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クールなサンバ・カンソーン マリア・クレウザ

マリア・クレウザといえば、70年代のサンバ・ブームを体験した人には忘れがたい、
美人サンバ・カンソーン歌手。
79年、世界歌謡祭出演のためアントニオ・カルロス&ジョカフィとともに来日し、
六本木ピットインで一夜限りのライヴをやってくれたんですよねえ。
会場には、マリアをひと目見ようと押しかけた男性ファンで満杯となり、
マリアが登場すると、「ほぉっ♡♡♡」という男臭いタメ息があふれかえったものでした。

マリア・クレウザはこの来日時がまさに絶頂期でした。
彼女が70年代ブラジルRCAに残したアルバムは、
73年の『リオの黒バラ』から77年の『真夜中のマリア』まで、傑作揃いです。

Eu Disse Adeus.JPG   Te Dije Adios.JPG

アルゼンチン、トローバから移籍後のリリース第1作“EU DISSE ADEUS” は、
『リオの黒バラ』という秀逸な邦題で日本盤が出ました。
クリスタル・グラスのように繊細なサンバ・カンソーンを歌う、マリアの個性が完成した名盤で、
アルゼンチンでは“TE DIJE ADIOS” のタイトルでリリースされました。

もう何百回聴いたかわからないアルバムですけれど、
2000年のペネロペ・クルースの主演映画“WOMAN ON TOP” で
本作収録のサンバ・メドレーが流れてきた時は、思わず映画館の席を乗り出してしまいました。
このアルバムは2イン1CDでリイシューされたものの、いまだ単独CD化が実現していません。
ぜひきちんとした形でCD化をお願いしたいものです。

Sessao Nostalgia.JPG
Sesion Nostalgia Ar.JPG   Sesion Nostalgia_Uruguay.JPG

RCA第2作の“SESSÃO NOSTALGIA”(邦題『哀しみのノスタルジア』)は、
いまだブラジルでは未CD化。
南米各国盤では、黒地のアルゼンチン盤に朱地のウルグアイ盤があります。

En Vivo.JPG   E Os Grandes Mestres Do Samba.JPG

“EN VIVO” はアルゼンチンのみでリリースされたアルゼンチン・ライヴ盤。
ジャケットは魅力的ですが、ひと昔前のボサ・ノーヴァ歌手みたいな選曲センスが難で、
これじゃブラジルで発売されなかったのも、無理ありません。
“E OS GRANDES MESTRES DO SAMBA”(邦題『夜明けのサンバ』)は、
カルトーラやネルソン・カヴァキーニョなど、サンビスタのレパートリーを歌った異色作。
可憐なマリアの歌声によるサンバというのがまた妙味で、ファンの間で愛されたアルバムです。
サンバは初めてという人に、最初に薦めるのにも格好の内容で、
このアルバムからサンバ・ファンになった人が、ぼくの周りには大勢います。
これまた未CD化というのは、ほんっと、けしからんですよね(力こぶ)。

Meia Noite.JPG

そして、リアルタイムの新作として聴いたのが、『真夜中のマリア』こと“MEIA NOITE”。
間違いなく1000回以上は聴いた溺愛聴盤であります。
いまだに1曲目のイントロのギターを聴くと、背中がぞくぞくするもんねぇ。
本作はブラジルRCA100周年記念リイシュー・シリーズでCD化されましたが、
タイトルの‘MEIA’ と‘NOITE’ の間にハイフンが入るという変更がありました。
アルゼンチン盤のほか、ジャケット写真を差し替えたチリ盤もあります。

Medianoche.JPG   Medianoche Chile.JPG

これ以降のアルバムではボレーロぽい曲が増え、
それまで抑制されていた妖艶さが強調され、イヤらしくなってしまいます。
マリアのクールな甘さの中にある穏やかな温かみがもっとも発揮されたのは、
やはり73~77年の5年間だったことは間違いないでしょう。

Apolo 11.JPG

透明感のあるクールなマリアの持ち味は、まだ彼女がバイーアで歌っていた頃からの資質で、
幻のデビュー作として有名なJS盤“APOLO 11” のういういしい歌声の中にも、
すでに表れていました。
かつてJS音源を復刻したコンピCDに、“APOLO 11” の1曲が収録されたことがありましたけど、
このデビュー作の完全復刻もぜひ期待したいところ。ジスコベルタス、やってくれないかな?

[LP] Maria Creuza "EU DISSE ADEUS" RCA 103.0077 (1973)
[LP] Maria Creuza "TE DIJE ADIOS" RCA Argentina AVS4206 (1973)
[LP] Maria Creuza "SESSÃO NOSTALGIA" RCA 110.0004 (1974)
[LP] Maria Creuza "SESIÓN NOSTALGIA" RCA Argentina AVS4298
[LP] Maria Creuza "SESION NOSTALGIA" RCA Urguay 991.0386
[LP] Maria Creuza "EN VIVO" RCA Argentina AVS4248 (1974)
[LP] Maria Creuza "E OS GRANDES MESTRES DO SAMBA" RCA 103.0156 (1975)
[LP] Maria Creuza "MEIA NOITE" RCA 110.0014 (1977)
[LP] Maria Creuza "MEDIANOCHE" RCA Argentina AVSL4495 (1977)
[LP] Maria Creuza "MEDIANOCHE" RCA Chile 110.0014 (1977)
[LP] Maria Creusa "APOLO 11" JS JLP9004 (1969)
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規格外の天才ギタリスト レニー・ブリュー

Lenny Breau  THE HALLMARK SESSIONS.JPG

もったいない才能だったとつくづく思います。

ひさしぶりにレニー・ブリューの20歳の時のセッション・アルバム
“THE HALLMARK SESSIONS” を聴いているんですけど、
これほどのギタリストが、生前その才能に見合った評価を受けることもなく、
ほとんど注目されないまま非業の死を遂げてしまったのだから、残念というほかありません。

このアルバムは61年11月28日に行われた、
ブリューにとってプロ初のレコーディングとなったカナダ、トロントでのセッション。
40数年もお蔵入りとなっていて、2003年にようやく陽の目を見たんですけど、
この未発表セッションを聴いた時は、ほんとにドギモを抜かれました。
デビュー作を出す7年も前に、ブリューはすでに独自のギター・テクニックを完成しており、
規格外の天才ギタリストぶりをいかんなく発揮していたのですから。

ブリューはタル・ファーロウやレス・ポールに影響された
ダイナミックなフレーズの組み立てを得意とし、
それだけでも十分に高い技量を示しているんですけれど、さらにタッピング奏法を駆使して、
凄まじいスピードで独創的な高速ラインを弾きまくります。
タッピング奏法といえば、80年代半ばのスタンリー・ジョーダンの出現でもてはやされましたけど、
四半世紀も前にすでにブリューが完成されたテクニックを披露していたのだから、驚愕です。

いまでこそ両手タップのギタリストなど珍しくもありませんが、
60年代当時にこんな人がいたこと自体がびっくりで、
のちのスタンリー・ジョーダンのもてはやされようを考えれば、
つくづく出てきた時代を間違えたとしかいいようがありません。
ポスト・フリーの時代には、こうした才能をアピールするシーンは存在しませんでしたからねぇ。

ブリューがユニークだったのは、超絶のタッピング奏法ばかりでなく、
チェット・アトキンスに影響されたカントリー・スタイルの
フィンガー・ピッキング・スタイルのギターや、フラメンコ・ギターまで弾けたこと。
アルバム中盤に出てくるマール・トラヴィス作のラグタイム・ナンバーや、
フラメンコ・ギタリスト、サビーカス作の本格的なフラメンコ・ギター・ソロも収録されていて、
その幅広い才能が凡百のジャズ・ギタリストの域をはるかに越えているのは、一聴瞭然です。

さらなるこのセッションの驚きは、ブリュー・トリオのメンバーが、
なんと、ザ・バンドのリック・ダンコとリヴォン・ヘルムだということ。
ザ・バンドのデビュー前に、二人がこんなストレイト・アヘッドなジャズを演奏していたなんて、
ザ・バンド・ファンのぼくも、まったく知りませんでした。
もっともこのセッションは、徹頭徹尾ブリュー一人がギターを弾きまくっているので、
二人はおとなしくバックをつけてるだけなんですけども。

若き天才ジャズ・ギタリストの破格のプレイは、
何度聴いてみても、いったいどうやって弾いてるのやら見当もつきません。
映像は残ってないんでしょうか。

Lenny Breau "THE HALLMARK SESSIONS" Art of Life AL1007-2
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ゆらぐヴェトナムのギター ヴァン・ヴィ

CUNG THUONG HOA DIEU.JPG   HOA TAU VA DOC TAU  CO NHAC - CAI LUONG.JPG

世界には変わった形状のギターがいろいろありますけれど、
ヴェトナムのギター・フィムロンくらいユニークなのも珍しいでしょう。
フレットとフレットの間の指板が深くえぐられていて(スキャロップ加工というそうです)、
押弦の強弱により強いヴィブラートやチョーキングと同じ効果を得られるようになっています。
ヴェトナムではダン・バウ(一弦琴)に代表されるとおり、ゆらぐ音を好む傾向があり、
ポルタメントを簡単に出せるよう手を加えたギター・フィムロンは、
まさしくヴェトナム人好みの響きに改良されたギターといえます。

ギター・フィムロンは、キム・シンの演奏で世界的に有名になりましたが、
ぼくがこの楽器に夢中になったのは、ヴァン・ヴィというギタリストのソロ演奏を聴いてからです。
カイ・ルオン系専門レーベルのヴェトナムから出た
カイ・ルオンのインスト演奏コ・ニャックのアルバム(写真左)に、
ヴァン・ヴィのソロ演奏が1曲入っていて、
その独創的でイマジネイティヴなプレイに、ノックアウトをくらったのでした。
ジャケットに写る3人の真ん中、黒サングラスをかけているのがヴァン・ヴィその人です。

ヴァン・ヴィ(本名ディン・ヴァン・ダン)は、29年生まれ。
貧しい家に生まれ、3歳で天然痘にかかり、視力を失いました。
幼い頃から弦楽器が好きで、音楽教師や音楽家に教えを乞うては、
胡弓やギターをマスターしたといいます。
のちにカイ・ルオンの大女優となるウット・バック・ランとは、
幼い頃にコンビを組んで市場やバス停留所などで流しをした仲で、
年長のヴァン・ヴィがウット・バック・ランに歌を教え、二人は流しで貧しい家計を助けたそうです。

その後、町中で評判となった二人は、ラジオやカイ・ルオン劇場など本格的なプロ活動に転じ、
ヴァン・ヴィはギター・フィムロンの名手として、数多くのレコーディングを残しました。
コメディアンのヴァン・フォン(ヴァン・フーン)が、
66年と67年のヴォン・コのコンテストで優勝した時の伴奏を務めたのもヴァン・ヴィなら、
ヴァン・ヴィが出演するラジオの伝統音楽番組は、常に人気の的だったといいます。

しかしそんなヴェトナム戦争前のヴァン・ヴィの絶頂期も今は昔で、
ヴァン・ヴィのプレイを聴けるCDを見つけるのは、至難の業。
去年ホーチミンに行った時にも探してみたんですが、
ヴァン・ヴィのギターがフィーチャーされた、
歌もののヴォン・コやタン・コのCDはいくつかあったものの、
ソロ演奏が入っているコ・ニャックのCDはとうとう見つかりませんでした。
というわけでヴェトナム旅行では成果なしだったんですけど、
なんと日本でヴァン・ヴィのソロ演奏を2曲収録したコ・ニャック集(写真右)が手に入りました。
大阪のプランテーション丸橋店長による買い付け品で、さすがプロのバイヤーは違います。

このアルバムには、ダン・トラン(17弦筝)、ダン・ニー(胡弓)、ダン・キム(月琴)、
ダン・セン(月琴をやや小型にした六角形のボディの2弦琴)、ヴァイオリン、
ギター・フィムロン各楽器のソロやアンサンブルが収録されていますが、
やはり圧巻は、ヴァン・ヴィのギター・フィムロン・ソロ2曲。
それぞれ7分以上を越す長尺サイズの曲を、ヴァン・ヴィはすさまじい集中力で弾ききっていて、
思わず大友良英やビル・フリゼールに聴かせてみたい、なんて感想が浮かんだほど。

ヴァン・ヴィは85年、56歳で生涯を閉じますが、
彼の3人の子供、ヴァン・アン、ヴァン・ハウ、ヴァン・タイは、
いずれも有名なミュージシャンとなって活躍をしているそうです。

Bảy Bá, Vǎn Vĩ, Nǎm Cơ "CUNG THƯƠNG HÒA ĐIỆU" Ðĩa Hát Việt Nam no number
Bảy Bá, Vǎn Vĩ, Nǎm Cơ, Ngọc Sáu, Haì Thơm "HOÀ TẤU VÀ DỘC TẤU : CỔ NHẠC - CẢI LƯƠNG" Saigon Vafaco no number
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毒にもクスリにもならない歌 ウシーア

Uxia  Meu Canto.JPG

試聴サンプルを十数秒聴いただけで、ピンときました。
ウシーアがどこの誰かも知らぬまま、直感でオーダーしたんですが、
届いた最新作をじっくり聴いてみて、いっぺんでファンになってしまいました。

ウシーアは、スペイン、ガリシアを代表する女性シンガーとのこと。
いやあ、いい歌い手ですねえ。
その声を聴いているだけで、もう涙が出てきそうなくらいで、
こういう素直に心になじむ歌を歌える人が、ぼくはほんとに好きです。

去年のベスト10で、「気取った音楽や俗悪ぶった音楽はもうたくさん」と口走りましたが、
歌で何かを主張するような<クスリ>になるアーティスティックな歌も、
<毒>のある俗悪ぶった歌も、うっとうしいだけなんですよ。
ぼくが聴きたいのは、あらためて考えてみればたわいもないような、そんな歌。
いっそ歌詞のないオノマトペで歌ってくれたら、どれほどスッキリするかてなもんです。

けっきょくぼくは、<毒にもクスリにもならない>歌が好きなんですね。
<毒にもクスリにもならない>とは、もちろんホメ言葉であって、
かつてミゲリート・バルデースが「つまらない曲を歌いたい」と発言していたことを思い出します。
虚構を異化したドラマ性を曲に込めて歌う、まさにミゲリートならではのセリフですけど、
歌謡というものの真髄がそこにありますね。

えーと、ちょっと話がそれちゃいましたけど、
ウシーアも自意識をひけらかさないタイプの、<毒にもクスリにもならない>歌を歌える人で、
お母さんの子守唄のようなあったかさイッパイの歌に、安心して身を預けることができます。

本作は、マリア・ベターニャのギタリスト、ジャイミ・アレンをプロデューサーに迎えたブラジル録音。
音数をぎりぎりに絞った伴奏は、ウシーアの歌を引き立てるためだけに奉仕しているかのようで、
アコーディオン、ヴィオーラ・カイピーラ、マンドリナ、パンデイレッタなどのみずみずしい響きが、
ウシーアの円熟した歌を包み込んでいて、まさに歌と伴奏の理想型が示されています。

自作曲やガリシア民謡のほか、ジョゼ・アフォンソのコインブラ・ファドやジョアン・ノゲイラのサンバを
歌っていて、ジョゼ・アフォンソの曲の最後には、カルトーラの歌詞も引用しています。
レニーニが1曲ゲストで参加しているですけど、
こんな穏やかなお父さん声で歌うレニーニは初めて聴きました。

キューバのフィーリンやブラジルの70年代MPBにも通じる、
親しみやすいコンテンポラリー・ポップスにして極上の歌謡音楽が、ここにあります。

Uxía "MEU CANTO" Fol Música 100FOL1052 (2011)
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西アフリカ音楽のベル・エポック

うにゃあ! アフリカ音楽ファンの財布をカラッポにさせるCDがぞくぞく登場しますね。

シラール・プロダクションの「ベル・エポック」シリーズが、突如の再開です。
セネガルの名楽団オーケストラ・バオバブ、スター・ナンバー・ワン・ド・ダカールの2タイトルが
これまでリリースされていましたけれど、
今回出たのは、ギネアの名門楽団ベンベヤ・ジャズ・ナシオナルが2タイトルに、
ガンビア出身のアフロ・ラテン歌手ラバ・ソッセ、ベニンの名歌手ニョナス・ペドロ、
そしてオーケストラ・バオバブの第2集というラインナップです。
各タイトルとも2枚組というこのシリーズ、アーティストとじっくりと向き合うのに絶好といえますね。

ベンベヤは70年代録音の第1集、80年代録音の第2集とも、
全部手元にある音源ばかりなのでぼくはパスしてしまいましたが、
スターンズ盤“AUTHENTICITÉ : THE SYLIPHONE YEARS” しか聴いたことのない
新しいアフリカ音楽ファンなら、次に手を伸ばすのに最適といえそうです。

Laba Sosseh.JPG

ラバ・ソッセは、60年代のセネガル録音から80年のコート・ジボワールのサコディス録音や
ニューヨーク録音までをまとめたもの。初CD化曲もたっぷりと収録されていて、
過去のラバ・ソッセの復刻のなかでは、もっとも優れた編集といえます。
ラテンのB級コピー・バンドの域を出なかった、
60年代のスター・バンド時代の録音を少なめにしたのは正解で、
セネガリーズ・ラテンと呼べる個性を確立した70年代録音を中心にまとめています。

聴きどころは、ニューヨークのサルサ・ミュージシャンとセッションした、
80年のコート・ジヴォワールのサコディス盤“SALSA AFRICANA VOL.4” を
曲順そのままにストレイトCD化したディスク1の11~14曲目。
ラバ・ソッセは、のちの82年にもアメリカのサルサ・レーベルSARに録音を残していますけど、
アフリカらしい味わいが消し飛んでしまったSAR録音に対し、
80年のサコディス録音ではトーキング・ドラムなども加え、
アフロ・サルサと呼ぶべき独自の個性を発揮しています。
ディスク2には、垢抜けないアビジャンのアフロ・ラテン・バンドをバックにした演奏も
収録されているものの、80年のサコディス盤2作から選曲された
モンギート・エル・ウニコとのセッションは、嬉しい収録といえます。

Gnonnas Pedro.JPG

ニョナス・ペドロは、アフロ・ロックやアフロ・ソウルをいっさい排し、
アフロ・ラテンを軸にした選曲が花丸ものです。
以前の記事で話題にしたハイライフ・ナンバーの
“Feso Jaiye” が選曲されたのは嬉しかったものの、
“Agbadja Moderne Synthese No.1” が収録されなかったのは、う~ん残念。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-09-14
難はディスク2の選曲で、後半にもろズークな99年作の曲の後に、
70年代の古い録音が出てきたりと、録音順バラバラの並びは問題あり。
80年代以降の録音は入れず、70年代録音だけでまとめるべきでしたね。
というわけで、サブ・タイトルの“1965-1975” は大ウソです。

Orchestra Baobab.JPG

そして最後がオーケストラ・バオバブの第2集。選曲ではこれが一番の内容でしょう。
なんせ70~80年代前半という、バオバブの黄金期の録音集ですからね。
悪い内容になるわけがありません。
バオバブ風セネガリーズ・ラテンに、ロック色の強い演奏やンバラに接近した曲など、
さまざまな試行錯誤の様子が手に取るようにわかり、
スリリングな曲がぎっしりと詰めこまれています。
過去のCDとのダブリがかなりありますが、大半は初CD化なので、
古手のファンも必携必聴でしょう。
難を言えば、“1973-1976” というサブ・タイトルがこれまた大ウソで、
81・82年頃の録音も交じっているうえ、曲の並びも録音順ではないのが残念ではあります。

解説が概略すぎて物足りないものの、リマスタリングによる極上の音質で楽しめる今回の復刻は、
こころあるアフリカ音楽ファンには大歓迎の内容といえますね。
ここ十年ほど、アフロ・ロック/ソウル/ファンク系B級・C級レコードのくだらないリイシューに
ウンザリしてきたクチなので、この「ベル・エポック」シリーズには万歳三唱です。

Laba Sosseh "LA BELLE EPOQUE VOLUME 1" Syllart Productions 000989
Gnonnas Pedro "LA BELLE EPOQUE VOLUME 1 1965-1975" Syllart Productions 000988
Orchestra Baobab "LA BELLE EPOQUE VOLUME 2 1973-1976" Syllart Productions 000990
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アフリカの高貴なる声 ソリ・カンジャ・クヤテ

Chanteur Et Guitare  EPL7257.JPG   Sory Kandia Kouyate_SYL575.JPG

ギネアの名門レーベル、シリフォンの音源を復刻する「オタンティシテ・シリーズ」は、
3年前のケレティギ・エ・セ・タンブリニで完結したとばかり思っていたら、
オフィス・サンビーニャのライス・レコード新作情報で、
ソリ・カンジャ・クヤテの復刻2枚組がリリースされると知りびっくり。
これは声を大にして、真に価値あるアフリカ音楽の復刻とふれ回りたいですね。

曲目リストを見る限り、初復刻曲はないようなので、
古くからのアフリカ音楽ファンにはお勧めしにくいんですが、
ソリの経歴には不明な点がいっぱいあるので、
個人的には詳細な解説にどんな新情報が載るか、期待を寄せているところです。

ちなみに過去リリースされたソリのCDは以下のとおり。
最初の同タイトル4枚のボリバナ盤とシラール盤は同一原盤。(シラール盤は追加曲あり)
今回の復刻盤は、最後のソノディスク盤2枚を除くシリフォン録音をほぼ集大成した、
ベスト・オヴ・ベストな内容となっています。

Grand Prix Du Disque 1970  76012-2.JPG   Grand Prix Du Disque 1970  38203-2.JPG
Tour D'afrique De La Chanson  76020-2.JPG   Tour D'afrique De La Chanson  38204-2.JPG
L'epopee Du Mandingue Volume 1  42037-2.JPG   L'epopee Du Mandingue Volume 2   42038-2.JPG
Kouyate Sory Kandia  CDS6814.JPG   Kouyate Sory Kandia  CDS6815.JPG

むしろこの復刻盤、ソリを知らない若い人たちに、ぜひともオススメしたいですね。
かつてリリースされた上記CDもすべて廃盤の現在、
最近アフリカ音楽のファンになった人にとっては、
ソリを聴いたことがないという人も多いはず。
そういうファンの方々にはぜひこの機会に、20世紀のアフリカが誇った
人類の至宝と呼ぶべき偉大な歌手の声を体験してもらいたいものです。

たとえば、アフリカ音楽なんてまったく聴いたことのないクラシック音楽ファンに、
いきなりソリの歌を聞かせると、誰も口々に「すごいねぇ!」と声をあげるほどですからねえ。
どんなオペラ歌手のアリアより、ソリの歌声の方が神々しくパワフルなことは実証済みです。

ライス・レコードの宣伝では、パキスタンのヌスラット・ファテ・アリー・ハーンに匹敵する
強靭な声と唱っていましたが、申し訳ないけどヌスラットはソリにとてもかないません。
声の強靭さだけなら互角かもしれませんが、歌い手としての気品がだんぜん違います。
ヌスラット・ファンのぼくですけど、こればかりはゆずるわけにはいきません。
卑俗なヌスラットと高貴なソリとでは、格が違うと言わせていただきましょう。

以前、サリフ・ケイタのヴォーカルなんて、ソリに比べたら門前の小僧だと書きましたけど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-01-12
ほんとかよ?とうたぐる若いアナタ、ぜひ2月26日発売の編集盤で確かめてみてください。

[EP] Kouyate Kandia "CHANTEUR ET GUITARE DES BALLETS AFRICAINS DE KEITA FODEBA" Vogue EPL7257 (1961)
[12インチ・シングル 裏ジャケット] Sory Kandia Kouyate "CHANTS INÉDITS : BANDE SONORE DE SON DERNIER SHOW TÉLÉVISÉ" Editions Syliphone SYL575 (1978)
Kouyate Sory Kandia "GRAND PRIX DU DISQUE 1970" Bolibana 76012-2 (1970)
Kouyate Sory Kandia "GRAND PRIX DU DISQUE 1970" Syllart 38203-2 (1970)
Kouyate Sory Kandia "TOUR D'AFRIQUE DE LA CHANSON" Bolibana 76020-2 (1971)
Kouyate Sory Kandia "TOUR D'AFRIQUE DE LA CHANSON" Syllart 38204-2 (1971)
Kouyate Sory Kandia et Son Trio De Musique Traditionnelle "L'EPOPEE DU MANDINGUE VOLUME 1"  Bolibana 42037-2 (1973)
Kouyate Sory Kandia et Son Trio De Musique Traditionnelle "L'EPOPEE DU MANDINGUE VOLUME 2"   Bolibana 42038-2 (1973)
Kouyate Sory Kandia "KOUYATE SORY KANDIA" Sonodisc CDS6814
Kouyate Sory Kandia "KOUYATE SORY KANDIA" Sonodisc CDS6815  
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トルコ美女が歌う古典歌謡 アスルハン・エルキシ

Aslihan Erkisi  NEVESER.JPG

トルコのポップスって、ハルクのような民謡系のアルバムでもプロダクションが厚塗りなうえ、
打ち込みがドガスカとうるさく、コブシもぐりんぐりんクドイくらい回して、胃もたれしてしまいます。
そんなわけで、ここ5・6年は古典歌謡・伝統音楽系にしか興味が向かわなくなってしまいました。

そんな嗜好を決定づけたのが、女優兼歌手シェヴァル・サムの06年デビュー作の“SEK”。
ウード、ヴァイオリン、チェロ、カーヌーンなどの弦楽器の生音アンサンブルにのせて、
さらりとしたメリスマを聞かせるシェヴァルの歌声に魂を抜かれ、それはそれは溺愛したものです。
うん、ほんとにこのアルバムは、よく聴いたっけなあ。

Sevval Sam  SEK.JPG

その後のシェヴァルは、エレクトロなミクスチャー・ミュージックに挑戦したり、
アラベスクの歴史を振り返ったりと、女優さんらしく一作ごと意欲的な作品をリリースするも、
個人的にはこのデビュー作“SEK” を凌ぐものはなく、
ああ、誰か、こんなアルバムをまた作ってくれないものかと、ずっと願っていたのです。

で、待つこと5年。出ましたねぇ。78年ドイツ生まれの才媛というアスルハン・エルキシ嬢による、
トルコ戦前歌謡の女流作曲家兼歌手ネヴェセル・キョクデシュ・シャルクラルの作品集。
アルバム出だしの優美な弦楽アンサンブルの演奏に、いきなり胸をきゅっとつかまれます。
<楽器が歌う>とはまさしくこのことで、背中がゾクゾクもののこういう音楽を聴くと、
機械音をもて遊んでヤバンな音楽を作ってる場合じゃないぜと、
余計な一言も洩れようというものです。

古典声楽を学んだという、アスルハンの心根の優しさを感じさせる声が、またいいじゃないですか。
頬にあたる地中海のやさしい風を感じさせるメリスマとでもいいましょうか、
しつこくなくあっさりすぎもしない、絶妙なバランスの歌いぶりに、すっかりトリコとなっています。

Aslihan Erkişi "NEVESER : NEVESER KÖKDEŞ ŞARKILARI" Akustik Müzik no number (2011)
Şevval Sam "SEK" Kalan CD389 (2006)
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カーボ・ヴェルデ音楽の今昔 ティティナ

Titina Canta B.Leza.JPG   Titina_EP.JPG

ディナ・メディナの“MORNAMENTE” がすっかりお気に入りの今日この頃。
このアルバムを聴きながらあらためて思うのは、
カーボ・ヴェルデ音楽のサウンド・プロダクションが、昔に比べてケタ違いに向上したことです。

カーボ・ヴェルデ音楽が世界に紹介され始めた80年代末頃はといえば、
それはそれはお粗末なプロダクションでした。
当時セザリア・エヴォーラはまだブレイクする前でしたが、
シロウト同然の歌いぶりもトホホなら、プリセットそのまんまの音色で弾いているシンセなど、
稚拙さの目立つがっかりなアルバムが本当に多かったんですよ。

モルナ、コラデイラ、フナナー、バトゥーケ、タバンカといった多彩なカーボ・ヴェルデ音楽に、
限りない可能性を秘めていることを予感させながら、
その可能性をチープなプロダクションが台無しにしている。
そんな印象が強く、全編アクースティックで演奏するだけでも、
比べものにならない仕上がりとなるだろうにと歯ぎしりしたものでした。

そんなわけで、お粗末な歌が出てこないインスト集や、
鍵盤楽器が目立たないアルバムを探し求めていた記憶がありますが、
そんな当時気に入っていたのが、インスト集ではマルチ弦楽器奏者バウのデビュー作、
歌ものではティティナのB・レザ曲集でした。

ひさしぶりにティティナのB・レザ曲集を聴いてみたんですけど、
素朴なプロダクションながら、カヴァキーニョやギターなど弦楽器の生音をいかした作りとなっていて、
鍵盤系の音が控え目なこともあって、今聴いても満足いく仕上がりといえます。
カーボ・ヴェルデを代表する管楽器の名手ルイス・モレイラの泣きのクラリネットや、
アルマンド・ティトのヴィオラをフィーチャーし、
ストリングス・セクションを伴奏に加わえているところも花丸です。

わずか7曲の小品集とはいえ、モルナとサンバを交互に取り上げた選曲の妙も効いていて、
カーボ・ヴェルデの国民的詩人として尊敬され、
30年代に数多くのモルナの名曲を残したB・レザの曲集の、
忘れられない一枚に仕上がっています。

ところで、主役のティティナことアベルティナ・ロドリゲス・アルメイダは、
セザリア・エヴォーラと同郷のサン・ヴィセンテ島の生まれで、セザリアより5つ若い46年生まれ。
6歳から歌い始め、12歳で初舞台を経験し、14歳で初シングルをリリースしています。
この92年のB・レザの曲集が初アルバムで、
ぼくは未聴ですけど、08年になって2作目となる“CRUEL DESTINO” を出しています。

若い頃の録音で、ティティナがおそらくまだハタチ台の60年代のものと思われる、
ドラムスの前でポーズをとっているジャケットのEPを持っているんですけれど、
初期録音のEPを集めたリイシュー作なんて、誰か作ってくれないかなあ。

Titina "TITINA CANTA B. LEZA" Blue Caraïbes 82841-2 (1992)
[EP] Titina "Aviadora / Funha / Firvura / Sabine Lagrame" Alvorada AEP60759
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中国情緒に酔いしれて 蘇霈

Su Pei  東方美人.JPGハー・ヴィー、そしてレー・クエンを
毎朝の通勤時に聴き続けて、はや4ヶ月。
これから仕事に向かおうって時に、
こんなにしみじみしてしまっていいんだろうかと思いつつ、
せつないメロディをしっとりと歌う
歌謡に入れ込んでしまって、抜け出せずにいます。

たまたま二人ともヴェトナムの歌手ですけど、
ヴェトナムに夢中になっているというより、
歌謡が来てるという感じでしょうか。
プロダクションで聞かせる音楽ではなく、
歌唱力と楽曲勝負の歌謡の方に、
ますます心惹かれるようになっているのを感じます。

そんな思いをまた新たに強くした1枚に出会いました。
台湾の女性歌手、蘇霈(スー・ペイ)の最新作です。
デビューして11年、古い歌が得意な歌手だそうで、
本作では中国の伝統音楽を取り入れたメロディを、
郷愁を誘うレトロなアレンジにのせて歌っています。

先月紹介した中国の林寶の『上海歌姫』に似たテイストを感じさせますけど、
あのアルバムのような企画色はないので、
ノスタルジック・ムードに演出くささはありません。
「五月的風」「嘆十聲」「天光(客家語バージョン)」などを、
しっとりと風雅な歌声で歌っていて、時にコケティッシュな表情をみせる愛らしさもたまらないですね。

アルバムのハイライトは、曲の途中や最後に崑劇の場面を挿入し、
崑曲風の歌も交えたアレンジの「西湖盼」でしょうか。
口腔内で柔らかに膨らむ発声が、歴史ある中国情緒を醸し出し、
その深い味わいに酔いしれてしまいます。

蘇霈 「東方美人」 東方美人 EMIMPT0013 (2011)
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フィーリンの真実 フランク・ドミンゲス

Frank Dominguez  CANTA SUS CANCIONES.JPG

ホセー・アントニオ・メンデスの最高傑作にしてフィーリンの歴史的名盤が、
ついに日本盤リリースですっ!
おわかりですか? メキシコRCAから出た、あのセカンド作ですよ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-03-20
例のオリジナル盤を発見して以来、原田尊志さんから
エル・スール・レコード第4弾として出したいという相談を受けていて、
おお、それはぜひ!とお返事していたのですが、
年明けからトントン拍子で話が進み、2月19日リリースという運びになりました。
(渋谷エル・スールでは2月10日先行発売。原田さん渾身の選曲による特典CD-R付き!)

ラテン的ダンディズムの極致ともいえるこのアルバム、
『フィーリンの真実』とはまさに付けもつけたりのタイトルで、うん、ナットクですね。
メソメソしたい(?)中高年男性の深酒のお供(??)に、
これ以上のCDはないというマスト・アイテム(???)です。
あ、いや、ダンディーなおじさま好きの女子にもぜったいの逸品ですよ。

先週末、CD制作用に貸していたオリジナル盤を引き取りにエル・スールへ行くと、
原田さんからさりげなく手渡されたのが、なんとフランク・ドミンゲスのCD。
えーっ、フランク・ドミンゲスのCDなんて、あったんだぁと声をあげると、
「見つけたんですよ。片っ端から在庫を買い集めてきました」とのこと。
さすが、原田さん。こりゃ、ホセーのアルバム発売の前祝いになりますね。

フランク・ドミンゲスといえば、名前こそ有名なものの、
フィーリンのコンピレなどで数曲聴いたことくらいしかなかったので、
アルバム1枚まるまる聴くのは、これが初体験。
ジャケットには海賊盤レーベルのAROのレーベル・ロゴが付いていますが、
調べてみたら、原盤は58年のルンバ盤RLP55507ですね。

大勢の歌手にカヴァーされたフランクの代表曲
“Tú Me Acostumbraste” から始まるこのアルバム、内容は極上です。
冒頭2曲と7・8曲目がフランクが弾くピアノに、ヴィブラフォン、ベース、ドラムスのコンボ演奏で、
ほかの8曲はフランクのピアノ弾き語り。
ホセーがギターなら、フランクはピアノ弾き語りと違いはありますけれど、
ボレーロを煎じ詰めて最高度に洗練された歌謡フィーリンの魅力を
徹頭徹尾味わえるアルバムです。

こんなレコードがさりげなくバーでかかったら、いやぁ、たまんないだろうなあ。
終電逃すのも必至な男泣きの一枚、ホセーの『フィーリンの真実』とともに必聴の一枚です。

Frank Dominguez "CANTA SUS CANCIONES" ARO ARO125 (1958)
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ベネズエラのコンテンポラリー・フォルクローレ ポマロッサ

Pomarrosa  DECIR PIEL.JPG   Pomarrosa  OTRA HISTORIA.JPG

レコード会社にもお国柄がありますね。
隣り合った国なのに、両極端なお国柄を感じさせるのが、ベネズエラとコロンビアです。
コロンビアはフエンテス・レーベルに象徴されるとおり、売らんかな精神丸出しで、
その商魂逞しさにヘキエキとさせられることもしばしば。
自国の音楽文化を高めようとか、地方の伝統音楽にスポットを当てて育てようなんてこと、
まるっきり念頭にないようなビジネス一辺倒のがめつさが、
一方でコロンビア音楽の大衆的なパワーを支えているともいえるんですけれど。

そんなコロンビアと対極なのがベネズエラで、インディ・レーベルが多いことからもわかるとおり、
本当に音楽を愛する人たちによって制作されていることがよく伝わってくる国です。
良い意味でのアマチュアリズムが発揮されているお国柄といえ、
ビゴット財団のようなベネズエラの豊かな民俗文化を伝えようとする良心的レーベルは、
まずコロンビアじゃあ考えられないでしょう。

伝統文化の保存・継承・発展に寄与するという、
アカデミックな思想のもとでアルバムを制作しているビゴット財団のカタログのなかには、
ベネズェラ各州の村々に伝承されている口承舞踏音楽を収集し再現するパサカージェや、
アフロ系ベネズエラ音楽をプレゼンテーションするバサージョス・デル・ソルなど、
多数の意欲作があります。
そんななか、モダンなセンスを生かしたポップ・アルバムも制作しているのが、
ビゴット財団のいいところ。
けっして研究家などのインテリだけを相手にしたレーベルじゃないんです。

というわけで、ぼくのお気に入りがこのポマロッサ。
ベネズエラの多彩なリズム、メレンゲ、ヴァルス、バンブーコ、
アギナルド、ガイタなどを取り入れて歌った、
2000年のデビュー作がことのほかフレッシュで、いっぺんでファンになりました。
クアトロやマンドリンの弦の生音の響きを生かしたアンサンブルにのって歌う
若い二人の女性歌手による澄みきった歌がすばらしく美しく、
ちょっとジャジーなアレンジなども取り入れながら、
洗練された新感覚フォルクローレを聞かせてくれます。

5年を経て制作されたセカンドでは、ピアノやサックス、ストリングスなども加え
ぐっとサウンドの厚みが増しましたけど、あいかわらず音楽の表情はすっきり爽やか。
サンゲオ、ガイタ・デ・フーロ、ガイタ・デ・タンボ-ルなど、
ベネズエラのリズムの奥深さをのぞかせながら、カラカスの都市を吹き抜ける風を思わせる、
伝統的であることと都会的洗練が両立した、すがすがしいアルバムです。

Pomarrosa "DECIR PIEL" Fundación Bigott FD2662001368 (2000)
Pomarrosa "OTRA HISTORIA" Fundación Bigott FD2662004358 (2005)
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たまにはジャケ買い ニック・ウエスト

Nik West  Just In The Nik Of Time.JPG   Nik West  JUST IN THE NIK OF TIME _back.JPG

ジャケのきりりとした横顔に惹かれました。

バック・インレイには、ベースを持って座る痩身の美女が写っています。
ん? このコ、ベーシストなの? 
こんな華奢な腕で、ちゃんとベースが弾けんのかなと思いつつ、
その細くて長~い大御足に目を奪われます。
ぼく好みなモデルばりの美貌に一目ボレしてしまい、
珍しく予備知識ゼロのアーティストのCDを買ってまいりました。

ニック・ウェスト、若干22歳。
え! そんなに若いのと、驚いちゃいましたが、
成熟したオンナっぷりに、おこちゃまアイドルが跋扈する日本と
この違いはどうよとばかり、やにさがってしまったワタクシであります。

聴く前に失礼な感想を抱きましたけど、ベースの腕前は確かで、
ラリー・グラハム、ルイス・ジョンソン、マーカス・ミラーばりのスラップを披露しています。
そして歌声の方は、ネオ・ソウル系といえばいいんでしょうかね。
ぼくの大好きなジョヴァンカを想わすところもあったりして、
なかなかにチャーミングな歌い口がラヴリーです♡♡

ライト・ファンクあり、ハウスありのコンテンポラリーなR&Bアルバムで、
バラエティのあるプロダクションはインディの弱みを感じさせません。

このルックスでベースもこなす才能は、プリンスのバンドにリクルートされたりして!?

Nik West "JUST IN THE NIK OF TIME" no label 8 85767 51897 1 (2010)
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70年代エチオ・サウンドの再現 デレブ・ジ・アンバサダー

Dereb The Ambassador.JPG

年末にCDショップでかかっているのを聴いてぶっとんだ、
エチオピア人シンガーをフロントに立てたメルボルンのバンド、ダレブ・ジ・アンバサダー。
オーストラリアからエチオピア音楽のバンドが登場するとは、思いもよりませんでしたねぇ。

Pヴァインから出ているのは国内プレス盤だったので、
オリジナル盤を求め、オーストラリアのオンライン・ショップを四方八方探し回るハメに。
結局入手するまで、ふた月近くかかってしまいました。
直輸入盤にオビ・解説付きで出してくれりゃあ世話ないのに、
オリジナル盤でないと気がすまないのは、われながら因果な性分であります。

それにしてもエチオピア音楽は、すっかりユニヴァーサルなものとなりましたね。
アフロビートの次はエチオ・サウンドだとばかりのイキオイで、
ヨーロッパ各地からエチオ・ジャズのバンドが次々と登場しましたけど、
このバンドはかなりの本格派というか、マニアックなまでの懐古派です。

エチオピア音楽黄金時代の70年代サウンドを再現したサウンドで、
アレマイユ・エシェテ、テラフン・ゲセセ、マハムード・アハメッドなど
往年の名歌手たちのレパートリーを取り上げているんだから、たまりません。
エチオピア人歌手をフィーチャリングしているバンドも数あれど、
フロントを務めるデレブ・ダサレンのソウルフルな歌声は抜きん出ています。

そして、デレブのオリジナル曲2曲が黄金時代の名曲に劣らぬ仕上がりというもの、頼もしい限り。
5管のホーン・セクションを従えたバンドの演奏力も高く、
ピアノやオルガンの音色や録音を含めた往年のエチオ・サウンドの完コピぶりは、微笑ましいほど。
エチオピア音楽へのホレこみぶりがびんびん伝わってきて、同慶の至りです。

Dereb The Ambassador "DEREB THE AMBASSADOR" Other Tongues OTH94007 (2010)
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