匠のニューヨリカン・フルート デイブ・バレンティン
ぼくが一番好きなフルート奏者、デイブ・バレンティンの新作。
あまりにも暑すぎる夏に合わないので、秋になるまで取って置きました。
いつもジャケットがダサいのが難なデイブのアルバムですけど、
今回は珍しくシックで、ぱっと見、クラシックのアルバムみたいな仕上がりにはちょっと驚き。
メンバーは、いつものビル・オコーネルのピアノに、ロビー・アミーンのドラムス、
リッチー・フローレンスのコンガで、06年の前作“COME FLY WITH ME” とは
ベースだけが交替し、ルベーン・ロドリゲスが務めています。
前作のウッド・ベースからエレクトリック・ベースに変わったことで、
よりラテン・ジャズのビート感が明快になり、ファンクぽいアクセントも効果的になりました。
今回もデイブの良き相棒であるビル・オコーネル作の曲が大半を占め、
そのほか“When Sunny Gets Blue” などのスタンダード・ナンバーが取り上げられています。
意外なのは、オープニングを飾るチャップリンの“Smile” でしょうか。
細野さんも新作で取り上げていましたけど、なぜに今この曲に注目が集まっているんでしょう!?
シンコペーションを多用してブレイクも決めたラテン・ジャズにアレンジしたのは、妙味です。
このほかも、ビル・オコーネルのキャッチーな楽曲を生かした、
ヴェテランらしいソツのない演奏が繰り広げられています。
あまりにさりげなく演奏しているので、ついぞ聞き逃しそうになりますけど、
手数の多いドラムスとコンガは、相当に複雑なプレイをやっています。
こういう超絶プレイをこれみよがしではなく、さらりと聞かせるラテン・ジャズがぼくは好きです。
4ビートのバラードあり、フルートの多重録音ソロあり、フュージョン・タッチの演奏ありと、
変化を巧みに付けたアルバムづくりは、いつものデイブ・バレンティンらしい良さ。
安定感ありすぎで、ハッとさせられるようなスリルに欠ける面も否めませんけど、
繰り返し聴くうちに、いつのまにか座右に置いて手放せなくなる一枚です。
Dave Valentin "PURE IMAGINATION" High Note HCD7221 (2011)
2011-09-30 00:00
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現代に甦るメディスン・ショウ デヴィーナ&ザ・ヴァガボンズ
こりゃあ、面白い。
ピアノ弾きの女性歌手に、ウッド・ベース、ドラムス、トランペット、トロンボーンという編成で、
ニュー・オーリンズ・ジャズをベースとした音楽性のノスタルジックな歌を聴かせる一座。
思わず「一座」といってしまいましたけど、このバンド、まるで現代に甦ったメディスン・ショウみたい。
バンド・メンバーが繰り出すニュー・オーリンズ・スタイルの演奏が極上で、
今どきの音楽をやるように、こともなげにノスタルジーたっぷりのオールドタイミーな演奏を、
作為のそぶりをまったく感じさせずに、ごく自然にやってみせるところがスゴイ。
ニュー・オーリンズらしい、騒々しくもハッピーなホット・ジャズを味あわせてくれます。
そして、なにより魅力なのが、主役のデヴィーナ・サワーズのしゃがれたハスキーなヴォーカル。
ビリー・ホリデイのブルージーな味わいとともに、ランディ・ニューマンを思わせる物語性を持った、
説得力たっぷりの歌唱にすっかりまいってしまいました。
音楽性からすると、レオン・レッドボーンが一番近い感じもするけど、
レッドボーンみたいなツクリモノっぽさがない。
全曲デヴィーナの作、CDのコンセプトやデザイン、写真まで彼女が手がけていて、
その才能はトム・ウェイツにも近いものを感じさせますね。
二人ともクルト・ヴァイルが好きそうだし。
ジョー・ヘンリーが次作をプロデュースしたりしないかな。
Davina and The Vagabonds "BLACK CLOUD" Roustabout no number (2011)
2011-09-28 00:00
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アパラチアの山から届く声 エリザベス・ラプリール
こんなに純度の高いマウンテン・ソングが、21世紀の今聴けるなんて。
ヴァージニア州スミス郡の音楽一家に育ち、
マウンテン・ミュージックの伝統を受け継いだ若き女性シンガー、
エリザベス・ラプリールの新作に、すっかりカンゲキしてしまいました。
エリザベスは2004年、わずか16歳でアルバム・デビューしたフォーク界の逸材。
デビュー作の田舎娘然とした幼い顔立ちを印象的に記憶していますけど、
23歳となった3作目を数える新作では、
すっかりバラッド唄いとして風格の備わった歌声を聞かせてくれるのでした。
このアルバムには、コモン・ストックの代表曲「ジョン・ヘンリー」「コリーナ・コリーナ」をはじめ、
カーター・ファミリーが歌った「ザ・ラヴァーズ・リターン」「ウィル・ユー・ミス・ミー」、
ジミー・ロジャーズの「ミュールスキナー・ブルース」など、
オールド・タイミーな名曲がずらりと並んでいます。
アメリカン・フォークの真髄ともいえるアパラチアン・フォークを真っ正面から捉え、
フィドル、ギター、バンジョーの伴奏にのって、
気負いもてらいもなく歌うエリザベスが実にすがすがしく、
これは新たなマウンテン・ソングの名盤誕生といえるんじゃないでしょうか。
20世紀初頭にアパラチアの山奥で響いていた唄が、いまそのまま蘇ったかのような
エリザベスのオーセンティックな歌のたたずまいは、ぼくには奇跡的に思えます。
こうした唄はすでに失われたからこそ、アーカイヴとして保存され、
そこから学び取ったミュージシャンたちが、
アメリカーナという新たな息吹を生み出したのだと理解していましたけど、
そうとばかりもいえないんですね。
土の香りのするエリザベスのマウンテン・ソングは、
生活に根ざした唄の伝統が、今も息づいていることを教えてくれます。
リヴィング・ブルースならぬリヴィング・フォークですね。
Elizabeth LaPrelle "BIRD’S ADVICE" Old 97 014 (2011)
2011-09-26 00:00
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ピンク・シャンペーンはいかが ジョー・リギンス
朝晩涼しくなったかと思えば、また厳しい残暑が戻ってきたりして、
いい加減へたばり気味でしたけど、台風とともに長かった夏もようやく去ってくれました。
秋の虫の音が聞こえる夜になると、なぜか無性に「ピンク・シャンペーン」が聴きたくなります。
ジャンプ・ミュージックのなかでもとりわけ甘口な、ジョー・リギンスの50年の大ヒット曲です。
ジョー・リギンスの決定盤ともいえる、
50~54年のスペシャルティ時代をまとめたこのアルバムには、
「ピンク・シャンペーン」はじめ、「ザ・ハニードリッパー」「ラグ・モップ」「フランキー・リー」など、
R&Bチャートを賑わせたジョーの代表曲がばっちり収録されていて、
ジョー・リギンス流ジャンプを楽しむことができます。
ジャンプ・ミュージックというわりには、ごりごりしてないし、ワイルドさもない。
ユニゾンのホーン・リフがゆったりとスウィングして、
独特の心地よいノリを生み出すジョー・リギンス流のジャンプは、
都会的で洗練されたアレンジが特徴です。
ピアノの左手のフレーズをホーン・リフにしたり、ハーモニー・コーラスを多用したアレンジなど、
どの曲もよくアレンジされていて、アレンジャーとしての才能はジャンプ・ミュージシャンのなかでも、
ピカイチじゃないでしょうか。ジャンプ特有の力づくな部分はないとはいえ、
バリトン・サックスをぶりぶりいわせてるので、けっして甘く流れることはありません。
加えて、バラード感覚のある曲や、センチメンタルな小唄がまじるあたりもジョーの魅力で、
女性歌手の歌う「レイン、レイン、レイン」の洒落たセンスなど、夏の疲れがほぐれます。
Joe Liggins & The Honeydrippers "JOE LIGGINS & THE HONEYDRIPPERS" Specialty SPCD7006
2011-09-24 00:00
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赤毛娘が歌うブルース ボニー・レイット
ボニー・レイットの代表作といえば、72年のセカンド作“GIVE IT UP”。
その定評になんの異論もありませんが、
ボニー・レイットをファーストから順に聴いてきた者にとっては、
71年のファースト“BONNIE RAITT” がもっとも忘れがたく、一番愛着があります。
戦前のカントリー・ブルースにはまり、白人の歌うホワイト・ブルースなんか聴けるかいと、
本物志向で生意気盛りだった高校生時分に、
ゆいいつ好きだったのが、ボニー・レイットのファーストでした。
この“BONNIE RAITT” では、ロバート・ジョンソンの“Walking Blues” や
トミー・ジョンソンの“Big Road” というデルタ・ブルースの大名曲を真正面から取り上げていて、
ハタチそこそこの赤毛娘が歌うなんざ、無謀な選曲と思いきや、
これが不思議なくらい、素直に聞けるヴァージョンに仕上がっているんですね。
その秘密は、ボニーが無理にブルースぽく歌おうとせず、自然体のまま歌っているからで、
か細い白人フォーク・シンガー丸出しの声が、かえって新鮮に聴けるのでした。
ホワイト・ブルースがイヤになるのは、無理にブルースぽくしようと声をツブしてみたり、
がなった歌い方をしたりと、やたらと作為が目立つ不自然さがあるからなんですね。
そんなブルース理解では、ブルース以前にロクな音楽ができないことは自明なんですけど、
非黒人が黒人音楽をやろうとする時に、どうしても陥りやすい落とし穴ともいえます。
当時のインタビューでボニーは、「ジョー・アン・ケリーやメイヴィス・ステイプルの様な声があれば」と、
自分の声がブルース向きでないことを吐露していましたけれど、
「どうせアタシの声じゃ、ダウンホームなブルースになりっこないんだから」とばかりに
開き直った(?)のが幸いして、スウィートな歌い口が、かえって魅力となっています。
そんなスウィートでキュートな歌い口のボニーが歌うレパートリーといえば、
やはりフォーク・ナンバーがぴったりで、自作の“Thank You”や
ポール・シーベルの“Any Day Woman” といった
スロー・ナンバーでのこぼれる女心にぐっときます。
もうひとつ、ぼくがこのファーストが好きなのは、
“Women Be Wise” や“Mighty Tight Woman” といった女性の自立を歌った曲で、
フェミニズム的なテーマの曲を歌っても、やたらと勇ましくなったりはせず、
柔らかでしなやかさを失わないところに、ぼくは魅力を覚えます。
そんなファーストを偏愛するぼくにとっては嬉しい、ボニーの未発表ライヴが出ました。
72年2月22日、フィラデルフィアのFMラジオWMMRでレコーディングしたライヴ・アルバムです。
デビュー・アルバム発売後のプロモーション・ライヴだったようで、
“BONNIE RAITT” 全11曲中9曲と、アルバムのほとんどの曲を歌っているんですね。
“BONNIE RAITT” では、ジュニア・ウェルズ、バディ・ガイ、A・C・リードといった、
シカゴのツワモノたちも参加した贅沢なレコーディングとなっていましたが、
このライヴでは、盟友フリーボのベースに、ブルース・ハープのジョン・デイヴィス、
ギターのT・J・ティンドルとともに、ボニーの凄腕ブルース・ギターがうなりをあげています。
曲間のMCを聞いていると、ボニーはとてもデビューしたての22歳とは思えない落ち着きぶりで、
緊張もみせず、ア、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッと楽しそうに爆笑したりと、
すっかりリラックスした様子でステージを進めていて、貫禄のライヴ・パフォーマンスを楽しめます。
Bonnie Raitt "BONNIE RAITT" Warner Bros. 1953-2 (1971)
Bonnie Raitt "THE LOST BROADCAST : PHILADELPHIA 1972" Leftfield Media LFMCD502
2011-09-22 00:00
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チカーノ・ラップ初体験 アクウィッド
はぁ~、こんなヒップホップがあるんですねぇ。ぜんぜん知りませんでした。
トランペット×2、トロンボーン、クラリネット、チューバを含むブラスバンドをバックに、
スペイン語でラップするチカーノ・ラップ。
バンダ・ラップと呼ばれる生音サウンドに、うん、これならヒップホップ門外漢でも楽しめますね。
聴いているのは、チカーノ・ラップの人気兄弟デュオという、
アクウィッドの03年のファーストと04年のセカンドです。
メキシコのミチョアカン出身というセルヒオとフランシスコのゴメス兄弟は、
幼い頃にロサンゼルスに渡り、チカーノが多く暮らすサウス・セントラルで育ったといいます。
こういう経歴だと、いわゆるギャングスタ・ラップかと想像するんですけど、
この二人はそういうハードコアな過激タイプではないので、
気の弱いおじさんでも安心して聴けるというわけです。
ちなみにこの二人、05年に来日もしているんですね。
竹芝のチカーノ系ヒップホップのイベントに出演して、
会場に集結した北関東のローライダーのヤンキーたちを喜ばせたのだとか。
ファーストではブラスバンドをフィーチャーしたトラックは半分くらいで、
あとはフツーのヒップホップ幕の内といった感じなんですが、
架空のラジオ番組仕立てとしたセカンドの方は、よりメキシコ色を強めていて、
ブラスバンド入りのバンダ・ラップばかりでなく、
「キサス・キサス・キサス」などの大甘ボレーロにラップを加えてみたり、
キュートな女声をアクセントにしたナンパなトラックありと、あれやこれや楽しませてくれます。
なんでもファーストは、03年末で20万枚を売り上げ、ラテン・グラミーの
ベスト・ラテン・ロック/オルタナティヴアルバム賞のほか、
ビルボードの二つの賞を獲得しているとのこと。
全編ぶりぶりのブラバンとラップの応酬、ところどころオネーチャンの歌もあり、
なんて作りに徹してくれた方が個人的には好みですけど、
チカーノ・ラップ初体験、いい勉強になりました。
Akwid "PROYECTO AKWID" Headliners/Univision (US) 0883 10155 2 (2003)
Akwid "KOMP 104.9 RADIO COMPA" Headliners/Univision 0883 10201 2 (2004)
2011-09-20 00:00
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海を渡るルークトゥン ラチャノック・シーローパン
こんなルークトゥン、はじめて聴きました。まるでマレイシアの伝統歌謡。
ムラーユの香り高いサウンドに、びっくらこきましたよ。
え~、こんな音楽がタイにあったんだ! そんな新鮮なオドロキでした。
ルークトゥンといえば東北部イサーン。海のイメージなんて、まるでないですもんね。
ところがこのジャケット、海辺の岩の上に主人公の女性歌手がたたずみ、
その向こうには大海原が広がっています。
ラチャノック・シーローパンというこの女性歌手、
タイ南部のナコーン・シー・タマラートの出身なんだそうです。
ナコーン・シー・タマラートといえば、古くは六昆(リゴール)と呼ばれた古都。
日本人には山田長政の終焉の地として記憶されている街です。
スリ・ランカから渡来した仏教の中心地で、
かつてポルトガル商人がこの地をリゴールと名付けたように、
古くからインドと中国をつなぐ海洋交易の中継地で、
多くの民族が行き交う文化都市だったんですね。
なるほどその歴史を考えれば、ムラーユと同じ音楽があってもなんら不思議はないわけですが、
こんな海洋性のルークトゥンがあるとは、想像だにしませんでした。
アラブやインド的なメロディーに、アコーディオンやマンドリンなどのムラーユ楽団や、
シタールやドールなどのインドのサウンド・イメージを散りばめたプロダクションがゴージャス。
ナコーン・シー・タマラートの歴史を凝縮したような、
深い文化混淆を思わせるサウンドをバックに歌う、
ラチャノック・シーローパンのふくよかな柔らかい歌いぶりがまた見事です。
少女のあどけない表情と、オトナぽいしとやかな色気をあわせもったその歌唱は、
今の年齢だからこそと感じさせる魅力にあふれ、今後の成長ぶりも期待させる人ですね。
歴史と文化を背負って練り上げられた最高のプロダクションと、歌手の力量が拮抗した傑作、
ポップ・モーラムのカーオティップ・ティダーディンに続いてグラミーが放った、大注目作です。
Ratchanok Srilophan "FON TOK NAI TALAE" Grammy G0554106 (2011)
2011-09-18 00:00
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生涯の伴侶盤 ボビー・チャールズ
ライノ・ハンドメイドがボビー・チャールズのかの名作、
72年ベアズヴィル盤のデラックス・エディションを、
なんと3枚組というヴォリュームでリリースしてくれました!!!
あのアルバムを胸の奥底に沁み込ませるように、
何度も何度も繰り返し聴いてきたファンは、ぼくばかりじゃないと思いますが、
そんなファンにとって、至福のデラックス・エディションですよ、これは(号泣)。
段ボールの厚紙に薄い木板を貼ったベニヤふうの表紙に、SPアルバムを模した装丁は、
ライノ・ハンドメイドらしい手作り感にあふれ、
いつもながら制作スタッフの愛情が伝わってくるようで、嬉しくなります。
パッケージを所有する喜びを味あわせてくれるライノの商品づくりは、
このダウンロードの時代に、良心を感じさせる素晴らしい仕事といえますね。
さてその3枚のディスクの中身はといえば、まずディスク1は、72年ベアズヴィル盤の拡大版。
96年に日本のみでリリースされた『ベアズヴィル・ボックス』で初めてCD化され、
現在の日本盤CDのボーナス・トラックとしても収録されている“New Mexico”
“Homemade Songs” “Rosie” “Small Town Talk” のシングル・ヴァージョンの4曲のほか、
初復刻となる“Save Me Jesus” のモノラル・シングル・ヴァージョンと
“He's Got All The Whiskey” のロング・ヴァージョンに加え、
未発表曲(もちろん今回初復刻)の“Don't Be Surprised”
“You Were There” の2曲を収録した内容となっています。
さらに、クレジットされていない最後の19曲目にはシークレット・トラックとして、
“He's Got All The Whiskey” を使ったラジオのプロモーション用コマーシャルが入っています。
ベン・キース(多分)のペダル・スティールを大きくフィーチャーした
スロー・バラードの“You Were There” にもとろけますけど、
“He's Got All The Whiskey” のロング・ヴァージョンがまたいいじゃないですか!
リハーサルみたいな感じでメンバーが思い思いに楽器を鳴らし始め、
ドラムスのフィル・インを合図に、演奏がまとまっていくという自由な感じが、
アルバム・ヴァージョン以上に味わえます。
このレコーディング・セッションがいかにリラックスして、
いい雰囲気のなかで作り上げられていたのかがよくわかるヴァージョンですね。
ディスク2のアタマの4曲は、ディスク1の続きで、72年ベアズヴィル盤絡みの
初復刻録音(うち1曲は未発表曲)が収録されていますが、
5曲目以降の13曲は、これまでお蔵入りとなったまま、噂にのぼることさえなかった、
ポール・ロスチャイルドのプロデュースによる74年のベアズヴィル・スタジオ録音が並んでいます。
レパートリーはいずれも、70年代にボビー・チャールズが他のミュージシャンに提供した楽曲で、
ベター・デイズのファースト・アルバムやマディ・ウォーターズのウッドストック・アルバム、
ジェイムズ・コットン、ジョー・コッカー、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、ボビー・ニューワースなどの
アルバムで歌われた曲を、ボビーがセルフ・カヴァーしています。
ポール・バターフィールド(おそらく)のハープやドクター・ジョン(のはず)のオルガン
ほかによる華やかな演奏にのってボビーはいきいきと歌っていて、
オリジナル・ヴァージョンとの聞き比べもまた妙味かもしれません。
最後のディスク3は、ドクター・デメントの名で知られるバリー・ハンセンによる、
ボビー・チャールズの72年の貴重なインタビューが30分収録されています。
オリジナル盤が入手困難となった70年代末には、
「幻の名盤」視されて高額で取引もされましたけど、
アメリカではぜんぜん評価されていませんでした。
その証拠に、90年頃だったと思うんですけれど、
プレスシート入りのシールド盤を、
わずか10ドル足らずで見つけましたもの。
もったいなくて、いまだシールドを切らず、
大事にとってありますよ。
考えてみると、アメリカでは72年ベアズヴィル盤のCD化じたい、これが初なんですね。
ベアズヴィル盤を聴いたこともないアメリカ人が、
このデラックス・エディションを欲しがるとは到底思えないので、
日本人がこの限定版をほとんど買っちゃうんじゃないですかね。
ボビーのこの名作を人生の愛顧盤としているぼくにとっては、
あの世の旅立ちのお供に、棺桶に入れてもらいたいくらいです。
Bobby Charles "BOBBY CHARLES" Rhino Handmade RHM2 526663
[LP] Bobby Charles "BOBBY CHARLES" Bearsville BR2104 (1972)
2011-09-16 00:00
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ベニン最高のシンガー ニョナス・ペドロ
シラール・プロダクションの新シリーズ「アフロ・ラテン」のラインアップに、
ギネアのコナクリ編とベニンのコトヌー編が新たに加わりました。
ギネアのシリフォン音源権利を持つイブラヒマ・シラがコナクリ編を出すのは想定圏内でしたけど、
コトヌー編とは意外でしたね。
ベニンのアフロ・ラテンの第一人者といえば、なんといってもニョナス・ペドロです。
60年代半ばにペドロとパンチョスの歌手兼バンドリーダーとして一世を風靡し、
アフロ・キューバンを演奏するニョナス・ペドロはベニンを代表するミュージシャンとなり、
96年からはアフリカンドの歌手としても活躍しました。
このコトヌー編でもアルバム・トップにニョナスの曲が置かれ、
選曲されたニョナスの4曲の演奏内容は、他を圧倒しています。
アルバム・トップに置かれた“Yiri Yiri Boum” は、
キューバの古謡をもとにシルベストレ・メンデスが作曲したユーモラスな曲で、
ベニー・モレーやセリア・クルースが歌ったことでも知られています。
最近では、スカ・クバーノもカヴァーしてましたね。
ニョナス・ペドロの代表作である81年の名盤“EL COCHECHIVO” から、
この“Yiri Yiri Boum” のほかに、
“El Cochechivo” “Etrocco Mansawenim” をチョイスしたのは、なかなかのセンスです。
この名作のハイライトは“Agbadja Moderne Synthese No.1” なんですけど、
この曲はアフロ・ラテンではないので、収録されなかったのはやむを得ません。
ニョナス・ペドロの代表曲を聴くなら、レドゥー盤CD2枚が最適です。
(だいぶ昔に出たものなので、入手は難しいかもしれませんが)
第1集はアフロ・キューバンを範とした曲を中心に編集され、“El Cochechivo” も収録。
第2集はアフロ・キューバンばかりでなく、メレンゲなどのカリブ音楽に、
ハイライフやアグバジャなどベニン周辺国の音楽、
さらにはシャルル・アズナブールのフレンチ・ポップまで、
さまざまな音楽の影響をうかがわせるポップ曲が並び、
雑食性豊かなニョナス・ペドロの音楽性を楽しめます。
コトヌー編に選曲された“Yiri Yiri Boum” と“Etrocco Mansawenim” も収録されています。
アルバム単位としては、アフロ・キューバンで通した第1集の方が、
演奏内容も高く充実しているといえますが、
アフロ・ラテンばかりでなく、多彩なレパートリーを歌ったニョナス・ペドロの代表作としては、
やはり第2集の方がふさわしく、『ポップ・アフリカ700』にも第2集を載せました。
第2集には、ガーナのパット・トーマス作のハイライフ・チューン
“Don't Beat The Time” のカヴァーや、
ナイジェリアのファタイ・ローリング・ダラー作の“Feso Jaiye” も収録されています。
この“Feso Jaiye” では、ファタイのオリジナル・ナンバーにはなかった
asiko が連呼される歌詞が付くのも興味深いところです。
アシコとは、ジュジュが誕生する以前のヨルバの古いポピュラー音楽で、
ファタイがジュジュ以前にやっていたアギディボのルーツとなる音楽です。
歌詞で歌われているのがこのアシコと関係するのかどうかは、よくわかりませんが、
ヨルバ音楽の古層が見え隠れするファタイの曲だけに、気になるところです。
ニョナスがカヴァーした“Feso Jaiye” はテンポを速めたハイライフにアレンジされていて、
ゴキゲンな仕上がりをみせています。
そして一番の聴きものが、前にも挙げた“Agbadja Moderne Synthese No.1” です。
この曲がびっくりなのは、メロディーが沖縄音階そっくりなこと。
オキナワンなメロディーのアフリカン・ポップスなんて、
後にも先にもこれしか経験したことがありません。
10分30秒という長尺で、重厚なオルガンとホーン・セクションがグルーヴするこの曲、
ベニン南西部モノ県やトーゴ南部に暮らすミナ人の伝統リズム、
アグバジャをモダン化したものであることは、
タイトルからもわかるとおりなのですが、
この珍妙な沖縄音階もどきが、何に由来しているのかはいまだ不明です。
雑多な音楽性を特質としたベニンを象徴する名シンガー、
ニョナス・ペドロの新たなリイシューを、そろそろ望みたいものです。
Gnonnas Pedro "LA COMPILATION VOL.1" Ledoux ASLCD1
Gnonnas Pedro "VOL. Ⅱ" Ledoux ASLCD3
2011-09-14 00:00
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アフリカをわがものにした日本人 タケオ、サカキマンゴー
いまや珍しくありません。
ただし、その多くのプレイヤーは、
アフリカ音楽のコピーで満足していて、
アフリカ音楽をわがものとしたうえ、
自分の音楽を創造しようとする志を持ち、
それを実現しているミュージシャンとなると、
ほんの数える程度ではないでしょうか。
そんな一握りともいえる才能豊かな日本人二人の作品と、
たて続けに出会いました。
そのひとりは、タケオこと新倉壮朗。
サバールやジェンベを演奏する
すばらしいアフリカン・ドラマーであるとともに、
ピアノやマリンバの類まれな即興演奏家であることを、
ドキュメンタリー映画『タケオ』を観て、はじめて知りました。
http://www.takeo-cinema.jp/
映画に収められたタケオのパフォーマンスは圧倒的で、
スクリーンから伝わってくるエネルギーの密度の高さは、ただごとではありません。
アフリカ音楽のように、日本では一般的といえない外国の音楽を演奏する日本人は、
どこかテレや恥ずかしさを捨てきれず、
音楽への集中力を欠くところにいつも歯がゆさを感じるのですが、
タケオはその点で対極ともいえる、演奏やダンスへのすさまじいほどの集中力をみせ、
アフリカ音楽という巨像と対峙するのに申し分ない資質を、全身で表現しているのでした。
タケオの音へのセンシティビティや反射神経の良さは、アフリカン・ドラムよりも、
ピアノやマリンバのフリー・インプロビゼーションに発揮されていて、
将来は即興演奏家として大成していく才能なんじゃないかと思えます。
映画では説明がありませんでしたが、タケオのピアノやマリンバの即興演奏が、
もし彼の独学によるものだとしたら、疑いなく天才ですね。
アフリカ音楽にとどまることなく、大友良英やクリスチャン・マークレーなど、
実験音楽やアヴァン・ミュージックのミュージシャンとぜひ共演させてみたい逸材です。
今回の3作目は、ついに自身の音楽をモノにしたという
手ごたえを感じさせる快作となりました。
さまざまなリズムの実験や音響の試行錯誤、
さらにアフリカの親指ピアノのフィールドワークや研究を通して
鍛え上げてきたサカキマンゴーの音楽が、
練りに練り上げられた演奏となって結実しています。
1曲1曲熟考の上に作り込んだとおぼしき
痕跡をくっきりと残していながら、
その演奏がけっしてアタマでっかちでも、
息苦しさを感じさせないのは、
逞しく肉体化したリズムのしなやかさが生み出す、
開放感のおかげでしょうね。
今度の新作で、サカキマンゴーは音楽ばかりでなく、自身の歌も手に入れたなと感じたのが、
鹿児島弁で歌った「茶わんむしのクンビア」です。
この曲は、今後の彼のメルクマールになるんじゃないでしょうか。
サカキマンゴー最高作にして、アフリカをわがものとした、ポップにしてロックなアルバムです。
[映画] 常田高志監督 「タケオ -ダウン症ドラマーの物語-」 76分 (2011)
サカキマンゴー&リンバ・トレイン・サウンド・システム 「オイ!リンバ」 ヨカバンナ・アンリミテッド YKBN004 (2011)
2011-09-12 00:00
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肉食サンバ・ファンカーのご帰還 セウ・ジョルジ
十年も待ったぞ、セウ!
よ~うやっと、セウ・ジョルジが本領を発揮したアルバムを作ってくれました。
十年も待たせるなんて、ほんとにひどいやつです。
01年のソロ・デビュー以来、こんなんじゃ物足んないとぼやき続けて、
最近では新作の知らせを聞いても、もうどうでもいいわの気分になっていたのが正直なところ。
十年も期待を裏切られ続ければ、フツーならとっくに見限ってるのに、
ひょっとしたら今度こそ……と思い続けてきたのは、
セウ・ジョルジがフロントを務めたファロファ・カリオカでのタフな芸人ファンカーぶりが、
どーしても忘れられなかったからです。
ファロファ・カリオカのグルーヴィーでバンピンなリズムにのった、
不良の地金を隠しようもないやさぐれヴォーカルは、まぎれもないセウの天賦の才能でした。
ところがソロとなるや、アーティスティックな弾き語りなんぞ始めたり、
んなもん、サンパウロのインテリがやってりゃいいんで、
ファベーラ育ちのアンタのやるこっちゃない!
自分の持ち味を生かそうとしないセウが、じれったくてしょうがないというより、
売れるようになった芸人が、スカした性格俳優をめざし始めたみたいなイヤミを感じたもんです。
ファロファ・カリオカの良さは、ガブリエル・モウラの方が継承していたとはいえ、
セウの苦みばしったラフなヴォーカルが聴けないのは、やはりさみしいものがあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-01-26
しかし、今度はジャケからして、これまでと違った予感がありましたよ。
真っ赤に染め上げられた背景に、ふてぶてしい面構えのセウの顔がど~んと鎮座。
タイトルも『シュラスコのための音楽 その1』ときたもんだ。
肉食野郎のご帰還を思わすこのジャケで、相変わらずスカしたポーズをきめてるようだったら、
今度こそ承知しないぞと思いましたけど、期待どおり、
下町のチンピラ気分を丸出しにした、サンバ・ファンクが横溢。
嬉しかったのは、ロジェーがデビュー作で取り上げたガブリエル・モウラ作の名曲
“Japonesa” がカヴァーされていたこと。
やきそば!鉄火巻!蟹!醤油!のリフレインも楽しい傑作曲で、
ロジェーのアルバムはぜんぜん知られていないから、本作で評判となること必至でしょう。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
アルバムのラストには、ダンスで火照った身体をチル・アウトするための、
きらめくストリングスをフィーチャーした、メロウ・トラックが据えられています。
バイリ(ダンスホール)での喧噪が、終わりを迎えたことを知らせるようで、
こういうアルバムの終わり方も、たまんないっすねえ。
なけなしの金をはたいて週末のバイリで踊り、女を口説き、酒を呑み、また日常に帰って行く。
貧しくも野心を秘めたゲットーの若者たちの気分が、そこには濃厚に漂っています。
“VOL.2” も待ってるぜ、セウ!
Seu Jorge "MUSICAS PARA CHURRASCO VOL.1" Cafuné 60252775092 (2011)
2011-09-10 00:00
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笑顔になれる リトル・テンポ
この夏、毎朝ウォーキングの友となってくれたアルバムなのに、
なぜか取り上げるのを忘れていた、リトル・テンポの新作。
朝晩も涼しくなって、そろそろアルバムも交替かなと思い始めた頃に、
まだ書いていなかったことに気付いた間の悪さに、ごめんなさいです。
今度の新作は、潔いほどにイージー・リスニングなサウンド。
スティールパンやスティールギターの音色が心地よい、
極上のトロピカル・ムード・アルバムに仕上がっています。
オータサンにも通じる、リラクシンな娯楽作ともいえますかね。
全編ミディアム・テンポで、昭和歌謡を思わせるノスタルジックなメロディーの
歌のない歌謡曲的な演奏は、実に端正でもあります。
上モノのメロディーが、左から右にただ流れてしまわないのは、
がちっとしたリズム・セクションが生み出すブッといグルーヴゆえ。
さすがにそこは、レゲエ・バンドだけのことはあります。
メロディーのノベルティ気分を演出するために、
あえてリズム・ボックスみたいなチープな打ち込みを使うところなど、
自分たちのビートに自信がなければ、なかなかできないことでしょう。
「そよかぜ通り」「ときめき☆リダイヤル」などといった歌謡曲チックなタイトルも、
なるほどと思わせるメロディーが出てきて、楽しいかぎり。
ブラジルのブの字もない曲と演奏で「ブラジリアン・サマー」というタイトルも、
かつての70年代歌謡曲みたいな「えせトロピカル」なキッチュさで笑えます。
ペダルスティールが活躍する曲だから、ブラジリアンじゃなくてハワイアン、
否、ハワイとレゲエのミックスだから、「ジャワイアン・サマー」の方がよかったかも。
「南京豆売り」もラテンじゃなく、ザ・ピーナッツが歌ったカヴァーみたいに聞かせるところも、
ネライどおりなんでしょうね。
とにかく、どの曲からもメンバーが楽しそうに演奏をしているのが伝わってきて、
聴いているだけで、自然とにこにこと笑顔になれるから不思議です。
3.11以降忘れていた、屈託のない笑顔を思い出させてくれる、気持ちのいいアルバムです。
Little Tempo 「太陽の季節」 サンシャイン/Pヴァイン SUNCD004 (2011)
2011-09-08 00:00
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小娘モーラム カーオティップ・ティダーディン
ひさしぶりに楽しいポップ・モーラム・アルバムと出会えました。
新人女性歌手カーオティップ・ティダーディンのデビュー作。
タイ最大手レーベルのグラミーが制作すると、
ポップ・モーラムもここまでかっこよくなるという見本ですね。
オープニングのタイトル曲「小娘モーラム」は、
スクラッチやラップも交えたファンク仕立てのポップ・モーラム。
タイ東北部イサーンの芸能のモーラムがここまで都会的になるってのも、面白いじゃないですか。
モーラムの味わいなんか、どこにもないじゃないか、とお怒りのムキもあるかもしれませんが、
地方の民俗芸能モーラムから中央の田園歌謡ルークトゥンに変質して、
タイ全国区ポップスに変貌したこのアルバムの仕上がり、ぼくは支持します。
ヒップホップばかりでなく、レディー・ガガを意識した2曲目など、欧米の流行を取り入れる一方で、
ケーンの響きが故郷を偲ばせる田園歌謡調のバラードや、
ソーをフィーチャーしたカントゥルムを歌うなど、
イサーンに軸足をしっかりと置いている安定感があって、流行に足をすくわれた印象はありません。
スカ調のあげあげナンバーあり、レゲエありと、さまざまな音楽を貪欲に取り入れながら、
すっきりとしたポップスにまとめあげるプロデューサーのセンスは、
かつてのメレンゲの革命児ウィルフレード・バルガスを思わせます。
そしてそんな多彩なプロダクションに、カーオティップ・ティダーディンの歌声がよく応えています。
新人のデビュー作とは思えぬ落ち着きのある声で、
柔らかな色香のある歌いぶりが、おじさんのハートを射抜きます。
デビュー作にしてはちょっと出来すぎの感すらある快作ですね。
Kawthip Thidadin "SAO MORLUM SUM NOI" Grammy G0554030 (2011)
2011-09-06 00:00
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フランスで金を稼ぐには ママニ・ケイタ
マリのバマコに生まれたママニ・ケイタは、父親の顔を知らず、
13歳で母親と死別して母方の祖母のもとで育ち、
ナシオナル・バデマのコーラス・シンガーに雇われるチャンスを掴んで、歌手となった苦労人。
87年にサリフ・ケイタのバック・シンガーとしてパリへ渡るも、
学校教育を受けていないママニは、フランス語を話すことも読むこともできず、
パリでの生活は困窮を極めたといいます。
3作目となる新作のトップに置かれたアルバム・タイトル曲「フランスで金を稼ぐには」は、
ママニの実体験にもとづくアフリカ移民の苦労が込められています。
前作“YELEMA” 同様、マルチ楽器奏者でアレンジャーのニコラス・レパックとのコラボ作品で、
ジェリ・ムサ・クヤテ(ギター)、モリボ・コイタ(ンゴニ)などのアフリカ勢に、
フランス人ミュージシャンのリズム・セクションが加わる布陣もほぼ同じ。
前作では、ンゴニやバラフォンなどの生音に施したプログラミングが、
曲によってムリヤリな折衷を感じさせる部分もありましたけど、
この新作ではだいぶこなれて、すっきりとしたストレイトなロック・サウンドに仕上がっています。
サンプリングしたクレツマーのクラリネットや中国の胡弓と、
ンゴニやジェンベなどのアンサンブルを組み合わせた“Waleya” など、
豪快な仕上がりとなっていて、聴きごたえがあります。
それにしても、ケイタ姓という王族の系譜を持つママニが、本来タブーである歌手となり、
フランスで四半世紀を暮らすまでには、サリフ・ケイタとまた別の苦難の道があったはずで、
それがいかなるものだったかは、ぼくのような日本人にはとても想像がつきません。
シングル・マザーとなり、娘に菓子を買い与える2ユーロさえもないというほど
経済的に追い詰められたママニが、バンバラ語で歌う「フランスで金を稼ぐには」は、
気候も生活習慣も異なるフランスで暮らす、
多くのアフリカ系移民女性の胸に迫るものがあるはずです。
Mamani Keïta "GAGNER L’ARGENT FRANÇAIS" No Format! 6149542 (2011)
2011-09-04 00:00
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ボサ・ノーヴァ伝説の男の復活作 ノルマンド ・サントス
日本盤が出ましたか!
さすがは世界一ボサ・ノーヴァ好きの日本、名盤を見逃しませんでしたね~。
ボサ・ノーヴァ最後の大物ノルマンド・サントスが、2009年にひっそり自主制作で出した復活作。
こんなすばらしいアルバムが、なんで自主制作のCD-Rでしか出せないんだと、
リリース当時はフンガイしたものですが、いやー、ほんとによかった。
ボサ・ノーヴァの良さを本当に理解している人なら、
老いさらばえた声をさらすジョアン・ジルベルトより、
永遠の青年ぶりを示すノルマンドのみずみずしい歌声の方が、百倍いいとすぐわかるはず。
ジョアン・ジルベルトを神棚にまつりあげるようなマネはやめて、
こういう良質のボサ・ノーヴァ作品を、ちゃんと聴きましょう。
ノルマンド ・サントスは、
歴史的な62年のカーネギー・ホールのボサ・ノーヴァ・コンサートにも出演した人。
ロベルト・メネスカルやルイス・カルロス・ヴィーニャとバンドを結成し、
ヴィニシウス・ジ・モライスやロナルド・ボスコリ、ビリー・ブランコとも共作をするなど、
ボサ・ノーヴァ・ムーヴメントの中心人物の一人でした。
ノルマンドが書いた曲は、マイーザはじめペリー・リベイロやウィルソン・シモナールなど、
多くのシンガーに取り上げられましたが、ブラジルではアルバムをついに残さないまま、
64年、パリへ移住してしまいました。
そんなノルマンドがボサ・ノーヴァ50周年を機に、
ブラジルでひっそりとカムバック&初アルバムを録音していたんですね。
ロベルチーニョ・ド・レシーフェがプロデュースをしているのを意外に思ったら、
ノルマンドはレシーフェ生まれとのこと。同郷のよしみでロベルチーニョが起用されたんでしょうか。
ロベルチーニョがボサ・ノーヴァのアルバムのプロデュースをしたなんて聞いたことがないですけど、
実にオーソドックスなサウンドのボサ・ノーヴァ・アルバムに仕上げてくれました。
オープニングを飾るタイトル曲から、華やいだ女性コーラスをあしらい、
ノルマンドのダンディな色気たっぷりの歌声に、多くの淑女がメロメロになることうけあいでしょう。
60年前後のヴィンテージな香り高いサウンドに、ゾクッとさせられます。
チューリップ一輪を手に歌うノルマンドの写真をあしらったジャケットが、
あの時代のボサ・ノーヴァのムードを伝えていて気に入ってたんですけど、
日本盤のオシャレなジャケットに変えたのは、まあ仕方ないところでしょうか。
半世紀前のボサ・ノーヴァをそのまま真空パックしたような奇跡的な傑作、
これからの季節の夜長には絶好です。
Normando Santos "BALANÇO COM BOSSA" Light no number (2009)
ノルマンド・サントス 「バランソ・コン・ボッサ」 プロダクション・デシネ VSCD9392
2011-09-02 00:00
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