お悔やみ アデミルジ・フォンセカ
ショーロの女王さまアデミルジ・フォンセカが、3月27日、イパネマの自宅で亡くなられました。
アデミルジに師事した片山叔美さんからのメールによれば、
亡くなる前日に芸歴70周年を記念したテレビの収録でみずからの音楽人生を語り、
エンリッキ・カゼスたちの伴奏で思い出の曲を歌われるほどお元気だったとのこと。
3月4日に91歳の誕生日を迎えたばかりで、
この元気なら100歳も楽勝と思われていただけに、突然の訃報は残念でなりませんが、
最後まで現役の歌手をまっとうされ、幸せな生涯だったのではないでしょうか。
ご存知とは思いますが、激しく上昇下降するメロディが特徴の器楽曲ショーロに歌詞をのせ、
初めて歌ってのけたのが、アデミルジ・フォンセカでした。
ジャズでいうなら、ビバップをヴォーカリーズしたバップ・シンガーにあたるわけですけど、
ジャズより30年も早く誕生した、インストルメンタル音楽の先達であるショーロのことですからね。
バップ・ヴォーカリストなんてものが、まだこの世に存在しない1941年に、
アデミルジはショーロをヴォーカリーズしたんですから、スゴい話です。
1941年といったら、ビバップがミントンのプレイハウスでやっと産声をあげたばかりのことですよ。
アデミルジの魅力はなんといっても、「ヒップ」なカッコよさ。
難度の高い旋律を、急速調のリズムにのり、超絶の早口ヴォーカルで歌い切る爽快感。
サーカスのような離れ業を聞かせながら、
難解になるどころか、どこかコミカルで楽しさいっぱいの雰囲気を撒き散らすポップ感覚は、
「ヒップ」そのものです。
アデミルジの全盛期といえる40年代録音のヒップさは言うに及ばず、
79年のベイビー・コンスエロのアルバム“P'RA ENLOUQUECER” で、
ベイビーとアデミルジが共演した“Apanhei-Te Cavaquinho” のカッコよさも忘れられません。
ロック世代のベイビーの歌いっぷりを凌ぐ、アデミルジのリズムにのるスピード感が圧巻でした。
そうそう、2年前いーぐるのレココンでショーロの歴史を特集した時、
アデミルジの50年録音“Brasileirinho” をかけたんですけど、
お客さんに大ウケで、曲の最後に拍手が起こったほどでしたからね。
おおしまゆたかさんも「すごいね、この人」と驚嘆されてましたっけ。
アデミルジのショーロ・ヴォーカルには、時代を超えて伝わるカッコよさがあるという、
なによりの証明であります。
残念なのは、そんなヒップなアデミルジの名唱を聞けるCDがほとんどないことで、
全盛期の40年代録音をまとめたCDが出ていないのは、遺憾千万としか言いようがありません。
(大昔に「MPBのアイドルたち」シリーズで、40年代録音を復刻した
コンチネンタル盤LPがCD化されたことはありますが、とっくに廃盤)
42年にコロンビアへ吹き込んだデビュー録音“Tico-Tico No Fubá” を含む6曲に、
44年から50年にかけてコンチネンタルに録音した16曲の全22曲は、
ぜひまとめてコンプリートで復刻してもらいたいものです。
【追記情報】田中勝則さんから、SP13枚・全25曲あるとのメールをいただきました。
曲数が半端なのは、他の歌手が片面を歌ったSPが1枚あるそうです。
田中さん、情報ありがとうございました。
このあとトダメリカへ移籍して50~55年に録音した34曲は、
15年くらい前、2枚のCDに分けて全曲復刻されましたが、
アデミルジのトダメリカ録音は、彼女の魅力の十分の一すら伝えるものとなっていません。
ショーロをほとんど歌わず、フツーのサンバばかりで、伴奏の凡庸さも加わり、
これを聴いてアデミルジをつまらない歌手と誤解している人が多いのは困りものです。
全盛期のコンチネンタル録音を聴くことは、現在かなわないので、
今CDで聞けるアデミルジのアルバムは、昨年CD化された75年のトップ・テープ盤だけ。
“Brasileilinho” “Tico Tico No Fuba” “Lamentos” といった往年の十八番に加え、
当時若手だったマルチーニョ・ダ・ヴィラやパウリーニョ・ダ・ヴィオラ、
ジョアン・ボスコらが提供したサンバ/ショーロを歌っています。
とりあえずこのアルバムを聴きながら、往年の録音の復刻を待ちましょう。
Ademilde Fonseca "A RAINHA DO CHORINHO" Discobertas DB101 (1975)
2012-03-30 00:00
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パキスタンのカッワーリー@代々木公園
東京在住の音楽ファンの楽しみのひとつに、各国大使館が代々木公園で行うイヴェントがあります。
各国料理に舌鼓を打ちつつ、現地盤CDを探す楽しみもありますけど、
商業公演ではとても実現しそうにない、意外な歌手やミュージシャンが来日したりするから、
事前のプログラム・チェックが欠かせません。
なんせ、時にはびっくりな大物が出演したりしますからねえ。
2008年のブラジル・フェスティバルではなんと、ジョルジ・ベン・ジョールが来たんですよ!
これが入場無料のフリー・コンサートで、日本に暮らすその国の人たちと
一緒になって楽しめるんだから、行かないわけにはいかないでしょう。


で、先週の日曜日、パキスタン・バザール2012に行ってまいりました。
お目当ては、本国パキスタンから招聘されたカッワーリーの実力派若手グループ。
バダル・アリー・ハーンという名前は知りませんでしたが、
ひさしぶりに聴ける生カッワーリーに、期待わくわく。

いやぁ、楽しかったあ! 期待以上のパフォーマンスでしたね。
ヌスラットを別にすると、これまで日本で観たカッワーリーでは最高のものでした。
やっぱりカッワーリーは、お上品なコンサート会場で観たって、雰囲気が盛り上がりません。

代々木公園のステージは、パキスタン人・日本人入り乱れてダンス!ダンス!ダンス!
観客が振舞うお捻りでドル札が舞い、聖者廟で歌われる現地さながらの熱狂ぶり。
40分の予定時間はとっくにオーヴァー。次に予定されていたプログラムを蹴散らし、
2時間弱たっぷりの大熱演。観客は興奮のるつぼと化しました。
村山先生とサラーム海上さんも裏方に回り、観客にお捻りを促しつつ、
ばらまかれたお札の回収に汗を流されていました(おつかれさまでした)。


カッワーリーのコンサートでは、イスラーム神秘主義うんぬんという口上に、
つい神妙な顔をして聴いてしまいがちになりますけれど、
曲の終わりにお行儀よく拍手してるだけじゃ、ぜんぜん盛り上がりませんって。
カッワールが煽る即興に呼応して踊りまくれば、歓喜のトランスもやってこようというものです。
ぼくの隣で、「パキスタン音楽、やべぇ、やべぇよ」と言いながら踊ってたおニイちゃん、
面白かったなあ。「やばい」のはパキスタン音楽じゃなくて、カッワーリーなんだけど。
代々木公園のイヴェントは、その音楽が聞かれる場の楽しさを、
現地の人から教えてもらえる貴重な機会でもあります。
各国料理に舌鼓を打ちつつ、現地盤CDを探す楽しみもありますけど、
商業公演ではとても実現しそうにない、意外な歌手やミュージシャンが来日したりするから、
事前のプログラム・チェックが欠かせません。
なんせ、時にはびっくりな大物が出演したりしますからねえ。
2008年のブラジル・フェスティバルではなんと、ジョルジ・ベン・ジョールが来たんですよ!
これが入場無料のフリー・コンサートで、日本に暮らすその国の人たちと
一緒になって楽しめるんだから、行かないわけにはいかないでしょう。
で、先週の日曜日、パキスタン・バザール2012に行ってまいりました。
お目当ては、本国パキスタンから招聘されたカッワーリーの実力派若手グループ。
バダル・アリー・ハーンという名前は知りませんでしたが、
ひさしぶりに聴ける生カッワーリーに、期待わくわく。
いやぁ、楽しかったあ! 期待以上のパフォーマンスでしたね。
ヌスラットを別にすると、これまで日本で観たカッワーリーでは最高のものでした。
やっぱりカッワーリーは、お上品なコンサート会場で観たって、雰囲気が盛り上がりません。
代々木公園のステージは、パキスタン人・日本人入り乱れてダンス!ダンス!ダンス!
観客が振舞うお捻りでドル札が舞い、聖者廟で歌われる現地さながらの熱狂ぶり。
40分の予定時間はとっくにオーヴァー。次に予定されていたプログラムを蹴散らし、
2時間弱たっぷりの大熱演。観客は興奮のるつぼと化しました。
村山先生とサラーム海上さんも裏方に回り、観客にお捻りを促しつつ、
ばらまかれたお札の回収に汗を流されていました(おつかれさまでした)。
カッワーリーのコンサートでは、イスラーム神秘主義うんぬんという口上に、
つい神妙な顔をして聴いてしまいがちになりますけれど、
曲の終わりにお行儀よく拍手してるだけじゃ、ぜんぜん盛り上がりませんって。
カッワールが煽る即興に呼応して踊りまくれば、歓喜のトランスもやってこようというものです。
ぼくの隣で、「パキスタン音楽、やべぇ、やべぇよ」と言いながら踊ってたおニイちゃん、
面白かったなあ。「やばい」のはパキスタン音楽じゃなくて、カッワーリーなんだけど。
代々木公園のイヴェントは、その音楽が聞かれる場の楽しさを、
現地の人から教えてもらえる貴重な機会でもあります。
2012-03-28 00:00
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典雅な息づかい 陳潔麗
アルバム出だしの第一声で、魂を持っていかれてしまう歌手がいます。
去年出会ったヴェトナムの女性歌手ハー・ヴィーがそうでしたけど、
今度は陳潔麗(リリー・チェン)という香港の女性歌手にヤラれてしまいました。
戦前上海歌謡のトップ・シンガー周璇(チョウ・シュアン)をカヴァーした、
09年のアルバム『儂情』での、つぶやくようなそのひそやかな歌声。
歌い込むことをまったくせず、柔らかな美声でアルバム1枚通して歌ってのける才能は、
まさしく彼女が天才肌の歌手であることを示しています。
周璇というより、テレサ・テンに匹敵する典雅な歌いぶりに、思わず息を呑みました。
周璇のカヴァーといえば、1月に林寶の新作を話題に取り上げたばかりですけど、
『上海歌姫』より2年も前に、こんなアルバムが出ていたんですねえ。
林寶の『上海歌姫』がノスタルジック趣味を強調した企画作だったのに比べ、
こちらは本格的な歌謡アルバムとして淡々と力の抜けた歌唱を聞かせ、トロけさせられます。
「永遠的微笑」では、卵白を泡立てたメレンゲを見るような、
キメ細かなツヤのある気泡を思わせる歌声に、ただただ溜息が出るばかり。
ピアノ伴奏の「四季歌」やハープ伴奏の「沿途愛」での発声の息づかいなど、
目を閉じ、全神経を集中して聴かずにはおれない美しさです。
アルバム名義で陳潔麗よりも前に名を連ねる香港の名アレンジャー、
鮑比達(クリス・バビダ)によるコンテンポラリーなプロダクションもセンス良く、
ミュート・トランペットをフィーチャーし、アフタービートで軽やかに仕上げた「何日君再来」や
ボサ・テイストの「夜上海」のアレンジなど、イヤミなくサラリと仕上げています。
さっそくオーダーしてみました。
正直言って、テレサをカヴァーした女性歌手の曲を聴いて、
これまで気に入ったためしなど一度たりともなく、
この人ならと見込んだってわけですが、
いやあ期待どおりというか、まいりました。
ピアノ、ギター、ベース、ドラムスのジャズ・カルテットを
バックに歌っているんですけど、
テレサ・テンの曲を真正面から取り組んで
感心させられたのは、これが初めてです。
『儂情』のライヴ盤2枚組DVDと
カップリングのスペシャル・エディションで、
ライヴの歌声も聞かせてもらいましたが、
その歌いぶりはスタジオ録音と寸分違わないんですね。
抑制の利いた歌いぶりが
完全にコントロールされたものであるとわかり、舌を巻きました。
すごいシンガーです。
それとライヴで印象的だったのが、彼女のMC。
落ち着いた歌声に比べ、地声が小鳥のさえずりのような愛らしいハイ・トーンだったのは意外でした。
鮑比達×陳潔麗 「儂情」 Passion Music PM09801-2 (2009)
陳潔麗 「LILY SINGS TERESA : LIVE IN HONG KONG / 儂情演唱會」 Passion Music PM09803-5 (2011)
2012-03-26 00:00
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アフロペルー音楽の真打ち アベラルド・バスケス
ペルー、クリオージョ音楽の総本山ともいえる名ペーニャ、
ドン・ポルフィリオゆかりの歌手や音楽家たちによる一大セッション・アルバム
“VAMOS DONDE PORFIRIO” が去年の暮れにリリースされたのに続き、
ドン・ポルフィリオの創立者であるアベラルド・バスケスの名作が、ついにCD化されました。
う~ん、これぞまさしくアフロペルー音楽の真打ち登場ですねえ。
アベラルド・バスケスのCDについては、去年のクリスマスにも書いたとおり、
最晩年のアルバム1枚だけしかなく、70~80年代の絶頂期の録音は未CD化のまま。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-12-25
ニコメデス・サンタ・クルースの60~70年代の諸作でアベラルドの歌声を聴くこともできましたが、
アベラルドの代表作ともいえる、エンリケ・ボルハスとともに録音した89年作
“HOMENAJE A PORFIRIO, PIPO Y VICENTE” くらいはCD化してほしいと思っていたので、
今回のCD化はまさに願ったり叶ったりです。
アルバム・タイトル曲は、父ポルフィリオと兄弟のダニエル“ピポ”と
ビセンテに捧げた、アベラルド自作のマリネーラ・リメーニャの名曲。
アベラルド、ビセンテ、ダニエル“ピポ”、オズワルドのバスケス家4兄弟は、
74年に“LOS VASQUEZ” のタイトルでアルバムも残しているんですよね。
このCDには、89年作のほかに70年代のアルバムからも選曲されているようで、
ニコメデス・サンタ・クルースの名曲“Inga” は、
ニコメデスのグループ、クマナーナとの70年代録音と思われます。
あいかわらずクレジットのないイエンプサ盤なので、詳細は不明ですが。
カホンがざくざくと逞しいリズムを刻むマリネーラに、
ホーン・セクションも高らかに鳴り響くフェステーホ。
アルバムのどこを切っても、濃厚なアフロペルー音楽の肉汁が
どろりと滴り落ちる名盤中の名盤です。
Abelardo Vásquez "HOMENAJE A DON PORFIRIO, PIPO Y VICENTE" Iempsa IEM720 (1989)
2012-03-24 00:00
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パナマの愛くるしい歌姫 シルビア・デ・グラッセ
思わぬところから、シルビア・デ・グラッセを思い起こされたもんです。
まさかフランス発多国籍のクンビア・バンドから、シルビアのカヴァーを聞けようとは。
でも今となっては、シルビア・デ・グラッセを知る人もあまり多くないでしょうね。
1921年10月28日生まれのパナマを代表する女性歌手で、
50~60年代には中南米諸国からアメリカ、ヨーロッパまでツアーし、
1978年3月14日、まだ人気絶頂の50代の若さで亡くなりました。
かつてラテン・レコード専門店の店主だった永田さんが、
「愛くるしい」といみじくも表現されたシルビア・デ・グラッセは、
カルメン・ミランダとも共通する明るさに満ち溢れた、優れたシンガーでした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-10-12
軽やかにビートに乗るバツグンのリズム感や、
ハイ・トーンをころがす愛嬌のあるテクニックは、天性の才能を感じさせたものです。
というわけで、ひさしぶりにシルビアのレコードをあれこれ取り出してみました。
シルビアのアルバムでぼくが最高作と思っているのは、レモ盤の“TAMBORERAS”。
パナマを代表する作曲家リカルド・ファブレガスのタンボレーラはじめ、
パナマの民俗色をたっぷりと発揮した作品です。未CD化なのが残念なんですけど、
シルビアの見事な美脚を拝めるジャケットも最高のレコードです。
クンビア・ヤ!がカヴァーした“Pepe” のオリジナルも、このレコードに入っていますね。
パナマのハモンド・オルガンの名手アベリーノ・ムニョスの伴奏で歌ったマルベーラ盤は、
タンボリートなどパナマの黒人系リズムもたっぷり楽しめるアルバム。
CD化もされているので、シルビアのアルバムでは一番よく知られているアルバムでしょう。
モンティージャ盤やアンソニア盤は、ドミニカのピアニスト、ダミローンが伴奏をしています。
ソロ・アルバムのほかには、シルビアのご主人で男性歌手のエルネスト・シャピュゾーと
ダミローンとの3人で活動したロス・アレグレス・トレスの録音も残されています。
ロス・アレグレス・トレスは、65年に始まったプエルト・リコの2チャンネルTVの
お昼の番組で大人気となり、広くラテン・アメリカ諸国向けに、
メレンゲ、グァラーチャ、マンボ、チャチャチャなどをやっていました。
音楽的にパナマ色は味わえないものの、ジャケットではシルビアの脚線美を楽しめますね。
モンティージャ盤はだいぶ前にCD化したことがあります。
シルビアはわずか14歳で、“La Guajira” “La Morena Tumba Hombre”
“Hagan Ruedas” などの曲を含む初アルバムを出したという記録が残っていますが、
30~40年代に数多くのSP録音を吹き込んでいるらしく、
いつかそんなシルビアの若かりし頃の録音も復刻されることを期待したいものです。
[LP] Sylvia De Grasse "TAMBORERAS" Remo LPR1575
[LP] Sylvia De Grasse "COSA LINDA" Marvela LP38
[LP] Sylvia De Grasse "EN PANAMA" Montilla FM161
[LP] Sylvia De Grasse "LA CITA" Ansonia ALP1274
[LP] Damiron, Chapuseaux Y Silvia De Grasse "LOS ALEGRES TRES" Hit Parade HPLP010
[LP] Chapuseaux Y Damirón con Sylvia De Grasse "CHAPUSEAUX Y DAMIRON CON SYLVIA DE GRASSE" Montilla FM135
Chapuseaux Y Damirón con Sylvia De Grasse "LOS REYES DEL MERENGUE" Montisa Productions CDM3412
2012-03-22 00:00
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フランス発の本格派オールド・クンビア・バンド クンビア・ヤ!
これはオドロキ! フランスにこんなクンビア・バンドがいたとは。
しかも4年前のリリース。なんでこれが話題とならずに、クァンティックが絶賛の嵐?
ほんと世の流行は、ぼくには理解できません。
このさいだから書いちゃいますけどね。
クァンティックの超話題盤となったコロンビアのミュージシャンとのセッション・アルバム、
昔からクンビアを聴いてきたラテン・ファンのみなさん、あんなのでホントに満足してます?
クンビアを初めて聴く若者ならいざ知らず、
ヴェテランのファンには薄味すぎて物足んないでしょ。でしょ?でしょ?
そんなぼくと同じ感想をお持ちの中高年ラテン・ファンにこそ、聴いていただきたいバンドなのです。
なんたって、あーた、シルビア・デ・グラッセが歌った“Pepe” をカヴァーしてるんですからね!!!
なんですと!と目を剥いたそこのアナタ。わかってますねえ。
シルビア・デ・グラッセの“Pepe” で反応してくれるファンなら、悶絶することウケアイです。
フランス人とコロンビア人とアルゼンチン人の男女混成メンバーが、
ルーチョ・ベルムデスやパンチョ・ガランといった、
ノスタルジックなオールド・クンビアを演奏してるんですね。
サックス2、トロンボーン2、トランペット2、クラリネットという、7人もの管楽器メンバーを擁し、
往年のコラーレロス・デ・マハグァルを思わせるサウンドを繰り広げるのだから、もうたまりまへん!
哀愁味たっぷりのクラリネットには、ハンカチ1枚じゃ足りないくらいですよ(大泣)。
フランス発の多国籍バンドということですが、
バルセロナ発のストリート感たっぷりなグローカル・バンドとは一線を画したバンドで、
もちろんノー・エレクトロニック、ノット・サイケデリックであります。
演奏は見事なまでのオーセンティックな本格派。リズムのキレも申し分ありません。
オールド・クンビアの土臭さを保ちつつ、軽妙な洗練をあわせ持っているのは、
いまどきのフランス人がやっているからこそなんでしょうね。お見事!
Cumbia Ya! "NO ME BUSQUES" Acqua AQ206 (2008)
2012-03-20 00:00
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ブラジルの「超」粋な男 シロ・モンテイロ
去年の3月19日に予定しながら、延期したままのレコード・コンサート@四谷いーぐるを、
きのうの土曜の午後、ようやくやることができました。
3月11日の東日本大震災で急遽取りやめたあと、
ぼくの気持ちが折れてしまい、延び延びとなっていたのです。
楽しみにしてくださっていた方も多くいらしたとわかり、本当にすみませんでした。
雨の中大勢のお客さまにお越しいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
今回のテーマは、前回、カルトーラとノエール・ローザを特集したときに、
「今度はシロ・モンテイロとマイーザをやってよ」という
真保みゆきさんのムチャ振りで決まったのでした。
二人ともぼくの大フェバリットのサンバ歌手ですけど、ぜんぜんテイストの違う歌手なので、
どんなふうに話を組み立てればいいのやらと、ずいぶん悩みました。
考えた末、リオのサンバ独自の粋な感覚<ボッサ>をキーワードに考えると面白いかと、
『ブラジルの「超」粋な男と女たち ~サンバの美学<ボッサ>をたずねて』
というタイトルにたどり着いたのでした。
前半の「粋な男」編では、シロ・モンテイロを軸に、先達にあたるマリオ・レイスや
シロの相棒のジレルマンド・ピニェイロのほか、モレイラ・ダ・シルヴァ、ジョルジ・ヴェイガ、
アリ・コルドヴィル、ジョアン・ノゲイラ、オルランジーヴォを聴きながら、
都会っ子らしいお洒落で軽快な<ボッサ>を感じ取れるサンバを集めてみました。
そして後半の「粋な女」編では、30年代のボッサが持っていた屈折した美意識が、
50年代のサンバ・カンソーンに盛り込まれ、その後ボサ・ノーヴァにもつながった
プレ・ボサ・ノーヴァ時代のドリス・モンテイロ、ドローレス・ドゥラン、
マイーザ、アナ・ルシアを聴いてもらうという趣向にしたのでした。
ストーリーを作り上げてみると、最初はシロとマイーザじゃ全然タイプが違うじゃんと思ったのが、
そのサンバの本質において、実は深い関係があることがよくわかり、
真保さんが二人を指名した慧眼に感服させられました。
それにしても、やっぱりシロ・モンテイロはかっこいいですよねえ。
軽やかにリズムにのるヴォーカルは、スタイリッシュそのもの。
戦前のSP録音ももちろんいいんですけど、
個人的に一番愛聴した61年のコロンビア盤“SENHOR SAMBA” を
いーぐるのオーディオで聞けたのは快感でした。
“SENHOR SAMBA” はCD化されたので、多くの人に知られた名盤となっていますが、
いまだに聞けずにいるのが、62年に続編として出された“SENHOR SAMBA VOL.2”。
もう四半世紀以上探し続けているんですが、いまだ写真すらお目にかかったことがなく、
ひょっとしてお蔵入りになった未発売レコードなんじゃないかと思っていたんですけど、
去年、“SENHOR SAMBA VOL.2” に収録されたとおぼしき4曲入りのEP盤を発見。
EPが出ていたのなら、やはりLPも出ていたはずで、う~ん、これぞほんまもんの<幻の名盤>。
どなたかご存じの方はいらっしゃいませんでしょうか。
[LP] Cyro Monteiro "SENHOR SAMBA" Columbia 37190 (1961)
[EP] Cyro Monteiro "Samba / Colher De Chá / Diz Que Fui Por Aí / Ciuminho" CBS 56160
2012-03-18 00:00
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ポルト・アレグレのインディゴ・ブルー マリオ・ファルソーン
セルソ・フォンセカの新作?とうっかり思ってしまった、
ブラジル南部ポルト・アレグレのシンガー・ソングライター、マリオ・ファルソーン。
04年のソロ・デビュー作もインディなら、7年ぶりという本作も自主制作と、
十数年のキャリアを持ちながら、まったく日の当たらない人のようですが、
その才能はセルソ・フォンセカ以上のものを感じさせます。
繊細にしてしなやかなメロディー、デリカシーを感じさせるソングライティング、
つぶやき語りかけるような、あやうい歌いぶりは、女子ごろしなセクシーさに溢れ、
プロモーション次第で世界的人気を呼ぶこと、必至じゃないですかね。
マリオの爪弾くナイロン・ギターにメロウなエレピが彩るサウンドは実にリリカルで、
極上のAORとも呼べるジャジーな色合いが、独特の色彩感を生み出しています。
そのリッチでブルージーな味わいは、たとえるならインディゴ・ブルー。
詩的な世界を立ち上げるマリオの歌は、バンピーなリズムにもよくのり、
ブルー・アイド・ソウルぽい曲も魅力的です。
キャッチーなメロディーで聞かせるのではなく、
個性的な世界観をソングライティングに表現する、センシティヴな才能の持ち主です。
そっけないジャケットも、アルバムを聴き終えたあとでは、
マリオの音楽を的確に表現したものであることに気付かされます。
Mário Falcão "AMADOR" no label no number (2011)
2012-03-16 00:00
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世界一ナンパなアフロビート チブレス
なるほどねえ。アフロビートをこういうふうに借用しますか。
こりゃ世界一ナンパなアフロビートといえるかも。
サンパウロから登場したサンバ・ソウルの新人シンガー、チブレスのデビュー作です。
アフロビートをまるごとコピーするのではなく、
アフロビートを構成するいろんな要素を、カクシ味として取り入れているんですね。
たとえば、トニー・アレンのドラミングであったり、ホーン・セクションのソリだったり、
イントロのギター・リフだったり、ウッドブロックの音色だったりと。
アフロビートの音楽要素だけあれこれ借りてきて、ウワモノはナンパなメロウ・グルーヴというか、
アーバン・タッチのR&Bマナーで仕上げましたといったサウンド。
主役のチブレスくんのヴォーカルにいたっては、ナヨッとしたジャミクロワイ似とくるんだから、
アフロビートの精神性を高く評価するガチガチのマニアからは、怒りを買いそう。
でも、こういう音楽、ぼくはキライじゃありません。
音楽がぜんぜん気取ってなくて、
そこらの街のあんちゃんぽさ丸出しなところは、むしろ好感がもてます。
オンナをひっかけることしか考えてなさそうな感じというか(失礼)、
要するに音楽がインテリぽくなくて、いいってことです。
じっさいの本人がどうかは知りませんが。
ゲストでベースにカシン、ギターにダヴィ・モラエス、サンプルにドナチーニョといった
今をときめくメンツも参加して、実にシャレオツなサウンドを作り上げています。
エレピの音色やギターのリズム・カッティングなんて、もろに70年代サウンドでぼく好みですね。
パウラ・リマやジャイル・オリヴェイラ周辺のサンバ・ソウル好きなら、
ジャスト・ミートのアルバムじゃないでしょうか。
Tibless "AFRO-BEAT-ADO" Massude no number (2011)
2012-03-14 00:00
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ザ・ガールズ・フロム・バイーア クアルテート・エン・シー
うひー、お金がいくらあっても足りません。
ブラジル音楽のリイシュー・ラッシュに、もうお財布はカラッポです(泣)。
『エスコーラ・ジ・サンバの歴史』ボックス、シャンゴー・ダ・マンゲイラの全4作、
モレイラ・ダ・シルヴァのボックス第2弾と続いて、
今度はクアルテート・エン・シーのアメリカ録音盤ですよ。
ブラジル音楽ファンには、ほんと嬉しい悲鳴であります。
いやー、それにしてもジスコベルタスにはアタマが下がります。
クアルテート・エン・シーあらためザ・ガールズ・フロム・バイーア名義の2作に目を付けるとは。
かつて日本でCD化されましたけど、オリジナル盤のレコードは持っているので、
日本盤なんぞいらんわいと、アメリカでのCD化を待っていたんですが、
まさかブラジルでCD化されるとは思いもよりませんでした。
しかもアメリカ・デビューの67年作の方は、3曲のボーナス・トラック付。
ジスコベルタス様には、深く深くコウベを垂れるほかありませぬ。
クアルテート・エン・シーのアルバムで一番好きなのが、
ぼくはこのアメリカ盤2作なんですけど、そういう人ってけっこう多いんじゃないでしょうか。
彼女たちのアルバムは、60年代のフォルマ、エレンコ、70年代のオデオン、フィリップスと、
どの録音もその高度な音楽性に感服はしても、なかなか愛聴はしにくいんですよねえ。
でも、このアメリカ・ワーナー盤は、
親しみやすいストレイトなボサ・ノーヴァ作品となっていて、小難しさとは無縁。
とりわけ2作目の“REVOLUCION CON BRASILIA” のポップさは、
彼女たちのアルバムのなかでも随一といえます。
アメリカ人相手だから、わかりやすくしたってことなんでしょうけど、
エン・シーのアルバムで一番リラックスして聞ける、ボサ・ノーヴァ・コーラスの最高傑作です。
この2枚が復刻したとなると、同じアメリカ・ワーナーから65年に出たドリヴァル・カイーミの
“CAYMMI AND THE GIRLS FROM BAHIA” もCD化して欲しくなりますね。
ジスコベルタス様、よろしくお願いしまする。
The Girls From Bahia "PARDON MY ENGLISH" Discobertas DB162 (1967)
The Girls From Bahia "¡REVOLUCIÓN CON BRASILIA!" Discobertas DB163 (1968)
2012-03-12 00:00
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エチオピアのズンドコ節 アムサル・ミティケ
メルボルンのデレブ・ジ・アンバサダーやジュネーブのインペリアル・タイガー・オーケストラなど、
エチオピア国外でエチオピア音楽が盛り上がっているものの、
肝心のエチオピア国内や在外エチオピア人コミュニティのシーンが
沈滞気味なのはどうしたことでしょうか。
特にそれを感じるのは、在外エチオピアン・ポップの中核、ナホン・レーベルの低迷ぶり。
コンスタントに新作リリースは続いているものの、
出すアルバム出すアルバム、どれもおんなじ金太郎飴式プロダクションなのにはうんざり。
これじゃあ新作が出ても、積極的に聞こうって気になれません。
打ち込み中心のチープなプロダクションでも、それなりの工夫をしているのならまだしも、
主役の歌手が変わる以外、なんの違いもないアルバムづくりを続けてるんじゃ、救いがたいですね。
これって、80年代のブラジルでパゴージがブームになった時と、まったく同じです。
パゴージは、サンバの伴奏を均一化したことによって、
ニュアンス豊かな演奏を、平板かつ無機質で味気ないものに変えてしまいました。
ナホンが勢いづく前の90年代、AITレーベルが活躍していた時代は、
アバガス・キブレワーク・シオタなどの優秀なアレンジャーが、
低予算のプロダクションでも工夫を凝らしたアルバムづくりをしていましたが、
ナホンにはシオタのような音楽監督にあたる人物がいないんでしょう。
そんなわけで、ここ数年ナホンの新作のチェックを怠ったままだったんですけど、
久しぶりに手を伸ばした近作の中に、キラリと光るアルバムを発見しました。
アーティスト名もタイトルもアムハラ文字しか書かれていないという、
ギリシャ盤をホウフツとさせる部外者相手せずのヴィジュアル。
この見てくれなら、アズマリ系の伝統派歌手のアルバムかなと思ったら、アタリでした。
大地を踏みしめるような、ハチロクの逞しい低音のビートを強調し、
いつものナホンの軽い音づくりと趣を異にしているところが好感大。
打ち込みを中心としつつも、マシンコやクラールなど伝統楽器の響きを巧みに活かし、
エチオピアのズンドコ節とでも呼びたい民謡アルバムに仕上がっていて、これならオッケーですね。
主役の女性歌手アムサル・ミティケのドスコイなこぶし回しもヴァイタルで、
気風のよい歌いぶりが胸をすきます。
少し前に話題となったゲネット・マーシレシャを気に入った人には、絶好でしょう。
残念ながら、ほかに聴いたナホンの近作は、どれもあいかわらずの金太郎飴プロダクションで、
ゆいいつこのアムサル・ミティケだけが拾いものでした。
Amsal Mitike "ABEREREGN" Nahom NR8335 (2009)
2012-03-10 00:00
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ウェザー・リポートの「バードランド」とフィリピン民謡 ライアン・カヤビャブ
ウェザー・リポートの78年の大ヒット曲「バードランド」のネタモトかと、
かつて騒がれた曲に、フィリピン民謡「テレポン」があります。
フィリピンのジャズ・ピアニスト、ライアン・カヤビャブがアレンジした「テレポン」は、
テーマ・メロディーが「バードランド」とほとんど同じのうえ、アレンジや構成もまんま引き写しで、
どちらかがパクったことは、聴けばイッパツでわかる演奏となっていたために、
ちょっとした騒ぎに発展したのでした。
そもそも「バードランド」は、ウェザー・リポートらしからぬポップなメロディーだったので、
ネタモトがあったというニュースは、いかにもという納得感もあり、
しかもそれがフィリピン民謡という意外性に、ぼくも思わず食いついたものでした。
ところが、パクったのはライアンの方だったことが、のちになって判明。
「テレポン」のメロディーが「バードランド」と似ていたので、
「バードランド」と同じアレンジでやってみた、というのがライアンの言だったのですが、
「テレポン」の原曲を聞いてみても、「バードランド」とメロディが似ているとは思えず、
ライアンがパクったのは歴然。
おかげで、ジョー・ザヴィヌルに批判的な評論家が、
「帝国主義者ジョー・ザヴィヌルが第三世界の音楽を搾取!」などと勢いづいて非難したのも、
すっかりドッチラケになってしまったのでした。
さて、そんなお騒がせの「テレポン」は、当時無名のフィリピンのキーボード奏者、
ライアン・カヤビャブのデビュー作に収録されていました。
全曲フィリピン民謡を素材にジャズ・ロック化したこの作品、かなりユニークなもので、
原曲のメロディーがわからないほど、ぐちゃぐちゃにアレンジされています。
イエロー・マジック・オーケストラ版「ファイアー・クラッカー」を先取りしたような演奏などもあり、
いま聴いてもその野心的なアレンジは新鮮です。
その後ライアンは、作編曲家として数多くの映画音楽や合唱曲の作曲を手がけるほか、
プロデューサーとしても活躍し、フィリピンのクインシー・ジョーンズと称される
フィリピン音楽界の大フィクサーとなりました。
90年代に話題を呼んだおこちゃまグループ、スモーキー・マウンテンも、
ライアンが仕掛け人でしたね。
そんな大物となったライアン・カヤビャブの出発点が、
こんな野心的なジャズ・ロック作品だったというのも、なかなか面白い話。
当時、マヌ・ディバンゴの“AFROVISION” と一緒によく聴いたっけなあ。
第三世界の音楽(「ワールド・ミュージック」の旧名ですよ)に興味を持つファンの間で、
ちょっとだけ話題になったレコードですけど、その後だいぶ経ってから、
フィリピンでCD化されているのを知ったときは、懐かしく思ったものです。
[LP] Ryan Cayabyab "ROOTS TO ROUTES : PINOY JAZZ Ⅱ" Jem JLP110 (1978)
Ryan Cayabyab "ROOTS TO ROUTES : PINOY JAZZ Ⅱ" Telesis TLS-KD103 (1978)
2012-03-08 00:00
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マレイシアのクロンチョン ジャミラー・アブ・バカル
新人女性歌手による伝統クロンチョンの新作とは、珍しいですねえ。
伝統クロンチョンのアルバムじたい、めったにリリースされることがないのに、
新人の登場とは、ダブルのオドロキです。
インドネシアにはクロンチョンのカタログが豊富な、
グマ・ナダ・プルテウィというレコード会社もありますけど、
これはマレイシアのレコード会社からのリリースで、ますます「へぇ~」と感心してしまいました。
クロンチョンといえばインドネシアを代表する国民音楽なので、
マレイシアのクロンチョンというと、少し意外な感がありますけど、
かつてヘティ・クース・エンダンのポップ・クロンチョンがマレイシアでも人気を博したように、
マレイシアでのクロンチョン人気は、なかなか底堅いものがあるようです。
最近では、2008年にオルケス・クロンチョン・マリンドという楽団のCDが出た時も、
こりゃまた珍しいと思いながら聴いたものですけど、
本格的な伝統クロンチョンの演奏ぶりにすっかり感心させられました。
さて、本作ですけれども、チュック、チャック、フルート、ヴァイオリン、チェロ、ギター、
ベース、ヴィオラの8人編成によるオルケス・クロンチョン・イラマ・ペリンドゥを伴奏に、
伝統クロンチョンのスタイルで歌った、これまた本格的なアルバムに仕上がっています。
曲によって弦オーケストラを加え、クロンチョンの優美なメロディを華やかに演出するなど、
予算もかけてじっくりとレコーディングした様子がうかがえます。
またレパートリーも、ごりごりの伝統クロンチョン一辺倒というわけではなく、
ドラムスを加えたランガム・クロンチョンなどもやっています。
学術向けの堅苦しい伝統保存アルバムとは一線を画し、
あくまでも大衆向けの商業アルバムであるところが嬉しいですね。
主役の女性歌手ジャミラーは、正調でもランガムでも丁寧に歌いこなしていて、
哀愁ただよう泣きのメロディーのクロンチョンは、胸に迫るものがあります。
声量があまりないからなのかもしれませんが、ひそやかな歌い方に魅力のある人です。
ことクロンチョンに関しては、朗々と晴れがましく歌われるよりも、
こういう歌い方のほうが、クロンチョンの愛らしさが生きるように思います。
ジャミラーの繊細な息づかいで歌われる
クロンチョンの穏やかな調べを聴いていると、春が恋しくなります。
今年の春はマレイシアのクロンチョンが運んでくれそうですね。
Jamilah Abu Bakar "KERONCONG EKSKLUSIF VOL.1" Irama Studios no number (2011)
Orkes Keroncong Malindo "KERONCONG NYONYA & BABA" Life HSP01317-2 (2008)
2012-03-06 00:00
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漆黒のサンバ シャンゴー・ダ・マンゲイラ
うわあ、今度はシャンゴー・ダ・マンゲイラが70年代に残した4作を、一挙にCD化ですか。
マルクス・ペレイラ盤の『エスコーラ・ジ・サンバの歴史』シリーズといい、
サンバに夢中になり始めた頃に出会ったルーツ系サンバの名作が、ぞくぞくCD化されますねえ。
シャンゴー・ダ・マンゲイラことオリヴェリオ・フェレイラは、23年生まれ。
最初はポルテーラに所属していましたが、39年にマンゲイラへ移り、
カルトーラがマンゲイラを去ったのちの51年からマンゲイラの総監督となって、
内部分裂の危機にあったマンゲイラを再建した伝説のサンビスタです。
シャンゴーはパレードでのサンバ・エンレードの基本型を作るという功績を残し、
サンバ・ジ・ローダでの即興のパルチード・アルトを得意としました。
正直言うと、シャンゴーの72年のコパカバーナ盤を最初に聴いた時は、ピンと来なかったんです。
曲が起伏に乏しく、単調な繰り返しが多くて、つまらなく感じたんですね。
その後、カンデイアやアニセート・ド・インペリオなどのパルチード・アルトを聴くようになってから、
シャンゴーのあけっぴろげでのんしゃらんとした開放感のある歌い口に、
黒人サンバのエッセンスが詰まっていることが、ようやく感じ取れるようになったんでした。
とはいっても、曲が地味なことには変わりなく、
その後出た75年作の“VELHO BATUQUEIRO” も、あまり夢中になった記憶はありません。
どうもシャンゴーの書く曲って、フックに欠けるんですよねえ。
正直そんなによく聴いたというほどの人ではないんですけど、
シャンゴーのような黒っぽいモロのサンバを21世紀の今に求めるのは、もう不可能なこと。
というわけで、4作まとめて聴いてみたわけですが、
レコードを持っていなかった78年作の“VOL.3” が一番の収穫でした。
このアルバムではシャンゴーの自作は半分ほどで、マンゲイラの仲間パデイリーニョのサンバなど、
他のサンビスタの曲を多く取り上げています。
サンバ以外にバイオーンやジョンゴも歌い、
シャンゴーもあけっぴろげな歌いぶりばかりでなく、メロウな歌い口を聞かせたりと、
アルバム・プロデュースほかいろいろ工夫の跡がみられます。
クレジットを見ると、このアルバムだけエジ・リンコルンが音楽監督を務めてるんですね。
なるほど、これはエジの手腕だったというわけですか。
ところで今回のリイシュー、ジスコベルタスらしからぬ間違いが一つあります。
シャンゴーのラスト作となった4作目の“CHÃO DA MANGUEIRA” が
1982年のアルバムなのに、1976年制作と誤ってクレジットされているんですね。
そのせいでCD番号も3番目の数字を付けていて、
実際の3作目がタイトルも“VOL.3” とわかりやすいのに、なんで間違えたんでしょう?
Xangô Da Mangueira "O REI DO PARTIDO ALTO" Copacabana COPA0051 (1972)
Xangô Da Mangueira "VELHO BATUQUEIRO" Discobertas DB116 (1975)
Xangô Da Mangueira "VOL.3" Discobertas DB118 (1978)
Xangô Da Mangueira "CHÃO DA MANGUEIRA" Discobertas DB117 (1982)
2012-03-04 00:00
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ンゴニの未来を切り開く マカン・バジェ・トゥンカラ
サリフ・ケイタやバーバ・マールと共演歴を持つほか、
アミ・コイタ、カンジャ・クヤテ、マー・ダンバなどマリのグリオ系シンガーの伴奏に
ひっぱりだこのンゴニのグリオ、マカン・バジェ・トゥンカラの新作です。
マカンはマリの偉大なジャリ(グリオのことです)ことジェリ・ババ・シソコ(1922-2001)の孫で、
父はモディボ・ケイタ大統領の命で設立されたマリ国立伝統音楽合奏団の音楽監督の一人、
モディ・トゥンカラという、生粋のグリオとして育った人。
9年前にリリースしたマカンの初ソロ作のサンク・プラネット盤は、
ンゴニの単独ソロ演奏というシブい内容でしたけれど、
グリオの伝統をしっかりと受け継ぎながらも、
若い世代らしくロックやブルースを自然に吸収したプレイが印象的で、
65年生まれという若き世代が伝統を現代に推し進めているのを、頼もしく思ったものでした。
そして2作目となる今度の新作では、マカンのンゴニを核としながらも大勢の歌手をフィーチャーし、
伴奏にもう1台のンゴニとベース役のンゴニ・バ、パーカッションが加わったアルバムとなっています。
マンデの伝統に沿った正統的な演奏を聞かせる一方で、
ブルースのギター・フレーズを借用したと思われる斬新なフレージングも随所に聞かせ、
そのどちらも無理がないところに、伝統の進化を感じさせます。
少なくともアリ・ファルカ・トゥーレが登場した時のような、
とってつけたようなブルース・ギターの不自然さは、マカンにはまったくありません。
マカン自身が歌った曲では、かなりトリッキーなンゴニの演奏も披露していますが、
音楽的な効果を十分に考えたうえ、ここぞという箇所だけでプレイしているので、
いわゆるやりすぎな印象を与えることもないですね。
曲ごと、男女さまざまな歌手のグリオらしい鍛えられたノドを楽しめるのも本作の良さです。
余計なことですけど、ライナーにはファトゥマタ・バトゥータに「マカンの妻」のクレジットがありますが、
本作でも歌っているアダマ・ジャバテがマカンの奥さんだったんじゃなかったでしたっけ???
閑話休題。マカンは、ンゴニ・バを率いるバセク・クヤテとともに、
ンゴニの未来を切り開くグリオとして注目すべき逸材であることを示した好作といえます。
Makan Badjé Tounkara "SODJAN" Buda Musique 860216 (2012)
Makan Tounkara "MAKAN TOUNKARA" Cinq Planètes CP03266 (2003)
2012-03-02 00:00
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