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ビルマ・ギターの名盤誕生 ウー・ティン

U Tin  MUSIC OF BURMA.jpg

快挙です!
昨年、世界初のミャンマーのスライド・ギターのCDを制作した井口寛さんが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-06-15
ミャンマー最高峰のギタリスト、ウー・ティンのソロ・アルバムを、
ついにものにしましたよ!

いや~、カンゲキ。
昨年夏、井口さんと会う機会があり、その折に、ぜひ名手ウー・ティンのギターを
録音してくださいよと熱烈要望したばかりなんですが、まさかこんなに早く実現するとは。
ウー・ティンからじきじきにギターを習ったという、
鹿児島在住のギタリスト柳田泰さんを介して、録音が実現したとのことで、
日本人の弟子がいたなんて、ビックリです。

ウー・ティンの略歴については、アウン・ナイン・ソーの記事で触れたので省くとして、
ミャンマーにハワイアン・スタイルのスライド・ギターが入ってきたのは、
イギリス統治下の20年代という説がある一方、43年という記録もあり、詳細は不明です。
タチンジー(古典歌謡)やカーラボー(流行歌謡)を演奏するために、
F G C F G C のチューニングに変え、
バマー・ギター(「ビルマ・ギター」の意)と称されました。
ちなみに、メダリンと呼ばれるミャンマーのマンドリンも、
同じチューニングとなっています。

バマー・ギター黎明期の名手にサヤコカー Saya Ko Kah という人がいて、
コロンビアに数多くのSP録音を残したようで、ぜひ聴いてみたいものですねえ。
無声映画の伴奏などで、40~50年代に盛んに演奏されたスライド・ギターも、
その後すっかり廃れてしまい、ウー・ティンが数少ない後継者として残ったものの、
今はその名を知る人も、ほとんどいなくなってしまいました。

そして、そのウー・ティンもすでに80歳代半ばという年齢。
正直言って、録音を残すことに意義があり、
演奏内容の方はあまり期待していなかったんですが、CDを聴いてブッとびました。
これが、80代の老人の演奏だなんて。カクシャクとしたその演奏ぶりは、
先に出したアウン・ナイン・ソーとは格が違う。
まさにヴァーチュオーゾの名にふさわしいプレイで、
熟達した演奏ぶりは、みじんの衰えも感じさせません。

タチンジーの歌を、そのままギターに置き換えたプレイは、
ミャンマー独特の節回しやこぶしを、絶妙に表現しています。
歌い出しのざくっと入るニュアンスを、
強いピッキングで、切れ味のあるギターのフレージングでプレイするところなど、
力強さと繊細さのコントラストが、実に鮮やかです。

ウー・ティンのギターに比べると、若いアウン・ナイン・ソーのギターの歌わせ方は、
ずいぶんと淡泊で、ニュアンスが乏しく聞こえてしまいます。
やはりヴァーチュオーゾのヴァーチュオーゾたるゆえんは、
アタックの強い弦さばきに表われますね。
インレー・ミン・マウンのサウンしかり、バトゥル・セク・クヤテのコラしかりです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-01-15
このアルバムでは、メタル・ボディと木製ボディの2種類の
リゾネーター・ギターを弾いていますが、
そのどちらでも、妙技は変わりませんね。

歌のメロディをスライドでなぞるフレージングのほか、
サウン(竪琴)のフレーズを模したパートなど、単弦ソロを中心に分散和音が弾かれ、
コード・プログレッションはほとんど出てこないんですが、
3曲目の一部でちらりと、デルタ・ブルースのトレイン・ソングのような
リックが飛び出す曲などもあって、興味をそそられます。

長年謎のベールに包まれていたバマー・ギターの最高の名演が、
クリアな音質で聴けるという、またとないアルバム。
昨秋『CROSSBEAT Presents アコースティック・ギター・ディスクガイド』に寄稿した
「世界のアコースティック・ギタリストたち」に、ぜひ載せたかったなあ。
あの記事ではアウン・ナイン・ソーのCDを取り上げましたけど、
ウー・ティンのこともちゃんと書いておきましたからね。

スライド・ギター好きや、ミャンマー音楽のファン必聴の快作。
ライ・クーダーにも、ぜひ聞かせたいもんです。

U Tin "MUSIC OF BURMA BURMESE GUITAR" Rollers ROL003 (2016)
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