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SP蒐集家ジョナサン・ウォードの偉業 アフリカ音楽SP復刻ボックス

Opika Pende Dust-to-Digital.JPGSPには手を出さない。これ、マイ・ルール。

戦前ブルース・マニアだとか、浪曲マニアだとか、
守備範囲がある程度限定しているのならまだしも、
古今東西ありとあらゆる音楽に興味をひかれる
ぼくのような人間が、
SPまで手を出したら、経済破綻・家庭崩壊は必至ですって。

イマドキの音楽より、いにしえの音楽に
年々ココロひかれるようになっているので、
SPをディグする甘い誘惑を感じないわけじゃありませんが、
まー、やっぱり独身でなきゃ無理ですね。
会社勤めの家族持ちにそんなヒマはとてもないし、
そこまでのめりこむ気もございません。

ということで、SPコレクションはほかの方にお任せして、
SPコレクターの成果を編集盤CDで楽しませていただいているんですけど、
もし自分がSPコレクターだったらこんな仕事をしたかったと、
思わず嫉妬しそうになった、すごいSP復刻の編集盤CDが出ました。

それが、この“OPIKA PENDE : AFRICA AT 78RPM”。
1909年から1960年代にかけてアフリカ全土で残されたSP録音100曲をCD4枚に収め、
112ページに及ぶ解説書のブックレットとともにボックスに収めた労作です。
復刻に使われたSP音源は、ロサンゼルスの研究家にしてコレクター、
ジョナサン・ウォード一人のコレクションだというのだからおそれいります。
北アフリカから始まり、西アフリカ、中部アフリカ、東アフリカ、南部アフリカ、インド洋まで、
アフリカ全土をくまなく網羅していて、地域的な穴がないのに驚かされます。

コレクターのコレクションはとかく専門的になりがちで、網羅的という面で弱みがあるものなのに、
ジョナサン・ウォードのコレクションは、むしろそこが強みとなっているんだから、スゴイ。
特にアフリカ音楽という時、普通はサハラ以南のアフリカだけを対象とするものなのに、
北アフリカのアラブ・アンダルース音楽までしっかり射程に収めているのは、頭が下がるばかり。
コレクションの質の高さも目を見張るものがあり、大物たちの音源もずらりと並んでいます。

たとえば北アフリカ編のディスク1では、シャアビの名歌手エル=アンカ、
パリで活躍したアルジェリア人歌手マヒエッディーンや、
ユダヤ系チュニジア人歌手シェイフ・エル=アフリートなど。
西アフリカ編のディスク2では、ハイライフの名門バンドのブラック・ビーツに
名ギタリストのE・K・ニヤメ、パームワインのエベネザー・カレンダーなど。
中部・東アフリカ編のディスク3では、コンゴリーズ・ルンバ黎明期に活躍した
ギタリストのアディクワにグラン・カレとアフリカン・ジャズ、
そしてアフリカン・ギターの古典的名曲のジャン・ボスコ・ムウェンダの「マサンガ」など。
南部アフリカ・インド洋編のディスク4では、ダーク・シティ・シスターズの変名
フライング・ジャズ・クイーンズ名義で残されたンバクァンガに、
南ア国家「ンコシ・シケレレ・アフリカ」の30年録音などなど。

さらに聴きものとなっているのが、無名の音楽家たちによる録音で、
アルジェリア、コンスタンティーヌで32年に録音されたごきげんなマルーフのダンス・チューンや、
30年代後半に録音されたピアノやホーンズの入ったガーナのハイライフ、
30年代にアクラで出張録音されたガーナのアカン・ブルース、
南アのマラービ楽団が残した55年録音の名演など、
選りすぐりの逸品をコレクションした、ジョナサンの耳の確かさに敬服するほかありません。

大物も無名もバランスよく並べ、なおかつ地域的な偏りもなく、
都市のポピュラー音楽と田舎の民俗音楽も万遍なく選んだ、このバランス感覚が本復刻のキモ。
大勢のSPコレクターの協力を得て編纂した復刻集でも、
これほど偏りなく選曲するのはなかなか難しいものなのに、
たった一人の個人コレクションでこれだけのものを作り上げたのは、
まさしく執念を感じさせる偉業というほかありません。
良好な音質、よく練られた選曲と曲順、ジョナサンの解説も簡潔にしてわかりやすく丁寧で、
望み得る最良の仕上がりの復刻集となっています。

なので、このような復刻ものにつきものの、
このアーティストのこの音源を使うくらいなら、こっちの方がよかったみたいな、
重箱の隅をつついた選曲への些細な不満を言う気にはなれません。
これほどの復刻集を前にそのテの文句を言うのは、マニアのエゴみたいなもので、
それよりも、ジョナサン・ウォードのこの偉業に対して、最大級の賛辞と敬意を表したいと思います。

Various Artists "OPIKA PENDE : AFRICA AT 78RPM" Dust-to-Digital DTD22
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