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カリブがジャズを生んだ

Jamaica Jazz 1931-1962.jpg

「ジャズはラテン・アメリカの音楽の一種である」という刺激的なテーゼは、
ラテン、カリブ音楽ファンはもとより、
ポピュラー音楽史に関心を持つ者に、多くの示唆を与えてきました。
ところが、肝心のジャズ・ファンは、
この言葉の意図するところがわかってない人が多いですね。

まず、このテーゼを考えるには、両者の音楽が誕生する以前の、
19世紀末から20世紀初頭の音楽を想起しなければ意味がないんですけれど、
現在のジャズとラテンを前提にして論じるムキが多く、
それでは議論が的外れなものにしかなりません。

ジャズに限った話じゃないですけれども、ひとつのジャンルしか聞かない音楽ファンは、
知識が豊富なようにみえて、黄金時代の録音ばかり根掘り葉掘り聴いて、
SPや蝋管時代の初期録音はまったく聴かない人がほとんど。
それでは、音楽史観のような大局に立ったものの見方や、
イマジネーションを要する歴史観が身につくはずもないですね。

いまでは、ジャズ評論家の油井正一さんが打ち出したように思われがちなこのテーゼですが、
もとはドイツのジャズ評論家アーネスト・ボーネマンが
「ジャズはニューオリンズで誕生したラテン・アメリカ音楽の一種である」と言ったのを、
油井さんがスイングジャーナル誌の連載記事「ジャズの歴史」の中で紹介したもの。
その後、連載が書籍化された名著『ジャズの歴史物語』でも、
アーネスト・ボーネマンの説として丁寧な注釈をしているのに、
なぜか油井説のように流布されているのは、油井さんも天国で苦笑されているだろうな。

そんな名言、「ジャズはラテンの一種」をひさしぶりに思い出したのは、
ブルーノ・ブルムが監修したジャマイカン・ジャズの編集盤の解説に、
より明快に表現したテーゼを読んだからなのでした。

いわく、「ジャズはアフロ=クレオール文化の産物」。
どーです。
「ラテン・アメリカ音楽の一種」なんて曖昧さの残る表現ではなく、
複雑な文化状況のもとで混淆した音楽の本質を、より明快に言い切ってるじゃないですか。

ほかにも、
「アメリカでジャズの揺りかごとなったニュー・オーリンズは、
<クレオールネス>の基点となる最良の見本となった場所」としたうえで、
「ニュー・オーリンズは、カリブの首都だ」とする
アメリカの音楽学者ネッド・サブレットの言葉を引用して、
「ジャズはカリブで生まれた」という見出しをつけています。

う~ん、含蓄のある言葉が並びますねえ。
ここまで言うのなら、さらに一歩踏み込んで、
「カリブがジャズを生んだ」と言いたいですね。どうでしょうか。

V.A. "JAMAICA JAZZ 1931-1962" Frémeaux & Associés FA5636
コメント(9) 

コメント 9

としま

油井さんのその言葉をしばしば引用し、ジャズ史観的なものの言い方を繰返していながらも、「分っていないジャズ・ファン」の一人である僕には、今日のこのbiunboniさんの文章は大変ありがたいものです。毎度のことではありますが、改めて感謝します。勉強し直します!
by としま (2016-09-15 11:17) 

bunboni

カリブが生んだのはジャズだけではなく、ポピュラー音楽そのものでもあったわけですよね。そして、その起点となったのは、ハイチ革命だったというのが、ぼくの考えです。ハイチ革命がなかったら、アメリカ音楽もだいぶ異なった姿となったはずです。
by bunboni (2016-09-15 20:22) 

としま

う〜んと、じゃああれですか、チャールズ・ミンガスの「ハイチ人の戦闘の歌」(『道化師』)は、要するにそういうことですか・・・。全然気付いてなかったなあ。
by としま (2016-09-15 20:55) 

bunboni

ミンガスにどれだけカリブ史の造詣があったかは知りませんが、ハイチ革命が念頭にあったことは確かでしょうね。ちなみに、マックス・ローチがハイチのチローロに太鼓を習いに行ったことはご存知ですよね。
by bunboni (2016-09-15 21:08) 

としま

はい、ローチのその件は知識としてだけ持ってます。同じくドラマーで何度も来日しているアート・ブレイキーも和太鼓集団に強い興味を示したそうですし。カリブ地域じゃないので全然違う話かもしれませんが。
by としま (2016-09-15 21:19) 

ペイ爺

Clifford Brown の First Recording Session と言われる Chris Powell And His Blue Flames で演奏した “I Come From Jamaica”、“Ida Red”、大好きです。
by ペイ爺 (2016-09-16 14:24) 

bunboni

ああ、いいですねぇ、“I Come From Jamaica”。
ジャイヴィーなナンバーで、ぼくも大好きです。
ブルーノ・ブルムさんはこの曲を “CUBA IN AMERICA 1939-1962” の中に収録してましたね。どっちかといえば、 “JAMAICA RHYTHM & BLUES 1956-1961” の方が適当だったようにも思えますけれども。
by bunboni (2016-09-16 20:21) 

としま

ペイ爺さん、是非こちらを(笑)。
http://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-442b.html
by としま (2016-09-17 23:09) 

ペイ爺

もう一曲、“Ida Red”の意味がズーッと分からなかったんですが、ニック・カタラーノの“Clifford Brown ”を読んだら、裕福な家庭に育ったオルガン奏者で、大変 Attractive な Brownie の恋人のことを歌った曲なんだそうです。例の Lionel Hampton 楽団の欧州旅行から帰ってきたら、別の彼氏ができていたようですが(笑)Chris Powell のこのバンドと、Charlie Parker、John Coltrane が共演した興味深いエピソードも紹介されています。聴きたかったなあ~。どんな演奏だったんでしょう?想像しただけでワクワク!

としまさん、ありがとうございます。
“The End”と題されたBrownie の驚異的な演奏の共演者、Billy Root の発言、及び 「ミュージック・シティ」のコンサート告知の為のパンフレットによって「神話」は崩壊したのかもしれませんが、演奏は不滅だと思います。とんでもないものでしょう、これは。
by ペイ爺 (2016-09-21 15:53) 

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