フルベ音楽の貴重な一作です。

Awa Poulo "POULO WARALI" Awesome Tapes From Africa ATFA024 (2017)
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甘美なメロディに蕩けるビギン ロナルド・チュール

Ronald Tulle  F.W.I..jpg

タニヤ・サン=ヴァルの新作、すんごくイイじゃないですか。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-01-13
年明けから絶賛愛聴中で、毎朝の通勤が楽しいったらありゃしない。
タニヤの艶っぽい歌声もサイコーなら、楽曲も粒揃いで、捨て曲なし。
ファンの欲目とお思いの方もいるでしょうが、
こりゃあ、タニヤの代表作“MI” 以来の傑作といって間違いありません。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-07-19

2枚組全部を聴き終えても、まだタニヤの声が名残惜しく、
別のディスクに移るのが心残りでしょうがなかったんですが、
続けて聴くのに、最高といえる1枚を手に入れましたよ。
それがマルチニークのピアニスト、ロナルド・チュールの05年デビュー作。
10年以上も前のアルバムで、在庫処分のアウトレット品で買ったんですが、
これが極上のアルバムだったんですね。

そのオープニングの曲を歌っているのが、タニヤ・サン=ヴァルなんですよ~。
クレオールの粋をギュッと濃縮した、メランコリックなメロディが実に甘美で、
それを歌うタニヤのせつなげな吐息混じりの歌いぶりに、心を鷲づかみにされます。
AメロからBメロに転調する場面では、脳内のドーパミンが爆発しました。

このズークからビギンへと移る2枚の連続が、すごくいい繋がりなんですよね。
ロナルド・チュールといえば、ビギン・ジャズの大傑作“RAISING” が忘れられない人。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
10か月近く通勤途上でヘビロテだった“RAISING” は、
ミジコペイのライヴDVDとともに、15年のマイ・ベスト・アルバムにも選びました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-12-30

“RAISING” の何が痛快だったって、マリオ・カノンジュと肩を並べる
ピアニストとしての腕前だけでなく、コンポーザー、アレンジャーの才能だったんですよね。
特にソング・ライティングの能力は傑出していて、
こんなに<あでやかな>メロディを書ける人は、世界を見渡したって、そうそういませんよ。

デビュー作の本作は、大勢のヴォーカリストをフィーチャリングした
歌ものアルバムになっているんですが、
ここでもロナルドの書くメロディがすごくいいんですね。
冒頭のタニヤ・サン=ヴァルの曲しかり、ラルフ・タマールが歌う2曲、
カッサヴのヴォーカリスト、ジャン=フィリップ・マテリーが歌った曲も、絶品です。

インストも聴きもので、
ミジコペイをホーフツとさせるダイナミックな展開のアレンジを施した、
ラテン・ジャズの“Rouen 86” は、アルバム最大のヤマ場となっています。
ホーン・セクションとヴィブラフォンを配し、
たった4管とは思えぬビッグ・バンドばりのサウンドに、胸躍るんですが、
そのスリリングなアレンジの妙を楽しめるのも、
ロナルドの曲の良さがあってこそなんですよね。

Ronald Tulle "F.W.I." Créon Music 8641322 (2004)
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再創造されたイングランドの伝統音楽 レディ・マイズリー

Lady Maisery  CYCLE.jpg

チャイルド・バラッドのタイトルからグループ名を取った、
イングランドの伝統音楽を掘り下げる女性トリオ。
前作“MAYDAY” から3年ぶりの新作がリリースされました。

レイガンズ・シスターズに始まり、
リチャード・ファリーニャ、トッド・ラングレンという冒頭の3曲に、むむむ。
選曲がまぁシブいというか、マニア度高っ。

古書や歴史的な音源などから古謡を発見してくる研究熱心さは、
このグループのデビュー時からの個性ですけれど、
アメリカの60年代フォークに目配りするほか、
鬼才トッドの多重録音ア・カペラを取り上げるとは感服。降参です。
なるほど、彼女たちの音楽的なアイディアの豊かさは、トッドに通じるのかもなあ。

イングランドの伝統音楽を、いかに表現するかという課題は、
アイルランドやスコットランドのような定型を持たないイングランドでは、
ことのほか重大な意味を持ってきましたよね。
50年代のフォーク・リヴァイヴァルの時代からずっと続いてきたその課題は、
イングランドの音楽家たちに高い音楽性を常に要求し、
新たに伝統を再創造する音楽的挑戦が求められてきました。

その道のりを知るからこそ、このレディ・マイズリーの新作には、
ここまでやってきたのかという、深い感慨を持たずにはおれません。
ハープ、コンサーティーナ、フィドル、バンジョー、
バンシタール(!)、ピアノ、カンテレなどなど、
さまざまな楽器を自在に駆使しながら、囚われない自由な発想で
サウンドを組み立てながら、生み出される音楽は、
イングランドの伝統を強固に感じさせるところが、スゴイ。

3人の屈託のないオキャンな歌いぶりは、実にハツラツとしていて、
カビ臭い伝統の世界とは無縁の、過去と未来を繋ぐ音楽を奏でています。

Lady Maisery "CYCLE" RootBeat RBRCD33 (2016)
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ガーリックの子守唄 ジェナ・カミング

Jenna Cumming  TÀLADH.jpg

全編、子守唄。
ガーリック(スコットランドのゲール語)で歌った、スコットランド古謡集です。

スコットランド、インヴァネスの出身、
現在は北西沖アウター・ヘブリディーズの島々のひとつ、スカルパイー島に暮らす
女性歌手ジェナ・カミングの2作目。デビュー作が出たのは05年だから、
11年ぶりのアルバムになるわけか。寡作の人ですねえ。

レパートリーの多くは、ジェナの娘が生まれた時にじっさいに歌ってきた子守唄とのこと。
ジャケットの表裏に載せられた、赤ちゃんを抱っこしたお母さんの写真は、
ジェナ自身なのかなと思ったら、そうではなく、
表紙のお母さんは本作のプロデューサーの娘で、
裏のお母さんは共同プロデューサーの娘さんだそうです。

そんなジェナ自身と制作スタッフの思いが込もったガーリック・ララバイ・アルバム、
ほとんどは無伴奏で歌われているんですけれど、無伴奏と意識させないさりげなさは、
子守唄という親しみやすさのせいでしょうか。
オルゴールやハープが伴奏に付く曲もわずかにあるんですが、
ジェナのシンギングに変化がないせいか、
伴奏のあるなしをほとんど意識せずに聴き通せるところが、本作の白眉と言えます。

静かに歌われる子守唄のアルバムには、歌が持つ治癒の力が備わっていて、
小品と侮れない深みがあります。
胸の奥深いところに、すうっと雫が落ちていくのを覚える、美しい作品です。

最後に、一言だけ不満を残しておくと、エコーをかけすぎた録音が残念ですね。
もっとデッドに録った方が、インティメイトな雰囲気が強調されたはずで、
その方が無伴奏の子守唄にはふさわしかったんじゃないでしょうか。

Jenna Cumming "TÀLADH" Clann Sona CSCD01 (2016)
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クランシー家のルーツを深めて ドーナル・クランシー

Dónal Clancy  ON THE LONESOME PLAIN.jpg

シャリンとしたギターの音色がいいなあ。
硬質なんだけど、タッチは柔らかくて、
シャープすぎず、まろやかにギターを歌わせています。
70年代にブルース・コバーンのアクースティック・ギターにホレこんだ
ギター・ファン(古っ!)には、たまらない響きじゃないでしょうか。

ドーナル・クランシーは、アイリーン・アイヴァーズのバンドで活躍し、
チーフタンズの99年の来日公演にも、
アイリーンとともにゲスト参加でやって来たギタリストだということを今、調べて発見。
え~、そうだったんだ。それなら、ぼくも恵比寿のザ・ガーデンホールで
観ているはずなんですけど、ぜんぜん印象に残ってないなあ。

ドーナルのバイオグラフィを読んだら、60年代アイリッシュ・フォークの名グループ、
クランシー・ブラザーズの一員だったリアム・クランシーの息子なんですね。
ドーナルは98年にニューヨークへ居を移して、アイリーン・アイヴァーズのバンドのほか、
00年にジョン・ドイルの後任ギタリストとしてソーラスに参加していたとのこと。
03年には、前に在籍していたダヌーに再加入したようです。
それじゃあ、ぼくもドーナルのギターを聴いていたのかなと、CD棚をチェックしてみたら、
ソーラス、ダヌーともども、ドーナル在籍時のアルバムは見つからず、
やはり今回で3作目というソロ作が初体験だったようです。

レコーディング・スタジオの録音風景を収めたジャケットには、
なにげにマーティン・カーシーのデビュー名作が床にころがっていますけれど、
ドーナルのギター・プレイには、バート・ヤンシュやデイヴィ・グレアムに匹敵する
気品がありますね。キリッしたプレイには、典雅な上品ささえ感じさせます。
トラッドの土臭さとは無縁の、伝統音楽を芸術的と呼べるレヴェルまで
磨き上げたギター・スタイルといっていいんじゃないでしょうか。

本作でギター・プレイとともにウナってしまったのは、彼の深い声です。
お父さんの時代のアイリッシュ・フォークとは趣が違い、
そのディープな歌声には、アイリッシュ・トラッドの奥の細道に分け入ろうとする
強い意志がうかがえます。

ドーナルは、08年に奥さんと3人の子供たちとともにアイルランドへ帰国し、
クランシー家のルーツに立ち返った音楽活動をしているとのこと。
本作は、父親の遺志を受け継ぎ、アイルランド伝統の物語を、
持ち前の深い声と、ギターの洗練された技巧によって織り上げた名作といえます。

Dónal Clancy "ON THE LONESOME PLAIN" Dónal Clancy DCLPCD16 (2016)
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アブストラクト・ヒップホップ・ジャズ スティーヴ・リーマン

Steve Lehman & Sélébéyone.jpg

コロンビア大学で博士号取得をした、アルト・サックス奏者のスティーヴ・リーマン。
超知性派フリー・ジャズの人、というくらいのことしか知らなかったんですが、
セネガル、ダカールのアンダーグラウンドなヒップホップ・シーンで活動する
ラッパーをフィーチャーしているという新作を聴いてみて、ビックリ。
こんな面白いジャズをやってた人だったのか。

ヒップホップのビートとジャズを、
「融合」というより「ぶつけ合った」といった印象の本作。
グループ名とタイトルに付けた「交差点」というウォロフ語が意図する通り、
アメリカ人ラッパー、セネガル人ラッパー、アメリカ人サックス奏者の3者が、
国籍やジャンルを越えたガチンコMCバトルを繰り広げています。

グラスパー一派のヒップホップとジャズのアプローチが、
ちっとも面白く聞こえないぼくにも、これは面白く、新鮮でしたね。
スティーヴのサックスのブロウと、ラッパーのフロウが同等に絡んでいて、
ラップをフィーチャーするとか、バックトラックとソロイストといった関係でなく、
スリリングなMCバトルをしているのは、まさにヒップホップのフリースタイルであり、
フリー・ジャズのインプロヴィゼーションでしょう。

リズム・アプローチも多彩で、スティーヴ・コールマンのファイヴ・エレメンツを
グレード・アップしたようなアンサンブルは、すごく刺激的です。
ただ、全面的にかっこいい!とハシャゲないのは、
エレクトロを駆使して作り込んだサウンドが、ウザいと感じる場面も多いから。
ソプラノ・サックス奏者作の陰鬱な曲も、ちょっとウンザリだなあ。
やっぱ、この人、アタマ良すぎるのが災いしてるような。

Steve Lehman Octet  MISE EN ABÎME.jpg

むしろ、前作のオクテット編成の方が、ぼくは好みでした。
作曲と即興を緻密に織り上げた作品で、
スティーヴのブロウにタイショーン・ソーリーのドラムスがぴたりと合わせていったり、
いわゆるジャズ的快感に満ち溢れていて、かっくいい~♪
スティーヴのアルトの太い音色もいいよなあ。
なんだかエリック・ドルフィーの生まれ変わりを見るようで、ホレボレとしちゃいましたよ。

いや、これ、2014年のジャズの大傑作じゃないですか。
もっと前に聴いてれば、ぜったい年間ベストだったのになあ。

Steve Lehman & Sélébéyone "SÉLÉBÉYONE" Pi Recordings no number (2016)
Steve Lehman Octet "MISE EN ABÎME" Pi Recordings no number (2014)
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オーネット門下生のフリー・ファンク対決 梅津和時×グラント・カルヴィン・ウェストン

梅津和時×Grant Calvin Weston  FACE OFF.jpg

梅津和時とグラント・カルヴィン・ウェストンの共演作!!
うわぁ、これは意表を突かれたなあ。

オーネット・コールマンのプライム・タイムのドラマーであり、
ジェイムズ・ブラッド・ウルマーを支えたドラマーとしても忘れられないウェストンと
梅津さんが、フリー・インプロヴィゼーションを繰り広げるだなんて、夢のよう。
ぼくにとってお二人は30年来、いや、もっとか、のファンですからね、
願ってもないアルバムです。

2017ベスト・ジャケット大賞を進呈したい傑作ジャケットは、
二人がメンチ切りしていて、『対決』というタイトルも戦闘モード丸出し。
ラストのオーネット・コールマンの“Lonely Woman” 以外、
すべて完全即興、しかも全曲ワン・テイクで録ったという、
おそるべき集中力による作品。

圧倒されるのは、梅津の引き出しの多さ。
淀みなく溢れ出す音列はラプソディカルでも、その饒舌さに文学性や演劇性がまとわず、
純音楽的な演奏に徹するところが、梅津の一番の魅力ですね。
そして、次々と繰り出す梅津の技に、
フレキシブルに対応するウェストンの柔軟なドラミングも最高。
梅津が引っ張る演奏もあれば、カルヴィンの手数の多いドラミングの後を追って
梅津が吹く曲もありの、完全な互角試合となっていますね。

また、4曲目のように、梅津に好きに吹かせたまま、
カルヴィンはクールにステデイなパターンで、リズムを叩く曲もあり、
二人が対決モードで丁々発止を繰り広げるばかりでもないところもいいな。
二人の協調ぶりも聴きどころな、オーネット門下生二人によるフリー・ファンクです。

梅津和時×Grant Calvin Weston 「FACE OFF」 ZOTT ZOTT101 (2016)
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街の声・山の音楽 ロサ・グスマン

Rosa Guzmán León Y Rolando Carrasco Segovia.jpg

いったい、どれくらい聴いたかなあ、ロサ・グスマンの2枚組。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-12-17
伴奏はギターとベースだけという地味なアルバムで、
しかも2枚組というヴォリュームにかかわらず、
半年間くらい毎日聴き続けたもんなあ。
この人の滋味な歌声には、ホントに惚れこみましたねえ。

そんな夢中になったロサ・グスマンですけれど、
その後音沙汰なくって寂しく思っていたら、嬉しい新作が届きました。
デビュー作がジャズ・ミュージシャンを起用した新感覚のクリオージョ音楽だったので、
今度はオーセンティックなクリージョ音楽で迫るのかなと思っていたら、
意外や意外、なんと「街の音楽(クリオージョ音楽)」ではなく、
「山の音楽(アンデス山岳地帯の音楽)」ウァイノを歌っているのでした。

これにはびっくりですね。
バリオという生粋のクリオージョ文化の中で育った人なのに、ウァイノも歌えるとは。
思えば、ロサがデビュー作で聞かせた魅力といえば、
バリオ育ちのクリオージョ歌手が持つ野趣な味わいとは違って、
「アフロ・クール」とも呼ぶべき独特の感覚にありました。
ドラマティックに歌い上げない、肩の力が抜けた自然体の歌い回しの中に、
クリオージョが持つ情愛をしっかりと滲ませることのできる人で、
そのさりげなさに、現代性が備わっているのを感じさせました。

そんなロサの魅力が、アンデス音楽を取り上げた本作でも、しっかりと表われています。
今回も伴奏はミニマムで、ギタリスト一人だけ。
アンデス・ギターの至宝ラウル・ガルシア・サラテと、
クリオージョ音楽の名ギタリスト、フェリックス・カサヴェルデに学んだ
若手ギタリストのロランド・カラスコ・セゴビアです。

アフロ・クールなロサの街の声が歌う、
アヤクーチョのウァイノ、アレキパのヤラビ、フニンのウァイノといった山の音楽は、
また独特の清廉な味わいがあります。
オーガニックな温かみは、クリオージョもウァイノでも変わらないロサの歌の良さですね。
2曲だけ、ベースとカホンが参加して歌うヴァルスもあって、
温もり溢れる滋味に富んだ歌声に、ああ、いいなぁと、思わず涙腺がゆるみます。

Rosa Guzmán León Y Rolando Carrasco Segovia "SONQOLLAY" Paqcha Sirena Producciones no number (2016)
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魔法にかかったリマ

Lima Bruja.jpg

先週の土曜日、四谷いーぐるで、ペルー音楽研究家の水口良樹さんと、
ペルーで現地録音した経験もお持ちのアオラ・コーポレーションの高橋めぐみさんによる、
「ペルー音楽映画とその周辺」と題したイヴェントが開かれました。

サヤリー・プロダクションを主宰するラファエル・ポラール監督による
『リマ・ブルーハ』の上映を目玉にしたイヴェントで、
『ラ・グラン・レウニオン』にカンゲキした音楽ファンとしては、
ずうっと観たくてしょうがなかった映画。喜び勇んで、馳せ参じましたよ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-09-17

映画は11年に公開され、ペルーで12年に数々の映画賞を受賞していて、
15年にDVD化もされていたようなんですが、
日本にはまったく入ってこなかったんですよねえ。
今回のイヴェントに合わせ、アオラ・コーポレーションが
DVDとブルー・レイの両仕様を輸入し、会場で販売していたので、
さっそくDVDも購入させていただきました。
ちなみに、DVDはオール・リージョンのNTSC方式。
しかも、なんと嬉しい日本語字幕付であります!

水口さんの解説によれば、リマの古老たちをレコーディングした
サヤリー・プロダクションのフェルナンド・ウルキアガは、このプロジェクトを
「ペルー版ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と称されるのを嫌っているとのこと。

ブエナ・ビスタは、キューバ音楽を欧米人が発見したものでしたけれど、
このプロジェクトは外国人ではなく、同国人が見出したという点がまず違うし、
ブエナ・ビスタがプロの音楽家たちであったのに対し、
こちらはアマチュアの音楽家たちであることが、決定的に違うと指摘していたそうです。

ぼくも「ペルー版ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と安易に書いていたので、
映画を観ながら、なるほどなと反省させられました。
リマという同じ街に生まれ育ちながらも、
こんな音楽文化が存在することをまったく知らずにいたというラファエルの証言は、
ブエナ・ビスタではなく、
むしろ70年代ブラジルのサンバ復興と共通するものがありますね。

リマ庶民の普段着姿のクリオージョ音楽が「発見」された場所は、
リマに暮らす住民といっても、おいそれと簡単には近づけない危険地帯。
まさしくリオのファベーラと同じように、
隔絶されたコミュニティの結社のような組織の中で、
クリオージョ音楽が育まれていたわけで、
リマの一般住民が知ることはできなかったわけです。

クリオージョ音楽とサンバを育んだ土壌の共通性を挙げてみれば、
リマのバリオとリオのファベーラ、
ペルーのハラナとブラジルのパゴージがありますね。
そこで歌う古老たちの顔だって、よく似てるじゃないですか。
黒サングラスのレンチョなんてカルトーラみたいだし、
ネルソン・サルジェントやベゼーラ・ダ・シルヴァそっくりのオッサンもいたぞ。

ま、それはともかく、20世紀初頭から都市の音楽として生まれ、
20~30年代に花開いた黄金時代を迎え、
劇場からラジオというメディアの発達とともに、大衆文化の一翼を担ったこと。
その後、商業化が進んで、大スターたちが活躍する華やかな芸能界とは別世界で、
貧しい庶民のコミュニティの中で音楽が育まれていったところは、
クリオージョ音楽もサンバも、同じ道のりを歩んだといえます。

そうか。ということは、“LA GRAN REUNION” は、70年代サンバ・ブームの再評価で、
俗に言う「裏山のサンバ」の記念碑となった
“ENCONTRO COM A VELHA GUARDA” のペルー版だったといえるのかもしれませんね。

【訂正とおわび】
水口さんから、サヤリー・プロダクションの主宰者は、
「映画でもカスタネットやカホンを叩いていたフェルナンド・ウルキアガ氏です。
ラファエル・ポラールは、フェルナンドに依頼されて
グラン・レウニオンのPVを作ったことから
このドキュメンタリーを作ることとなった若手映画監督です」とのご指摘をいただきました。
記事の該当箇所を訂正させていただきます。水口さん、ありがとうございました。

[DVD] Dir: Rafael Polar "LIMA BRUJA : Retratos De La Música Criolla" Sayariy Producciones y Tamare Films no number (2011)
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セネガル・日本同時デビュー サリウ・ニング

Saliou Gningue  YOON BI.jpg

去年の夏、セネガルでアーティストのマネージメントや
プロモーションをしているダカール在住の日本人女性から、
発売前の男性歌手のアルバムを聴いてほしいというメッセージが
フェイスブックに届きました。

送られてきたMP3の音源を聴いてみると、
一聴してグリオ出身とわかる、鍛え上げられたヴォーカルが飛び出し、
おおっ、これはと、耳を引きつけられました。
バックの演奏も、サバールとタマのパーカッシヴなサウンドが弾ける、
グルーヴ感いっぱいのンバラを展開していて、こりゃ、いい!とゴキゲンになったんでした。

サリウ・ニングというこの男性シンガー、
ダカール、ゲジャワイのグリオの出身で、幼い頃からサバールなど打楽器を演奏し、
歌の才能を認められ、シンガーとしてキャリアを積んだ人とのこと。
澄んだハイ・トーンの声で、高音に駆け上っていく節回しの中に
こぶしをつけていく妙技は、グリオならではといえます

その後、メッセージをくれたニング・もえこさんが
セネガルから一時帰国するというので、お会いしてお話を聞かせてもらいました。
苗字が同じなので、もしやとお尋ねしたところ、やはりご夫婦とのこと。
もえこさんは、00年にセネガルを旅して、
国立舞踊団のメンバーからダンスを学んだのをきっかけにセネガルにのめりこみ、
以来ダンスのワークショップやコンサートの運営などを主催する
「アフリカルチャー」を立ち上げて活動をしてきたんだそうです。

アルバム冒頭の1曲目“Mbeguel” で、
「わたしからあなたへ このうたをとどけよう
ひろいせかいにたったひとりのわたしのすきなあなたへ」
とサリウが日本語で歌っているのは、そういうことなのねと、ナットク。
ウォロフ語で「愛」というタイトルを付けられたこの曲では、
もえこさんもバック・コーラスを付けていて、
いやあ、当てられるなあ。新婚らしい微笑ましさであります。

“Yaay” では、速射砲のように乱打するサバールと、言葉を投げつけてくるタスが
鋭い切れ味で畳みかけてくる一方、サリウがふくよかな声で弾むように歌い、
シャープさとともに厚みのあるグルーヴを生み出します。
ラストのコラとフラニの笛をフィーチャーした“Nabi” は、
タマの超絶技巧にも耳奪われますが、
伝統寄りのサウンドのバックで、控えめに鳴らすシンセがカクシ味として利いています。

しっかりと作り込まれたサウンド・プロデュースが鮮やかで、
たった5曲27分弱のミニ・アルバムなのがなんとも物足りず、
もっと聴きたくなりますねえ。
実力確かな逸材なので、今後のフル・アルバムを楽しみに待ちつつ、
昨年実現しなかった日本ツアーも、期待しましょう。

なお、本デビュー作は、下記で扱っているとのことです。
BOGOLAN Market
東京都杉並区阿佐谷南3-12-7-1F
http://www.bogolanmarket.com/

boutique AMINATA
http://boutiqueaminata.blogspot.sn/p/work-shop.html
https://www.facebook.com/saliou99/posts/929281923876050

Saliou Gningue "YOON BI" African Sant AFSA001 (2017)
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カメルーンのアフロ・ファンカー タラ・アンドレ・マリー

Tala A.M..jpg

オーストリアのPMGによる70年代アフロ・ソウル/ディスコのリイシューLP/CD化が、
怒涛のイキオイで進んでいますね。
DJユースのマニア向けのラインナップなので、
フツーのアフリカ音楽ファンは、無視してオッケーと言いたいところなんですが、
ファンキー・ハイライフ名盤のパット・トーマスとエボ・テイラーの共演作や、
ガンビアのゲレワルなんてホンモノの名盤が紛れ込んでたりするから、油断なりません。

マヌ・ディバンゴやソリ・バンバをストレート・リイシューしている、
パリとロンドンに拠点を置くアフリカ・セヴンも、
一部マニア向けの嗜好が強く、どうもうさん臭いレーベルですね。
このレーベルに不信感を抱いたのは、
マヌ・ディバンゴの代表作“AFROVISION” のリイシューがきっかけでした。

このマヌの大傑作、日本ではとっくの昔にボンバがCD化しましたけど、
海外でのCD化はこれが初。
ボンバ盤はすでに廃盤となって久しく、アフリカ・セヴンから原盤提供された
クレオール・ストリーム・ミュージックが紙ジャケCD化して、
日本盤としても発売されたんですが、これが許しがたいシロモノだったんです。

クレオール・ストリーム・ミュージックのふれこみが、
「2014年最新デジタル・リマスター音源を使用。
「Big Blow」は貴重なロング・バージョンを収録。
アルバム・バージョンより2分ほど長いミックスになっている」というので、
“Big Blow” にロング・ヴァージョンがあるのか!と期待して聴いたら、
これがトンデモなミックス。

曲の一部をカット・アンド・ペーストして、水増ししただけの編集で、
しかもそのエディットの稚拙なことといったら、シロウトのDJがやったようなお粗末さ。
演奏の途中で音質ががらりと変わる、フンパンもののミックスなんですね、これが。
かの名演に、いったい何してくれたんだよと、頭に血が上りました。

前フリが長くなりすぎましたけれど、
そんなわけで、PMG同様アフリカ・セヴンも無視していたもので、
まさかタラ・アンドレ・マリーのこんな好編集盤が出てたとは、気付きませんでした。

タラ・アンドレ・マリーは、70年代のアフリカで、
最高にクールなアフロ・ファンク聞かせた、カメルーンの盲目シンガー。
70年代初めのデビュー時はフォーク・ロックのような音楽性だったのが、
70年代半ば頃から、ファンクへがらりとスタイルを変え、
80年代以降はカメルーンのフォークロアをファンク化して、
ベンド・スキンと称するスタイルを作り出した人です。

タラを有名にしたのが、初ヒットとなった73年の“Hot Koki”。
74年にアフリカにやってきたジェームズ・ブラウンが聴いて気に入り、
“Hustle!!! (Dead On It)” のタイトルで自作曲として発表したおかげで、
曲を盗まれたタラの名は、一躍アフリカ中に広まったのでした。
4年にわたる法廷闘争の結果、ジェームズ・ブラウンは盗作を認め、
タラに賠償金を支払っています。

今回、アフリカ・セヴンがコンパイルした編集盤も、
“Hot Koki” を皮切りに、73年から78年までのアルバムから選曲しています。
この時期は、タラはアフロ・ファンカーとして、もっともヒップなファンクを聞かせていた時期。
選曲も申し分なく、クールネスなタラのファンクの魅力を余すことなく伝えています。
なお、サブ・タイトルに「75年から78年」とあるのは誤りで、
デビュー作“HOT KOKI” のリリース年を75年と誤認したらしく、正しくは73年です。
さらに、アルバムの最後で72年のデビュー・シングル曲を選曲しているので、
正確には「72年から78年」ですね。

これまでタラの編集CDでは、レトロアフリックが09年に出していますが、
72年のデビュー・シングルから98年録音までを、アトランダムに並べた曲順が難でした。
前にも説明した通り、タラは時代によってがらっと音楽性を変えたミュージシャンなので、
その変遷を理解できるような曲順にすべきだったのに、
冒頭に90年代に完成させた自己のスタイルをタイトルとした92年の曲から始め、
次いで先ほどの73年の“Hot Koki” (レトロアフリックは74年と誤記)を置くのは、
なんとも座りが悪いものでした。せっかくの内容も、曲順が台無しにしていて、
拙著『ポップ・アフリカ800』に選ばなかったのも、そういう理由からです。

今回は70年代のファンク期にスポットをあてることで、
希代のアフロ・ファンカーの魅力を、くっきりと打ち出すことに成功しています。
さらに、そうしたファンク・チューンをずらりと並べたあと、
最後に72年のデビュー・シングル曲“Mwouop” で締めくくったのは、粋な計らいです。

タラのデビューに力を貸した、同郷のマヌ・ディバンゴがマリンバで参加した
爽やかなポップ曲で、フォーク・ロック期のタラの名曲です。
前のレトロアフリック盤でも収録されていましたが、
アルバム・ラストにそっと添えたという曲順が実に効果的で、
編集盤での曲順の大事さが、如実に示されたといえますね。

“Mwouop” を選曲するとは、コンパイラーのジョン・ブライアンという人、
タラの魅力をよくわかってますね。グッド・ジョブです。

Tala A.M. (Tala André Marie) "AFRICAN FUNK EXPERIMENTALS 1975-1978" Africa Seven ASVN018CD
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